1.
しかし、アパートに住むためにはお金がいる。大家さんに頼み込んで初期費用を稼ぐまで待ってもらい、俺は高校生可のアルバイトを探した。
見つけたのは受かった高校の帰り道にある本屋。チェーン店で、少し大きめの店舗だ。静かなところが気に入った。
本は正直好きでも嫌いでもないので、志望動機ですごく悩んだ。近くの高校に通うからです、と言ったら面接担当者は「なるほど」とペンを走らせていた。電話が返ってきたのは伝えられていた最後の日だった。四月中旬からの採用が決まり、俺はほっと胸を撫でおろした。
高校でも俺は孤立していた。中学校とは少し離れた場所の高校だったので、いじめられっ子の俺を知る知り合いはいなかった。高校生ぐらいの年齢になると、いじめなんていうしょうもない遊びは終わり、その代わりに感情をうまく表せない俺だけがぽつんと残っていた。どうにか馴染もうと話しかけてみるも、うまく笑えない顔ではどのグループにも属せなかった。ゴールデンウィークを過ぎる頃には、俺は中学と変わらずひとりぼっちになってしまっていた。
教室で一人、自席からクラスメイトたちの話す様子を眺める。喜びのあふれた顔、上がった調子の声。なんでも話せる親友がいれば。せめて、友達でもいれば。この休み時間も少しは楽しくなっていたのかもしれない。現実を前にしてついたため息は、騒がしい休み時間の空気に浮かんで消えた。
部活動はもちろん小中と続けてきたパソコン部に入り、寂しさを紛らわせようとより一層タイピングに没頭した。その頃にはタイピングのサイトで最高十位に入るくらいの実力になっていた。両手の指の動きも、かつて憧れたあの講師のものに匹敵しているだろう。部員は褒めてくれるが、それ以上に干渉しようとはしてこなかった。その距離感が心地よくも、ここでも友達という関係は作れそうにないと気づいた。
アルバイトが始まった。案の定、接客でミスを連発した。うまく言葉が出てこず、すらすらと話せない、笑顔が作れずお客様に怒っている印象を与えてしまうなど、バイトリーダーや社員に何度も注意された。お客様にも間違えた対応を見られてしまう。研修期間ではあったものの、そんな自分が嫌で、やっぱり働くことも向いていないのだと俺は自分を責めた。
一時期辞めてしまおうなんて考えもしたが、大家さんの顔がよぎってやめるにやめられなかった。ここでやめてしまったら、あのアパートへ入居もできない。仕事に慣れるまでもう少しの辛抱だ、と言い聞かせて頭を下げ続けた。
へとへとだったある日、データ入力を終えてパソコンの前から立ち上がろうとすると、声をかけられた。
見つけたのは受かった高校の帰り道にある本屋。チェーン店で、少し大きめの店舗だ。静かなところが気に入った。
本は正直好きでも嫌いでもないので、志望動機ですごく悩んだ。近くの高校に通うからです、と言ったら面接担当者は「なるほど」とペンを走らせていた。電話が返ってきたのは伝えられていた最後の日だった。四月中旬からの採用が決まり、俺はほっと胸を撫でおろした。
高校でも俺は孤立していた。中学校とは少し離れた場所の高校だったので、いじめられっ子の俺を知る知り合いはいなかった。高校生ぐらいの年齢になると、いじめなんていうしょうもない遊びは終わり、その代わりに感情をうまく表せない俺だけがぽつんと残っていた。どうにか馴染もうと話しかけてみるも、うまく笑えない顔ではどのグループにも属せなかった。ゴールデンウィークを過ぎる頃には、俺は中学と変わらずひとりぼっちになってしまっていた。
教室で一人、自席からクラスメイトたちの話す様子を眺める。喜びのあふれた顔、上がった調子の声。なんでも話せる親友がいれば。せめて、友達でもいれば。この休み時間も少しは楽しくなっていたのかもしれない。現実を前にしてついたため息は、騒がしい休み時間の空気に浮かんで消えた。
部活動はもちろん小中と続けてきたパソコン部に入り、寂しさを紛らわせようとより一層タイピングに没頭した。その頃にはタイピングのサイトで最高十位に入るくらいの実力になっていた。両手の指の動きも、かつて憧れたあの講師のものに匹敵しているだろう。部員は褒めてくれるが、それ以上に干渉しようとはしてこなかった。その距離感が心地よくも、ここでも友達という関係は作れそうにないと気づいた。
アルバイトが始まった。案の定、接客でミスを連発した。うまく言葉が出てこず、すらすらと話せない、笑顔が作れずお客様に怒っている印象を与えてしまうなど、バイトリーダーや社員に何度も注意された。お客様にも間違えた対応を見られてしまう。研修期間ではあったものの、そんな自分が嫌で、やっぱり働くことも向いていないのだと俺は自分を責めた。
一時期辞めてしまおうなんて考えもしたが、大家さんの顔がよぎってやめるにやめられなかった。ここでやめてしまったら、あのアパートへ入居もできない。仕事に慣れるまでもう少しの辛抱だ、と言い聞かせて頭を下げ続けた。
へとへとだったある日、データ入力を終えてパソコンの前から立ち上がろうとすると、声をかけられた。
