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 小西の返答から一呼吸置いて、進藤が声を出す。すぅ、と彼女が息を吸う声が耳に入る。
「いいねもブクマも少ないのに、どうしてそんな暗い作品ばかり作るんですか?」
 思考が停止する。瞬きを一回すると、力んでいた口から力が抜けた。進藤が鼻で笑う声が聞こえた、気がした。
「読者の気持ちを考えたことはないんですか? 貴重な時間を使ってもらったその先にあるのがバッドエンドなんて、読者が可哀想だと思いませんか?」
 進藤の疑問形の問いかけが、小西の頭にずしり、とのしかかる。
 声が、出ない。止まっていた頭が動き出すものの、どこに向かえばよいのか、まったく、まったく、見当がつかない。
 前が、見えない。また、霧が出ている。冷たいそれが、小西の肌に触れて体温を奪っていく。
「その通りです! やっぱりハッピーエンドが最高ですよね!」
「バッドエンドなんかより、みんな幸せで救いのある物語の方が、ランキングにも入れますよ?」
「さっすが進藤さん! 私たちのことわかってますね!」
 彼女の意見に賛同するように、仲間が場の空気を上書きしていく。きゃっきゃ、きゃっきゃ、猫なで声。霧の中から手だけが複数伸びてきて、小西の目の前に下向きの親指を出している。
「そうでしょう。さて、元の話に戻りましょうか」
 なにも返せない。たったの一言も、一文字も、返せない。言いたいことがあるはずなのに、口は震えるばかりで言葉の一つも生み出そうとしない。
 小西の参加なんてなかったかのように、話が進んでいく。花を咲かしている会話の内容が、微塵も頭に入らない。ただ、彼女たちが小西を抜きにして楽しんでいることだけは、嫌なほどよく伝わってきた。進藤一色に染められたこの空間で、小西は完全な邪魔者だった。
 冷たくなった指先で、退出ボタンを押す。画面が切り替わり、先ほどまで入っていた通話の投稿が表示される。まだ続いているようだ。リストが更新され、それはすぐに下の方へ流れていってしまった。
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