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 仕事が終わり帰宅すると、作り置きのごはんを真っ先に食べて、立ち上がっていられるうちにやることを済ませる。それらが終わると、椅子に座ってSNSを開く。小西のルーティーンだ。
 情報収集垢を開いて、タイムラインをスクロールする。ファストフードの割引キャンペーン、化粧品メーカーの新作、植物園のイベント情報。クーラーの音が鳴る自室で、小西は明るいデザインのネイルをした指を動かしていた。
 もう壁打ち垢を見ることもなくなっていた。自分の作品を作ること、界隈の動向を知ることはもちろん、原作の展開を追うことさえ、熱を失った今では時間の無駄だと捉えるようになってしまっていた。
 隙間時間が十五分もあればパソコンに向かい、キーボードを必死に叩いていたあの頃の小西は、もういない。片付けることすら面倒で、出しっぱなしになっているノートパソコンを前にだらだらと指を動かしていると、ある赤い花が目に留まった。
 一枚の写真には、その花が凛と映っている。近くの市の公園で、彼岸花が見ごろになっているらしい。それも、もうすぐ終わってしまうと。
 行きたい。小西の頭の中に考えが小さく浮かぶ。
 彼岸花は、墓地でよく見られる花だ。それゆえに、花言葉には「悲しき思い出」というものがある。少し前まで、小西が好きだった花だ。執筆を止めている「氷解」という長編小説のモチーフとして、使おうとしていた。
 過去がよぎるも、今はただ、シンプルに、この彼岸花が見たかった。小説のことを抜きにしても、赤い花々を見たかった。
 せっかくなら、行こう。どうせ小説にかける時間もなくなって暇になってしまったのだ、帰りに駅ビルで買い物でもして帰ろう。暑さを理由にしばらく出掛けられていなかったし、自分へのご褒美と考えてもいいかもしれない。そう考えて、マップアプリで公園へのルートを調べ始める。
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