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「ほら、ラブちゃんが海に行きたくて困ってるって相談してくれたじゃない? だから、それを叶えてあげようと思って。鳴瀬くんのお父さんと、仕事仲間の漁師さんに協力してもらったの。彼、活魚運搬車も運転できるのよ」
「ね」と僕の後ろに向かって大家さんは微笑む。すると、「いやー、俺頑張ったっすよねー」と間抜けな声が聞こえた。振り返るとスーツの男だった。さっきまでの氷のような無表情はどこへやら、チャラい若者の顔をしている。
「ほんと鳴瀬さん人使い荒いんだから。言われたの今朝っすよ。今朝。俺が元演劇部だったからよかったっすけど、いなかったらどうしてたんすか?」
「……俺がやってた」
「いやいや、鳴瀬さんじゃ息子さんにバレるっしょ! 仮面でもかぶってたんすかねー」
わはは、とスーツの男は豪快に笑う。
「えっと……要するに、僕に内緒でラブを運んでたってこと?」
「そうだ。人魚……ラブがサプライズがいいって言ってたんだ」
「私のアイデアなの。そっちの方がナルもおもしろいかなって」
「いやいや、不安で仕方なかったよ……もうやめて……」
僕の口から笑い声が漏れた。臨戦状態だった体が弛緩していく。心臓の拍動が少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「ちなみに、ここはプライベートビーチなの。ラブちゃんも人目を気にせず自由に泳げるのよ」
そういえば、見渡しても周りに人はいない。ホテルのような建物が一軒建っているだけだ。
「あのホテルに許可もらって今日貸切なんすよ。鳴瀬さんの息子さん、いや、えっと……朝陽くんっすか?」
スーツ姿の若者が僕に尋ねる。
「またラブちゃん運ぶっすからね! いつでも言ってくださいっす」
ニッと笑った顔が爽やかで、印象的だった。
ラブがこちらに泳いでくる。「ナル」と呼びかけられ、僕は彼女に近づく。数メートルの距離を空けて、陸に生きる僕と海に生きる彼女は会話をする。
「もう満足。あなたと別れていた間、ずっとずっと……寂しかったの」
目を伏せるラブ。揺れる波が彼女の瞳にきらきらと反射する。
「絆創膏を貼ってくれたあのときから、私はあなたと一緒にいたかったのね」
ふふ、と小さな笑い声が聞こえた。
「あなたといられることの方が大事だわ。帰りましょ」
顔を上げたその表情には、いつもの彼女の優しげな微笑みがあった。揺蕩うラブの尾ひれの動きは穏やかで、彼女が安心していることが見てとれた。
「ね」と僕の後ろに向かって大家さんは微笑む。すると、「いやー、俺頑張ったっすよねー」と間抜けな声が聞こえた。振り返るとスーツの男だった。さっきまでの氷のような無表情はどこへやら、チャラい若者の顔をしている。
「ほんと鳴瀬さん人使い荒いんだから。言われたの今朝っすよ。今朝。俺が元演劇部だったからよかったっすけど、いなかったらどうしてたんすか?」
「……俺がやってた」
「いやいや、鳴瀬さんじゃ息子さんにバレるっしょ! 仮面でもかぶってたんすかねー」
わはは、とスーツの男は豪快に笑う。
「えっと……要するに、僕に内緒でラブを運んでたってこと?」
「そうだ。人魚……ラブがサプライズがいいって言ってたんだ」
「私のアイデアなの。そっちの方がナルもおもしろいかなって」
「いやいや、不安で仕方なかったよ……もうやめて……」
僕の口から笑い声が漏れた。臨戦状態だった体が弛緩していく。心臓の拍動が少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「ちなみに、ここはプライベートビーチなの。ラブちゃんも人目を気にせず自由に泳げるのよ」
そういえば、見渡しても周りに人はいない。ホテルのような建物が一軒建っているだけだ。
「あのホテルに許可もらって今日貸切なんすよ。鳴瀬さんの息子さん、いや、えっと……朝陽くんっすか?」
スーツ姿の若者が僕に尋ねる。
「またラブちゃん運ぶっすからね! いつでも言ってくださいっす」
ニッと笑った顔が爽やかで、印象的だった。
ラブがこちらに泳いでくる。「ナル」と呼びかけられ、僕は彼女に近づく。数メートルの距離を空けて、陸に生きる僕と海に生きる彼女は会話をする。
「もう満足。あなたと別れていた間、ずっとずっと……寂しかったの」
目を伏せるラブ。揺れる波が彼女の瞳にきらきらと反射する。
「絆創膏を貼ってくれたあのときから、私はあなたと一緒にいたかったのね」
ふふ、と小さな笑い声が聞こえた。
「あなたといられることの方が大事だわ。帰りましょ」
顔を上げたその表情には、いつもの彼女の優しげな微笑みがあった。揺蕩うラブの尾ひれの動きは穏やかで、彼女が安心していることが見てとれた。
