2026

 高いかぼちゃプリンを食べる機会があった。高級スイーツブランドの監修した、一個三百円のプリン。
 スプーンを入れてみると、表面の砕けたクッキーの層がほろりと崩れ、プラのカップを満たす山吹色のかぼちゃプリンが顔を出す。
 口に入れると、クッキーはさくさく、プリンはなめらかに、異素材の食感がおもしろい。しかし。

 味がしない。無を食べている。

 多分、普通の人が食べたら「おいしい!」「三百円にふさわしい味がする!」「さすが(ブランド名)!」と歓喜するはずなのだが、私はなぜか「メイトーさんのかぼちゃプリン(三連)の方がうまいな……」などと考えてしまう始末である。

 この出来事にはデジャヴを覚える。
 高級なものを食べると大体「無を食べている」となるのだ。
 小さいころだって、ゴディバの一個五百円するチョコレートを一口で食べてしまい、親をびっくりさせたものだ。

 高級なものは「無」なのだろうか。いや、そんなことはない。三百円分の価値があるはずなのだ。
 ただ食感を楽しむだけのものだったのだろうか、あのプリンは。三百円はどこに行ってしまったのだろう。
 うーん。悩んでみても答えは出ないし、無を食べたという事実だけが残ってしまった。

「無」で思い出したのは、RTA界隈の「無を取得」だ。
 そこに存在するはずのないアイテム(無)を取得し、バグ技やショートカットに使うというテクニック。
 動画で見てみると、無を取得しているプレイヤーキャラの見た目が滑稽で、つい笑ってしまう。何年も前の動画を覚えているくらい、その行動は強烈で、私の好きなものだ。

 三百円の高級プリンを食べ、無を取得した私は、これからなにかの時間短縮ができるようになっているのだろうか。
 そう思うと、寝るまで倍速が使えてくる気がする。

 もちろん現実ではそういうわけにもいかず、ただ「高級な無を取得」しただけ。
 でも、こういう風に考えてみると案外楽しいものだ。私も気づかぬうちにRTAをしているのかもしれない。就寝RTAだ。

 今までに見た、様々なRTA動画のゲーム達が頭を巡る。
 久々にゆめにっき、しようかな。
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