ノイズな僕は生きてはいけない
僕はどう見てもノイズだ。ノイズは、音楽の中ではメロディーにこそなれないがアクセントとして役に立つこともある。しかし僕は、この世界を奏でる音の一つにはどうしてもなれない。邪魔なモノだ。ごみ箱行きのいらないモノ。地球というストレージのお荷物。
生きてはいけない存在だ、と誰かが言う。ぎゅうと心臓を握られたような感覚。その痛みはあの四文字を僕の口から紡ぎ出す。もう、癖になってしまっている。口を開き、その音を発しようとした、そのときだった。
「どうしてそんなこと言うの!?」
つんざくような怒声にぎょっとして振り向く。両目はイヤーマフ越しに聞こえてしまったその声の主を探す。
女性が誰かを叱っている。傍らに、アスファルトにへたりこんでわんわん泣く子供がいた。顔を真っ赤にして泣く姿は、あの頃の僕と同じだった。
途端、どろっと視界が歪んで、目の前にいるのが両親と二人の子供になる。薄暗い部屋の中、くせっ毛の一人はわあわあ泣いて、黒髪のもう一人は涙目で立ち向かって。
その場を逃げるようにして去る。このままいたら僕にまで被害が及ぶ。しかし、久々に目撃した怒りの感情に、僕の頭は勝手に昔のトラウマを上映しだす。
両親は常に喧嘩をしていた。子供の目の前で、堂々と。今でこそ精神的虐待と形容されるものかもしれないが、当時の僕らに対してのサポートはどの大人からも与えられなかった。
止むことのない怒声、物が次々壊れる音に、僕はただ怯えることしかできなかった。彼らの発する音が、どれも怖かった。鋭利なものがざくざくと僕に刺さる。痛みに声を上げて泣いても、両親は助けようとはしなかった。
彼らが喧嘩をしていたのは、僕が生まれてしまったからかもしれない。そんなことを、体と脳が大人に近づいていくにつれて考えるようになった。親の思考を理解できるようになってしまったのだ。障がいを持つ子供の世話は大変だ。だから障がい者と区分されるのだ。そんな普通でない子供を持ってしまった親は、どれだけのストレスを抱えることだろう。
次第にうるさい学校へ行くのをやめ、暗い部屋で一人引きこもるようになった。うるさい音を聞かない方が僕は楽だし、部屋にいれば聞こえてくる音も少しは小さくなる。その方がきっと、親も楽だから。
引きこもっても、あの思考は染みついて離れなかった。液晶の光の出す一時的な快楽をむさぼるようにゲームをする毎日。のめりこんでいる間は、なにも考えなくて済んだ。この時間がずーっと続けばいいのに、といつも思っていた。
唯一の生きがいであるゲームを切り上げたあとに必ず感じる、現実に引き戻される嫌な瞬間。それが来る度に、ぐちゃぐちゃの思考が戻ってきた。僕のせいだ。僕がいるから、喧嘩するんだ。なぜ心臓が動いているのか、毎日わからなかった。
その僕の世話をし続けた両親と同じストレスを、弟が持っていないか心配だ。
生きてはいけない存在だ、と誰かが言う。ぎゅうと心臓を握られたような感覚。その痛みはあの四文字を僕の口から紡ぎ出す。もう、癖になってしまっている。口を開き、その音を発しようとした、そのときだった。
「どうしてそんなこと言うの!?」
つんざくような怒声にぎょっとして振り向く。両目はイヤーマフ越しに聞こえてしまったその声の主を探す。
女性が誰かを叱っている。傍らに、アスファルトにへたりこんでわんわん泣く子供がいた。顔を真っ赤にして泣く姿は、あの頃の僕と同じだった。
途端、どろっと視界が歪んで、目の前にいるのが両親と二人の子供になる。薄暗い部屋の中、くせっ毛の一人はわあわあ泣いて、黒髪のもう一人は涙目で立ち向かって。
その場を逃げるようにして去る。このままいたら僕にまで被害が及ぶ。しかし、久々に目撃した怒りの感情に、僕の頭は勝手に昔のトラウマを上映しだす。
両親は常に喧嘩をしていた。子供の目の前で、堂々と。今でこそ精神的虐待と形容されるものかもしれないが、当時の僕らに対してのサポートはどの大人からも与えられなかった。
止むことのない怒声、物が次々壊れる音に、僕はただ怯えることしかできなかった。彼らの発する音が、どれも怖かった。鋭利なものがざくざくと僕に刺さる。痛みに声を上げて泣いても、両親は助けようとはしなかった。
彼らが喧嘩をしていたのは、僕が生まれてしまったからかもしれない。そんなことを、体と脳が大人に近づいていくにつれて考えるようになった。親の思考を理解できるようになってしまったのだ。障がいを持つ子供の世話は大変だ。だから障がい者と区分されるのだ。そんな普通でない子供を持ってしまった親は、どれだけのストレスを抱えることだろう。
次第にうるさい学校へ行くのをやめ、暗い部屋で一人引きこもるようになった。うるさい音を聞かない方が僕は楽だし、部屋にいれば聞こえてくる音も少しは小さくなる。その方がきっと、親も楽だから。
引きこもっても、あの思考は染みついて離れなかった。液晶の光の出す一時的な快楽をむさぼるようにゲームをする毎日。のめりこんでいる間は、なにも考えなくて済んだ。この時間がずーっと続けばいいのに、といつも思っていた。
唯一の生きがいであるゲームを切り上げたあとに必ず感じる、現実に引き戻される嫌な瞬間。それが来る度に、ぐちゃぐちゃの思考が戻ってきた。僕のせいだ。僕がいるから、喧嘩するんだ。なぜ心臓が動いているのか、毎日わからなかった。
その僕の世話をし続けた両親と同じストレスを、弟が持っていないか心配だ。
