第一部
名前変換
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スリザリン寮での最初の朝は、案の定起きるのがつらかった。日の光を作る魔法を早く覚えないと。名前は寝ぼけまなこをこすりながら、のろのろと緑のローブに着替えた。
朝の大広間は、1週間分の朝食全てが用意されたような空間だった。オートミールはもちろん、コーンフレークもベーコンも山のようにあったし、卵料理に関してはスクランブルエッグ、オムレツ、目玉焼きなど一通りの種類があった。銀のホルダーに入ったトーストは、生徒が手を伸ばすのをやめるまで永遠に補充されるようだった。
意外にも、アニーは名前と朝からずっと行動を共にしていた。
彼女は家柄を重視していて、友達もそういう目で選ぶだろうと思っていただけに、名前は驚いた。しかし右も左も分からない環境の中、アニーと一緒に城を歩き、これからの生活に対する期待と不安を話す事が出来るのはとても嬉しかった。
朝食を食べ終わった頃、大広間にふくろう便の群れが押し寄せ、大量の荷物が各寮のテーブルにバラバラと散らばった。
新学期の2日目はどの生徒も家から忘れ物がひとつは届くのだ、と名前の隣に座っていた上級生が笑って言った。
アニーの席には大きな包みと手紙が一通届いていた。「渡しきれなかった荷物がまだまだあるので、明日また送る」という内容だった。アニーは包み紙をビリビリと破いて、就寝用のベロアローブだと分かるやいなや、それを抱きしめた。
テーブルの荷物が片付き始めた頃、一年生の時間割が配られた。
最初の授業は「妖精の呪文」だった。名前とアニーは寮へ戻り、教科書と杖を携えて教室へと向かった。
昨夜セブルスの事を「たいした事ない」と見下げていたアニーだったが、彼女は授業の初日から悔しい思いを何度もする羽目になった。
セブルスは非常に優秀だった。
妖精の呪文の最初の授業で、先生は杖を持つ時の手首のスナップの効かせ方について講義し、物を浮かす呪文は参考程度に見せるだけのつもりだった。しかしセブルスはその最初の授業で、机にあった羽根を見事に浮かせてみせた。
名前もアニーも、驚いて顔を見合わせた。程なくして、グリフィンドールの男の子数人が、対抗するかのように全員で呪文を唱えた。しかし羽根が爆発しながら教室を飛び回る事態になり、教室は一時パニック状態だった。先生はそれを収拾するのに精一杯で、授業は混乱のうちに終わった。
アニーは相当面白くないようで、廊下を歩きながら、セブルスの欠点を必死に探そうとしていた。
「無愛想だし、死人みたいな顔色だし、鼻も変な形…」アニーの口からはポンポンと言葉が出てきた。「絶対、何かしら、どヘタな事があるに決まってるわ。ほんと人を見下してるみたいで腹立つ。そういう意味では、友達作りが致命的にヘタかもね。」
名前は否定も肯定もせず適当に相槌を打ちながら聞いていたが、目の前を見てハッと息を飲んだ。セブルスとあの赤毛の女の子が話しながら歩いてきたのだ。
直前まで「友達なんか一生出来ないでしょ」と嫌味をたれていたアニーは、心底驚いた顔をしていた。2人は食い入るようにセブルスと女の子を見た。
すると突然、セブルスたちの後ろから男の子2人が走ってきて、女の子にぶつかった。彼女の持っていた本が床にバサバサと落ちた。
またあの子たちだった。行きの汽車で蛙チョコをめぐって騒ぎ、呪文学の授業で爆発羽根を飛ばした張本人。メガネの男の子がセブルスたちの方を振り返って、いたずらな表情でニヤッと笑った。
名前には、どうも彼らがしゃくに触るような気がした。セブルスも同じだったらしく、走りゆく少年を鋭い目つきで睨み返した。それからセブルスは落ちた本を丁寧に拾い、呆然とする女の子に優しく渡した。
名前とアニーはその様子を横目にみながら、彼らと反対方向に通り過ぎた。
「ちょっとなに今の」セブルスたちの姿が見えなくなってから、アニーは口を開いた。「入学早々ガールフレンドがいるってわけ?しかもグリフィンドールの!同じ寮のあたしたちの事は無視しておいて、何考えてんのかしら?」
「あの2人は入学前からの友達みたい」名前は言った。「私、汽車に2人が一緒に乗るとこ見たの。組分け前の部屋でも、2人で話してたし…」
「はーん。もしかして彼、グリフィンドールになりたかったってやつ?」アニーが失笑した。
「それは違うと思う……組分け前に、スリザリンが良いような事言ってたから。」
名前は女の子と寮が別れた時の、セブルスの後ろ姿を思い出していた。
「へえー。ま、入学前から友達だって言っても、数ヶ月もすれば自然と接点なんて無くなってくわよ。寮は対抗し合うものだしね。ましてグリフィンドールなんて、スリザリンと憎み合う仲なんだから。」アニーは冷めきった口調で言った。
名前には、なぜこれほどアニーがセブルスの不幸を願うのか不思議に感じられた。確かに印象は最悪だが、何かすごく酷いことをされたわけでもない。
「アニー、セブルスに恨みでもあるの?」
「別に。でもムカつくでしょ?」
なるほど、これがスリザリンなのかもしれない。名前は何となくそう思った。
翌日は朝からレイブンクローと合同で、魔法薬学の授業だった。しかし朝食の時間に、前日の手紙にあった通り大量のふくろう便がアニー宛に届き、それを寮へ運ぶのを手伝っているうちに名前もアニーと共に授業に遅れそうになっていた。
「まさか、あんなに荷物が届くなんて!思ってもみなかったから!」廊下を走りながらアニーが声を張り上げた。迷惑そうな口調とは裏腹に、その顔は嬉しさに満ちている。
アニー宛の荷物は全て家族からのプレゼント…と名前には思えるものだった。新品の高そうな洋服や、見たこともない魔法道具の数々。果たしてこれが本当に学園生活に必要なのだろうか?名前には甚だ疑問だった。
2人は息を切らして魔法薬学の教室にたどり着いた。幸い、先生が入口から席に向かっている途中で、名前とアニーは間一髪間に合った。しかし一緒に並んで座れる席はもう無かった。
「どうする?」アニーが囁いた。「あたしたち2人で座れるように、誰かにどいてもらう?」
「そんな事できないよ」名前は席を探しながら言った。かなり距離は遠いが、空席がちょうど2つある。「あそこと、あの奥が空いてるけど…」
「あの奥って、あいつの隣じゃない!絶対、嫌!!」アニーが小声で叫んだ。そう言われて見てみると、そこに座っているのはセブルスだった。
「あ、じゃあ私があっちに行くよ…」
緑のネクタイを正しながら名前は席へ向かった。アニーはごめんね、というポーズをとった後、不服そうにレイブンクロー生の隣に座った。
名前はセブルスの隣に一言ことわって座ったが、案の定セブルスは名前に一瞥もくれなかった。
「さてさて、さーて」背の低い小太りな先生が、生徒の方に向き直って授業を始めた。
「魔法薬学を担当する、ホラス・スラグホーンだ。みんなには、この一年で魔法薬学の基礎を学んでもらう。さ、教科書の2ページ目を開いて」
全員がいっせいに教科書を開いた。基礎魔法薬の一覧がズラっと載っている。
「よろしい。授業の流れとしては、まずそれぞれの魔法薬について座学で学んでもらう。そして、何よりも大事なのが実践だ。自分の力で作れるようにならなくてはならない。ただ、一年生の最初のうちは、一人で魔法薬を仕上げるのはなかなか難しい。そこで、チームワークを学ぶためにも、ペアで作業をしてもらう。」
先生の言葉に教室が一瞬ザワついた。名前とアニーは距離こそ離れていたものの、反射的に目を合わせた。
「ペアの決め方だが、いちいち決めるのも面倒なので、いま座っている席の隣同士で組むこと。はい、端から2、2、2…分かるね?」
名前は自分が座っている列の席数を確認した。偶数だ。そして、自分が座っているのは1番右端。数えるまでもなく、ペアの相手はセブルスだと分かった。
なんと、まさか、セブルスと。
席が隣なだけならまだしも、ペアでの作業なんて。セブルスの先の優秀ぶりを思い出し、名前は身の縮む思いがした。これほどのプレッシャーは感じたことがない。
それから1時間半、生徒達は最初の実践課題である「おできを治す薬」について学んだ。材料や効能、作り方、注意点…。
調合を間違えるとおできだらけになるというスラグホーンの説明にみんな笑ったが、名前はぴくりとも笑えなかった。もし自分のミスでセブルスをそんな目に合わせたら、絶対に殺される。
「あ、あのーセブルス」授業が終わり、みんなが立ち上がる頃、名前はセブルスに話しかけた。
「…私の名前、覚えてる?」
「名前・苗字」予想と裏腹に、セブルスからは正しい答えが返ってきた。名前を覚えるなんて最低限の礼儀だが、セブルスには期待すらしていなかった。名前は思わず感心してしまった。
「そうそう!」名前は弾む声で言った。「優秀なあなたと一緒なんてプレッシャーだけど…よろしくね。」
「足を引っ張るなよ」そう言って、セブルスは荷物を抱えて立ち上がった。
「はあ〜〜!?」気がつくと、名前の後ろにアニーが立っていた。「足を引っ張るな?あんた、何様のつもりなの!?」
セブルスはアニーをちらっと見て、呆れたような顔をして去っていった。
「想像以上に、嫌な奴!」アニーは歯をむき出しにして怒っていた。「まだ何も始まってすらいないのに!」
「大丈夫。」名前としては、セブルスの反応は予想通りだった。「いまに仲良くなってみせるわ。」
それを聞いてアニーはきょとんとした。
「仲良く?あいつと仲良くするつもりでいるの?」
「どうやったって授業は避けられないんだから…仲良くした方が得でしょ。」向こうにその気が無いことは分かっているものの、名前はわずかな可能性に賭けたいと思った。
「そんな事言ったら、あたしはあの地味な女と学校一の親友になれるわよ」アニーは教室の入口付近を指さした。
アニーとペアになったレイブンクロー生は、大きなメガネをかけた、気弱そうな女の子だった。
朝の大広間は、1週間分の朝食全てが用意されたような空間だった。オートミールはもちろん、コーンフレークもベーコンも山のようにあったし、卵料理に関してはスクランブルエッグ、オムレツ、目玉焼きなど一通りの種類があった。銀のホルダーに入ったトーストは、生徒が手を伸ばすのをやめるまで永遠に補充されるようだった。
意外にも、アニーは名前と朝からずっと行動を共にしていた。
彼女は家柄を重視していて、友達もそういう目で選ぶだろうと思っていただけに、名前は驚いた。しかし右も左も分からない環境の中、アニーと一緒に城を歩き、これからの生活に対する期待と不安を話す事が出来るのはとても嬉しかった。
朝食を食べ終わった頃、大広間にふくろう便の群れが押し寄せ、大量の荷物が各寮のテーブルにバラバラと散らばった。
新学期の2日目はどの生徒も家から忘れ物がひとつは届くのだ、と名前の隣に座っていた上級生が笑って言った。
アニーの席には大きな包みと手紙が一通届いていた。「渡しきれなかった荷物がまだまだあるので、明日また送る」という内容だった。アニーは包み紙をビリビリと破いて、就寝用のベロアローブだと分かるやいなや、それを抱きしめた。
テーブルの荷物が片付き始めた頃、一年生の時間割が配られた。
最初の授業は「妖精の呪文」だった。名前とアニーは寮へ戻り、教科書と杖を携えて教室へと向かった。
昨夜セブルスの事を「たいした事ない」と見下げていたアニーだったが、彼女は授業の初日から悔しい思いを何度もする羽目になった。
セブルスは非常に優秀だった。
妖精の呪文の最初の授業で、先生は杖を持つ時の手首のスナップの効かせ方について講義し、物を浮かす呪文は参考程度に見せるだけのつもりだった。しかしセブルスはその最初の授業で、机にあった羽根を見事に浮かせてみせた。
名前もアニーも、驚いて顔を見合わせた。程なくして、グリフィンドールの男の子数人が、対抗するかのように全員で呪文を唱えた。しかし羽根が爆発しながら教室を飛び回る事態になり、教室は一時パニック状態だった。先生はそれを収拾するのに精一杯で、授業は混乱のうちに終わった。
アニーは相当面白くないようで、廊下を歩きながら、セブルスの欠点を必死に探そうとしていた。
「無愛想だし、死人みたいな顔色だし、鼻も変な形…」アニーの口からはポンポンと言葉が出てきた。「絶対、何かしら、どヘタな事があるに決まってるわ。ほんと人を見下してるみたいで腹立つ。そういう意味では、友達作りが致命的にヘタかもね。」
名前は否定も肯定もせず適当に相槌を打ちながら聞いていたが、目の前を見てハッと息を飲んだ。セブルスとあの赤毛の女の子が話しながら歩いてきたのだ。
直前まで「友達なんか一生出来ないでしょ」と嫌味をたれていたアニーは、心底驚いた顔をしていた。2人は食い入るようにセブルスと女の子を見た。
すると突然、セブルスたちの後ろから男の子2人が走ってきて、女の子にぶつかった。彼女の持っていた本が床にバサバサと落ちた。
またあの子たちだった。行きの汽車で蛙チョコをめぐって騒ぎ、呪文学の授業で爆発羽根を飛ばした張本人。メガネの男の子がセブルスたちの方を振り返って、いたずらな表情でニヤッと笑った。
名前には、どうも彼らがしゃくに触るような気がした。セブルスも同じだったらしく、走りゆく少年を鋭い目つきで睨み返した。それからセブルスは落ちた本を丁寧に拾い、呆然とする女の子に優しく渡した。
名前とアニーはその様子を横目にみながら、彼らと反対方向に通り過ぎた。
「ちょっとなに今の」セブルスたちの姿が見えなくなってから、アニーは口を開いた。「入学早々ガールフレンドがいるってわけ?しかもグリフィンドールの!同じ寮のあたしたちの事は無視しておいて、何考えてんのかしら?」
「あの2人は入学前からの友達みたい」名前は言った。「私、汽車に2人が一緒に乗るとこ見たの。組分け前の部屋でも、2人で話してたし…」
「はーん。もしかして彼、グリフィンドールになりたかったってやつ?」アニーが失笑した。
「それは違うと思う……組分け前に、スリザリンが良いような事言ってたから。」
名前は女の子と寮が別れた時の、セブルスの後ろ姿を思い出していた。
「へえー。ま、入学前から友達だって言っても、数ヶ月もすれば自然と接点なんて無くなってくわよ。寮は対抗し合うものだしね。ましてグリフィンドールなんて、スリザリンと憎み合う仲なんだから。」アニーは冷めきった口調で言った。
名前には、なぜこれほどアニーがセブルスの不幸を願うのか不思議に感じられた。確かに印象は最悪だが、何かすごく酷いことをされたわけでもない。
「アニー、セブルスに恨みでもあるの?」
「別に。でもムカつくでしょ?」
なるほど、これがスリザリンなのかもしれない。名前は何となくそう思った。
翌日は朝からレイブンクローと合同で、魔法薬学の授業だった。しかし朝食の時間に、前日の手紙にあった通り大量のふくろう便がアニー宛に届き、それを寮へ運ぶのを手伝っているうちに名前もアニーと共に授業に遅れそうになっていた。
「まさか、あんなに荷物が届くなんて!思ってもみなかったから!」廊下を走りながらアニーが声を張り上げた。迷惑そうな口調とは裏腹に、その顔は嬉しさに満ちている。
アニー宛の荷物は全て家族からのプレゼント…と名前には思えるものだった。新品の高そうな洋服や、見たこともない魔法道具の数々。果たしてこれが本当に学園生活に必要なのだろうか?名前には甚だ疑問だった。
2人は息を切らして魔法薬学の教室にたどり着いた。幸い、先生が入口から席に向かっている途中で、名前とアニーは間一髪間に合った。しかし一緒に並んで座れる席はもう無かった。
「どうする?」アニーが囁いた。「あたしたち2人で座れるように、誰かにどいてもらう?」
「そんな事できないよ」名前は席を探しながら言った。かなり距離は遠いが、空席がちょうど2つある。「あそこと、あの奥が空いてるけど…」
「あの奥って、あいつの隣じゃない!絶対、嫌!!」アニーが小声で叫んだ。そう言われて見てみると、そこに座っているのはセブルスだった。
「あ、じゃあ私があっちに行くよ…」
緑のネクタイを正しながら名前は席へ向かった。アニーはごめんね、というポーズをとった後、不服そうにレイブンクロー生の隣に座った。
名前はセブルスの隣に一言ことわって座ったが、案の定セブルスは名前に一瞥もくれなかった。
「さてさて、さーて」背の低い小太りな先生が、生徒の方に向き直って授業を始めた。
「魔法薬学を担当する、ホラス・スラグホーンだ。みんなには、この一年で魔法薬学の基礎を学んでもらう。さ、教科書の2ページ目を開いて」
全員がいっせいに教科書を開いた。基礎魔法薬の一覧がズラっと載っている。
「よろしい。授業の流れとしては、まずそれぞれの魔法薬について座学で学んでもらう。そして、何よりも大事なのが実践だ。自分の力で作れるようにならなくてはならない。ただ、一年生の最初のうちは、一人で魔法薬を仕上げるのはなかなか難しい。そこで、チームワークを学ぶためにも、ペアで作業をしてもらう。」
先生の言葉に教室が一瞬ザワついた。名前とアニーは距離こそ離れていたものの、反射的に目を合わせた。
「ペアの決め方だが、いちいち決めるのも面倒なので、いま座っている席の隣同士で組むこと。はい、端から2、2、2…分かるね?」
名前は自分が座っている列の席数を確認した。偶数だ。そして、自分が座っているのは1番右端。数えるまでもなく、ペアの相手はセブルスだと分かった。
なんと、まさか、セブルスと。
席が隣なだけならまだしも、ペアでの作業なんて。セブルスの先の優秀ぶりを思い出し、名前は身の縮む思いがした。これほどのプレッシャーは感じたことがない。
それから1時間半、生徒達は最初の実践課題である「おできを治す薬」について学んだ。材料や効能、作り方、注意点…。
調合を間違えるとおできだらけになるというスラグホーンの説明にみんな笑ったが、名前はぴくりとも笑えなかった。もし自分のミスでセブルスをそんな目に合わせたら、絶対に殺される。
「あ、あのーセブルス」授業が終わり、みんなが立ち上がる頃、名前はセブルスに話しかけた。
「…私の名前、覚えてる?」
「名前・苗字」予想と裏腹に、セブルスからは正しい答えが返ってきた。名前を覚えるなんて最低限の礼儀だが、セブルスには期待すらしていなかった。名前は思わず感心してしまった。
「そうそう!」名前は弾む声で言った。「優秀なあなたと一緒なんてプレッシャーだけど…よろしくね。」
「足を引っ張るなよ」そう言って、セブルスは荷物を抱えて立ち上がった。
「はあ〜〜!?」気がつくと、名前の後ろにアニーが立っていた。「足を引っ張るな?あんた、何様のつもりなの!?」
セブルスはアニーをちらっと見て、呆れたような顔をして去っていった。
「想像以上に、嫌な奴!」アニーは歯をむき出しにして怒っていた。「まだ何も始まってすらいないのに!」
「大丈夫。」名前としては、セブルスの反応は予想通りだった。「いまに仲良くなってみせるわ。」
それを聞いてアニーはきょとんとした。
「仲良く?あいつと仲良くするつもりでいるの?」
「どうやったって授業は避けられないんだから…仲良くした方が得でしょ。」向こうにその気が無いことは分かっているものの、名前はわずかな可能性に賭けたいと思った。
「そんな事言ったら、あたしはあの地味な女と学校一の親友になれるわよ」アニーは教室の入口付近を指さした。
アニーとペアになったレイブンクロー生は、大きなメガネをかけた、気弱そうな女の子だった。