青瞳の戦闘人形

 数日経った、いつもの夜のことだった。星がよく見える夜だった。私は床に寝そべっているリュシーに静かに声をかける。

「ねぇ、リュシー」
「なんでしょうか、お嬢様」

「たまには床じゃなくて、ベッドで一緒に寝ない?」
「ですが、それでは万が一見つかった際に、流れ弾がお嬢様に当たってしまう可能性があります」
「いい! 別に大丈夫。私はそれでもリュシーと一緒に寝たいの」
「お嬢様……」

 リュシーはしばらく目をきょろきょろさせた後、「それでは、お言葉に甘えて」とベッドに入ってきた。

「えへへ、一緒だね」
 リュシーの肌は冷たかった。私より硬くて、冷たい肌。

「一緒、ですね」
 戦闘人形なんだな、ロボットなんだなということを少し思い出す。

「お嬢様」
「なに?」
「私は邪魔ではありませんか。ここまで匿ってもらって、食事もいただいて。感謝はしています。ですが」

 リュシーはすぅと息を吸う。
「やはり、邪魔なのではないかと思ってしまうのです」

 少しだけ沈黙が流れた。夜風が窓をかすめていく。

「邪魔なんかじゃないよ、リュシー」
 私はリュシーに優しく声をかける。青い眼とぱちりと目があう。

「お友達だから」
 青い瞳が見開く。

「大好きだから」
 口の端がきゅっと結ばれる。

「いいの」
 微笑んでみせると、リュシーは私から視線を外した。

 その後、私たちは一言も言葉を交わさなかった。うまく言葉が出なかった。考えているうちに、いつの間にかまどろんでいた。
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