青瞳の戦闘人形
いつものように監視をしていた、ある日。
「お嬢ちゃん、こんな夜中になにをしているんだい?」
「えっと」
声をかけられた。お酒の匂いがする。酔っているおじさんだった。
「良い子は寝る時間だよ」
「でも、その。えっと」
おじさんはふらふらした足取りで壁の方へ歩いていく。
この先にはリュシーがいる。リュシーが壁を登っている。それを見られてしまうこと。それだけは、それだけはどうしても避けたい。
おじさんの横について歩く。
「この先は、だめなの」
「えぇ? なんでだい?」
「えっと、その、んーと」
いいアイデアが浮かばない。友達がいるから? それを見るなと? そう伝えて、果たして納得してもらえるだろうか?
「ごめんなさい、どうしてもだめなの」
「……そうやって言われたら、見に行きたくなっちゃうよねぇ?」
「え?」
おじさんは壁の方向に走り出した!
「待って!」
私はおじさんの後についていく。おじさんは酔っているからか足が遅く子供の私でもすぐに追いつけたけど、彼を止めるための言葉が思いつかない。
考えている間に壁についてしまった。リュシーはいない。
「来てみたけど何もいねぇじゃねぇかぁー! お嬢ちゃん、おじさん期待して損したよ」
リュシーは? リュシーはどこ? おろおろしていると、おじさんの背後に見知った顔があった。
「りゅ……」
人形は手刀でおじさんの首を叩いた。おじさんは一瞬驚いた顔をしてその場に倒れた。
「この人を別の場所に運びます。どこか、遠いところへ」
「え、でも……」
「……おー?」
おじさんは気絶していなかった! うっすらと目を開けて、リュシーの方を見ている。
「お、お前、博物館から逃げ出したっていうあの……! ぐぇっ」
リュシーはまた手刀をして、今度こそおじさんを気絶させた。
見られてしまった。脱走した敵国のロボットが、まだこの国にいるということを知られてしまった。これ、相当まずいのでは。
リュシーを見ると、どこからか銃を取り出して自分の頭に突きつけている。
「だめっ!」
私は人形に駆け寄ってどうにか銃を取ろうとする。銃は月明かりに照らされて残酷な程に鈍く輝いていた。
「どうしてですか」
リュシーは信じられないほど冷たい顔で私を見つめていた。
「私には、もう、居場所などないのです」
絶望した声でリュシーは呟く。
「じゃあ、じゃあさ! うち! うち来たら?」
わざと明るく振る舞ってみせた。「ね?」と念押しすると、リュシーはようやく銃口を自らの頭から離し、右太もものレッグホルスターに銃を戻した。
「ですが……私は邪魔なのでは……」
「私の部屋にいればいいよ! 安全だからさ」
「しかし、お父様やお母様は、私を嫌っているのではないですか」
「隠れてればいいんじゃない? ベッドの下、タンスの中、色々あるから!」
笑顔で提案する。少しの沈黙の後、リュシーは覚悟を決めたのか私の後ろについた。青い瞳が不安そうに瞬いた。
「お嬢ちゃん、こんな夜中になにをしているんだい?」
「えっと」
声をかけられた。お酒の匂いがする。酔っているおじさんだった。
「良い子は寝る時間だよ」
「でも、その。えっと」
おじさんはふらふらした足取りで壁の方へ歩いていく。
この先にはリュシーがいる。リュシーが壁を登っている。それを見られてしまうこと。それだけは、それだけはどうしても避けたい。
おじさんの横について歩く。
「この先は、だめなの」
「えぇ? なんでだい?」
「えっと、その、んーと」
いいアイデアが浮かばない。友達がいるから? それを見るなと? そう伝えて、果たして納得してもらえるだろうか?
「ごめんなさい、どうしてもだめなの」
「……そうやって言われたら、見に行きたくなっちゃうよねぇ?」
「え?」
おじさんは壁の方向に走り出した!
「待って!」
私はおじさんの後についていく。おじさんは酔っているからか足が遅く子供の私でもすぐに追いつけたけど、彼を止めるための言葉が思いつかない。
考えている間に壁についてしまった。リュシーはいない。
「来てみたけど何もいねぇじゃねぇかぁー! お嬢ちゃん、おじさん期待して損したよ」
リュシーは? リュシーはどこ? おろおろしていると、おじさんの背後に見知った顔があった。
「りゅ……」
人形は手刀でおじさんの首を叩いた。おじさんは一瞬驚いた顔をしてその場に倒れた。
「この人を別の場所に運びます。どこか、遠いところへ」
「え、でも……」
「……おー?」
おじさんは気絶していなかった! うっすらと目を開けて、リュシーの方を見ている。
「お、お前、博物館から逃げ出したっていうあの……! ぐぇっ」
リュシーはまた手刀をして、今度こそおじさんを気絶させた。
見られてしまった。脱走した敵国のロボットが、まだこの国にいるということを知られてしまった。これ、相当まずいのでは。
リュシーを見ると、どこからか銃を取り出して自分の頭に突きつけている。
「だめっ!」
私は人形に駆け寄ってどうにか銃を取ろうとする。銃は月明かりに照らされて残酷な程に鈍く輝いていた。
「どうしてですか」
リュシーは信じられないほど冷たい顔で私を見つめていた。
「私には、もう、居場所などないのです」
絶望した声でリュシーは呟く。
「じゃあ、じゃあさ! うち! うち来たら?」
わざと明るく振る舞ってみせた。「ね?」と念押しすると、リュシーはようやく銃口を自らの頭から離し、右太もものレッグホルスターに銃を戻した。
「ですが……私は邪魔なのでは……」
「私の部屋にいればいいよ! 安全だからさ」
「しかし、お父様やお母様は、私を嫌っているのではないですか」
「隠れてればいいんじゃない? ベッドの下、タンスの中、色々あるから!」
笑顔で提案する。少しの沈黙の後、リュシーは覚悟を決めたのか私の後ろについた。青い瞳が不安そうに瞬いた。