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 通知、ゼロ。匿名箱の通知も、ゼロ。安堵のため息が漏れる。
 よかった。なにもなかった。
 当のあの人は、と念のため確認すると、相変わらず楽しくやっているようだった。最新作は逆プロポーズで百八本の薔薇の花束を贈る話らしい。うるさいな。お前が薔薇を贈るなら、私は椎名くんに彼岸花を贈ろう。
 進藤のことは正直好きじゃない。あんなことを言われたら、誰だって傷つく。それは本当に許せないし、忘れられない嫌な思い出だ。しかし、人気のために読者や書き手に尽くす彼女のことは、憧れの存在とは少し違って、土俵が違う人なのだと考えてもいいのかもしれない。進藤は進藤のやり方でやればいいし、小西は小西のやり方で椎名くんへの好きと向き合えばよいのだ。たとえハッピーエンド以外を排除するようなやり方であっても。
 よし、と小西は決める。リストから進藤を削除する。スクロールしながら、界隈の人たちが変わらず動いていることがわかる。このリスト自体、もう消してもいいのかもしれない。どうせ小西がいなくても世界は回るし、どこの誰かも知らない発言を見ていたところで時間の無駄だ。それよりも、椎名くんのことを書いていたい。夢主の揺らぐ気持ちを書いていたい。お互いを愛する二人を、どこまでも暗く静かな闇へ沈む二人を、ただ、書いていたい。
 スマホを閉じて、作業用タイマーのアプリを開く。ちょうどよい色になった耐熱ガラスのティーポットから、アーモンドグリーンのマグカップへお茶を注ぐ。一口飲んで、おいしい、と思う。紅茶の華やかな香りと確かな温かさは緊張していた体から力をほどき、小西の口がゆるりと弧を描く。
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