3

 数分間だろうか。しばらくうずくまったのち、僕は起き上がった。そしてスマホを取り出す。

 もしかしたらラブのことがニュースに上がっているかもしれない。見つけた誰かが面白がって彼女の写真をアップしているかもしれない。

 虚ろな目のまま、「人魚」で検索する。画面をぼーっと視界に映していると、待つ間もなく検索結果が表示される。

 そこには百科事典のサイトが表示されているだけだった。ラブの写真はどこにもない。僕は眉をひそめる。ということは、ネットに写真を上げるようなやつではない?

 人魚の行方を調べるにはどうしたらいいんだろう。考えていると、ふと一人の顔が思い浮かんだ。本当はかけたくないけれど、僕はこの際仕方がないと割り切って電話をかける。少しのコール音がしたのち、電話が繋がった。

「どうしたんだ、鳴瀬。お前から電話が来るなんて珍しいな」
「倉田。……変な質問するけど、いい?」
「はぁ? まぁいいけど……なんだ?」

 僕は一度深呼吸して、そして質問をする。

「もし人魚が見つかったとしたら、どうする?」

 返事を待つ。スマホを握る手には汗がにじんでいる。

「……そうだな。俺だったら、テレビ局に連絡するかな。それでオカルト番組に取り上げてもらうかも」
「テレビか……! ありがとう、倉田!」
「あ、あぁ……」

 電話越しの声から察するに、倉田がラブのことを知っているわけじゃなさそうだった。倉田がもしラブをさらっていたなら、こんなにテンションは低くない。電話を切ろうとしたところで、僕を心配する声が聞こえた。

「どうしたんだ、鳴瀬……大丈夫か? お前、オカルト系苦手なタイプだっただろ。もしかして、今興味が出てきたとか……」
「あ、いや、違う違う! そういうわけじゃなくて、ただ聞いてみたかっただけ」
「……そうなのか」

 倉田は不審がっている。まぁ、そうだよな。そりゃこんな対応になるよな。

「ごめん、倉田。いきなり電話なんかして。今度お昼ごはんおごるから、このことは忘れてくれないかな?」
「わかった、忘れる。おごることは絶対忘れんなよ!」

 倉田は「じゃあまたな」と言って電話を切った。通話アプリを閉じると、僕はスマホでオカルト番組を片っ端から検索していった。
 しかし、直近で放送予定のものは昔の再放送や対談ばかりで、「怪奇! 人魚は実在していた!」なんていう見出しの番組は見つからなかった。

 ということは、もしかしてラブをさらったまましばらく閉じ込めようとしている? 観察して遊ぼうとしている? それとも、一人で人魚の、ラブの、肉を……。

 考えただけでぞっとする。そんなの、僕は許さない。事実、ラブを匿っている僕が言える立場じゃないけど。

 どうしたものか、と考えているとスマホが震えた。はっとなって画面を見ると、電話がかかってきている。通話アプリではなく、電話として、だ。そして発信元は……非通知。

 非通知の電話はいつも切ってしまうけれど、僕はなにかの手掛かりになるのではないかと藁にも縋る思いで緑のボタンをスライドさせた。
3/8ページ
スキ