ノイズな僕は生きてはいけない
「本当に、お仕事のお悩みはないですか? お仕事でなくとも、ご家族のことですとか、なんでも構いません。もし、お悩みのようでしたらぜひ相談してください」
変わらずにこやかな表情で、ソーシャルワーカーは僕に尋ねる。机の上に出された両手が、僕から言葉を引き出そうとしている。ツヤツヤの爪を、僕の筋の入ったそれと比べてしまう。
同い年の、普通に生きてきた、人間。音階の一つになり得る、人間。体重を預けることが、まだ、怖い。
僕は表情を変えず、淡々と返事をする。
「大丈夫です」
「本当に?」
「……大丈夫です」
この時間が終わってほしい。終われ、終われ、と心の中で願う。
早く、あの部屋に戻りたかった。こんな人工的な明かりじゃない、あの部屋に。この世界でたった一部屋しかない、それでいて唯一安心できる、あの部屋に。すべてを忘れて、心地いい空間で静けさに浸っていたかった。
僕から言葉を引き出そうと待ってくれているやさしさに、申し訳なく感じて机に視線を落とす。白いテーブルは僕を見つめ返して、なにも言わない。
「……そうですか。では、今回の面談はここまでですね」
そう言われるやいなや、僕は小さなショルダーバッグをかけ、そそくさとドアへ向かう。
「後藤さん」
ドアノブに手をかけた瞬間、もう一度声をかけられた。
「話したくなったら、いつでも相談してくださいね」
微笑みを視界の端に収めて、会釈をした。
変わらずにこやかな表情で、ソーシャルワーカーは僕に尋ねる。机の上に出された両手が、僕から言葉を引き出そうとしている。ツヤツヤの爪を、僕の筋の入ったそれと比べてしまう。
同い年の、普通に生きてきた、人間。音階の一つになり得る、人間。体重を預けることが、まだ、怖い。
僕は表情を変えず、淡々と返事をする。
「大丈夫です」
「本当に?」
「……大丈夫です」
この時間が終わってほしい。終われ、終われ、と心の中で願う。
早く、あの部屋に戻りたかった。こんな人工的な明かりじゃない、あの部屋に。この世界でたった一部屋しかない、それでいて唯一安心できる、あの部屋に。すべてを忘れて、心地いい空間で静けさに浸っていたかった。
僕から言葉を引き出そうと待ってくれているやさしさに、申し訳なく感じて机に視線を落とす。白いテーブルは僕を見つめ返して、なにも言わない。
「……そうですか。では、今回の面談はここまでですね」
そう言われるやいなや、僕は小さなショルダーバッグをかけ、そそくさとドアへ向かう。
「後藤さん」
ドアノブに手をかけた瞬間、もう一度声をかけられた。
「話したくなったら、いつでも相談してくださいね」
微笑みを視界の端に収めて、会釈をした。
