第一部
名前変換
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9と3/4番線から、ホグワーツ特急が間もなく出発しようとしていた。
名前・苗字はホームで家族と別れ、重たい荷物がいっぱいに積まれたカートを押しながら、乗るべき車両を探していた。ガヤガヤとした喧騒のなかに、たくさんのフクロウの鳴き声がこだましている。ホームの上はまるでお祭り騒ぎだった。
出発まであと10分。汽車にはすでに大勢の生徒が乗り込んでいて、車窓を見る限りどこも満席だった。
上級生の多い車両には出来れば乗りたくない。新入生の名前は、なるべく自分と同い年がいる車両を探していた。
「リリー、こっちだ。」
汽車を見上げながら歩く名前を、黒髪の男の子と、赤毛の女の子が小走りで追い越して行った。
小柄な背丈の2人はきょろきょろしながら汽車へと乗り込んだ。その様子から察するに、自分と同じ新入生らしい。入学前から友達がいるなんて。名前は羨ましさから軽くため息をついた。
さっきの2人に続いて自分も乗り込もうかと考えたが、車窓を覗く限りではもう空席はないようだった。
メガネをかけたボサボサ頭の男の子と、整った顔の男の子が、窓にはりついた蛙チョコレートを捕まえようとしている。この車両はなんだか騒がしそうだ。
名前は仕方なく、もう少し歩き、最後尾から一つ前の車両に席を見つけた。
名前が席について間もなく、ホグワーツ行きの汽車は動き出した。
いよいよ出発だ。体がソワソワして、足がふわっと宙に浮くような感覚になった。汽車の車輪がきしむ音と、自分の心臓の鼓動が同じボリュームに聞こえるほど、名前の心は不安と期待でいっぱいだった。
ホームの端にいた家族が手を振ってくれている。次に会えるのはクリスマスの時だ。何だかずっと先のような気がして、名前は胸の奥がきゅっと痛むのを感じた。汽車のスピードは次第に速くなり、家族の姿もキングス・クロスのホームも、あっという間に見えなくなった。
汽車が発車して5分くらいが経った頃、車両のドアがあいて、栗色の髪の男の子が息を切らしながら入ってきた。顔を上げたローズと彼の目がばっちりと合った。見たところ、同じ新入生のようだ。
「あー…そこ、空いてるかな?」
男の子は名前の向かいの席を指さして尋ねた。
「空いてるよ、どうぞ」
名前は自分の荷物をわきにどけて、彼が通りやすいようにスペースを作ってあげた。
「ありがとう」
そう言いながら、男の子はまだ息を切らしていた。
「乗り遅れるかと…走って、一番前の車両にとりあえず乗って、ここまで歩いてきたんだ」
慌てて乗り込むのに必死で、荷物を預け忘れたのだろう。彼は大きなトランクを両手で抱えたまま、長い紐のついたポシェットを首にかけている。ジャケットのポケットからは、食べかけのチョコレートがはみ出ていた。
「あなたも一年生?」
「そうだよ」
名前の問いかけに、男の子は汗をハンカチで拭いながら答えた。
「リーマス・ルーピンだ。よろしくね」
「名前・苗字よ」
リーマスが手を差し伸べ、2人は握手をした。
名前はリーマスの顔を改めて見た。あちこちに引っかき傷のようなものがある。大小様々だが、近くで見るとかなり目立つようだった。
「顔の傷…ケガでもしたの?」
「えっ、ああ、これ?」
リーマスはハッとしたように顔に手を当てた。
「何でもないよ…よくあることなんだ。気にしないで。あ、これ食べる?」
リーマスは話題を逸らすかのようにポケットからチョコを取り出した。触れてはいけない事だったかもしれない。2人の間に一瞬だけ気まずさが流れた。
「ありがとう」
名前は自然な笑顔を取り繕って、リーマスが差し出してきたチョコを受け取った。夏の暑さで少し溶けかかっていたが、とても甘くて美味しい。全身の疲れが抜けていくようだ。
リーマスの後、最後尾に近い車両に乗ってくる生徒はいなかった。
名前はリーマスと新入生ならではの話をして盛り上がった。お互いの出身や両親のこと、ホグワーツからの手紙が来た時のこと、ダイアゴン横丁での買い物のこと、そしてホグワーツの寮について…。
「私の家族はみんなハッフルパフなんだ」
組分け儀式の話になり、名前はリーマスに自分の不安を吐露した。
「家族と同じ組になる子が多いって聞くけど…どうなんだろう。実際のところ今からすごく緊張してるの」
「なかには違う人もいるみたいだね」
リーマスは2枚目のチョコレートの包みを剥がしながら言った。
「でも…この数時間話しただけで、君がとても優しい子だっていうのは伝わってきたから、きっと家族と同じハッフルパフになるんじゃないかな」
共感性が強く、心優しい生徒がハッフルパフに組分けされる。リーマスの言葉を聞いて、名前は最初に出会った同級生が彼で良かったと思った。
「リーマスはどの寮がいいの?」
名前は彼から板チョコの半分を受け取りながら訊ねた。
「僕は、出来ればグリフィンドールがいいかなあ」
リーマスは期待と不安が入り混ざった声色で答えた。
「まあ、でもスリザリンでなければいいよ。あそこは闇の魔法使いの出身寮だから…」
名前はハッフルパフ以外の寮についてはあまり知らなかった。寮によってどれだけの違いがあるのだろう。それを話すと、リーマスはグリフィンドールの素晴らしさについて熱っぽく語ってくれた。少年の瞳には、勇気と騎士道を重んじる紅の寮への憧れが強く宿っていた。
時間とともに、車窓の景色が様変わりしていく。それでも名前とリーマスの会話は途切れることがなかった。11歳の二人にとって、汽車での数時間は友達になるには十分な時間だった。
車窓から眺める景色もだんだんと暗くなり、大半の生徒がウトウトし始めた頃、間もなく学校に到着するので準備をするようにとのアナウンスが入った。名前とリーマスは慌てて学校指定のローブを羽織り、お互いにおかしな所はないかチェックし合った。
汽車を降りると、そこは一見して森の中のようだった。あたりは既に真っ暗で、浮かび上がるランタンが生徒たちの足元を照らしている。
背後から「イッチ年生!イッチ年生はこっちにこい!」という大きな声がした。声がする方に早足で向かうと、なるほどこれ程の大声なわけだ。見たこともないような大男がランタンを持って立っている。その大きさに圧倒され、名前は思わずたじろいだ。この人は先生なのだろうか。隣のリーマスも目を丸くしている。
「よし、全員揃ったみたいだな。イッチ年生、俺についてこい!はぐれずにな」
大男の掛け声と共に、集まっていた一年生たちはゾロゾロと歩き出した。夜の道は暗かったが、どんなに距離が離れても見失うはずはないくらい巨大な案内人だったので、最後尾を歩く名前とリーマスはホッと胸を撫で下ろした。
プラットホームから小道に入り、しばらく歩くと、目の前に大きな黒い湖が現れた。
そこからの移動はボートだった。名前はリーマスと、もう2人の女の子と一緒にボートに乗り込んだ。誰が漕ぐわけでもなく、ボートはひとりでに湖を進んでいく。しばらくして、暗闇のなかにボワっと光が差し込んだかと思うと、いつの間にか目の前に荘厳な城が現れていた。想像していたよりも遥かに立派な城だ。塔がいくつあるのか数え切れない。新入生たちは皆、その光景に息を飲んだ。
ボートから降りた後、新入生たちは城に足を踏み入れ、大理石の階段を上がって、ひとつの部屋に集められた。部屋の奥には厳格そうな魔女が立っており、何かをチェックするかのように、新入生一人一人に目を注いでいる。
「僕、あの人知ってる」
体を強ばらせる名前の隣でリーマスが囁いた。
「マクゴナガル先生だ。グリフィンドールの寮監なんだよ」
背後で扉がキィと閉まる音がした。一同が揃ったのを見渡して、マクゴナガルが口を開いた。
「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎が間もなく始まりますが、皆さんは大広間の席に着く前に、入る寮を決めなければなりません」
マクゴナガルは簡単に各寮の説明をし、生徒達にしばし待つように伝え、部屋から出ていった。
部屋には新入生だけになり、皆がざわつき始めた。名前は横にいるリーマスをちらっと見た。彼も緊張しているようで、唇の下を噛みながらソワソワと落ち着かない様子だ。
ふと目線を斜め前にやると、見覚えのある姿が視界に飛び込んできた。汽車に乗る前に見かけた、黒髪の男の子と赤毛の女の子だ。
「…君も僕も、スリザリンになるといいな」
男の子が小さく呟くのが聞こえた。隣の女の子は微笑みながら、相づちを打っている。
「リーマス、私たち、別の寮になってもまた会えるかな」
名前はこの場の緊張を紛らわそうと、リーマスに話しかけた。
「当たり前さ!」
リーマスは明るく微笑んで言った。
「好きな時にいつでも会おう。もう僕たちは友達なんだから」
リーマスのその言葉に、名前は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。せっかく仲良くなれたのだから、同じ寮になれたらいいのに。そもそも寮に分ける必要性はあるのだろうか。皆等しく仲良く学べれば、それでいいのに…。
再び扉が閉まる音がし、マクゴナガルが部屋の中央に戻ってきた。ざわめきだっていた新入生たちは一斉に口を閉じ、部屋は再び静寂につつまれた。
「組み分けの準備が出来ました。皆、遅れないで私についてくるように」
ついにこの時がやってきた。大広間へ続く重厚な扉がゆっくりと開き、生徒たちは全身を緊張に支配されながら一歩ずつ前へと進み始めた。
名前・苗字はホームで家族と別れ、重たい荷物がいっぱいに積まれたカートを押しながら、乗るべき車両を探していた。ガヤガヤとした喧騒のなかに、たくさんのフクロウの鳴き声がこだましている。ホームの上はまるでお祭り騒ぎだった。
出発まであと10分。汽車にはすでに大勢の生徒が乗り込んでいて、車窓を見る限りどこも満席だった。
上級生の多い車両には出来れば乗りたくない。新入生の名前は、なるべく自分と同い年がいる車両を探していた。
「リリー、こっちだ。」
汽車を見上げながら歩く名前を、黒髪の男の子と、赤毛の女の子が小走りで追い越して行った。
小柄な背丈の2人はきょろきょろしながら汽車へと乗り込んだ。その様子から察するに、自分と同じ新入生らしい。入学前から友達がいるなんて。名前は羨ましさから軽くため息をついた。
さっきの2人に続いて自分も乗り込もうかと考えたが、車窓を覗く限りではもう空席はないようだった。
メガネをかけたボサボサ頭の男の子と、整った顔の男の子が、窓にはりついた蛙チョコレートを捕まえようとしている。この車両はなんだか騒がしそうだ。
名前は仕方なく、もう少し歩き、最後尾から一つ前の車両に席を見つけた。
名前が席について間もなく、ホグワーツ行きの汽車は動き出した。
いよいよ出発だ。体がソワソワして、足がふわっと宙に浮くような感覚になった。汽車の車輪がきしむ音と、自分の心臓の鼓動が同じボリュームに聞こえるほど、名前の心は不安と期待でいっぱいだった。
ホームの端にいた家族が手を振ってくれている。次に会えるのはクリスマスの時だ。何だかずっと先のような気がして、名前は胸の奥がきゅっと痛むのを感じた。汽車のスピードは次第に速くなり、家族の姿もキングス・クロスのホームも、あっという間に見えなくなった。
汽車が発車して5分くらいが経った頃、車両のドアがあいて、栗色の髪の男の子が息を切らしながら入ってきた。顔を上げたローズと彼の目がばっちりと合った。見たところ、同じ新入生のようだ。
「あー…そこ、空いてるかな?」
男の子は名前の向かいの席を指さして尋ねた。
「空いてるよ、どうぞ」
名前は自分の荷物をわきにどけて、彼が通りやすいようにスペースを作ってあげた。
「ありがとう」
そう言いながら、男の子はまだ息を切らしていた。
「乗り遅れるかと…走って、一番前の車両にとりあえず乗って、ここまで歩いてきたんだ」
慌てて乗り込むのに必死で、荷物を預け忘れたのだろう。彼は大きなトランクを両手で抱えたまま、長い紐のついたポシェットを首にかけている。ジャケットのポケットからは、食べかけのチョコレートがはみ出ていた。
「あなたも一年生?」
「そうだよ」
名前の問いかけに、男の子は汗をハンカチで拭いながら答えた。
「リーマス・ルーピンだ。よろしくね」
「名前・苗字よ」
リーマスが手を差し伸べ、2人は握手をした。
名前はリーマスの顔を改めて見た。あちこちに引っかき傷のようなものがある。大小様々だが、近くで見るとかなり目立つようだった。
「顔の傷…ケガでもしたの?」
「えっ、ああ、これ?」
リーマスはハッとしたように顔に手を当てた。
「何でもないよ…よくあることなんだ。気にしないで。あ、これ食べる?」
リーマスは話題を逸らすかのようにポケットからチョコを取り出した。触れてはいけない事だったかもしれない。2人の間に一瞬だけ気まずさが流れた。
「ありがとう」
名前は自然な笑顔を取り繕って、リーマスが差し出してきたチョコを受け取った。夏の暑さで少し溶けかかっていたが、とても甘くて美味しい。全身の疲れが抜けていくようだ。
リーマスの後、最後尾に近い車両に乗ってくる生徒はいなかった。
名前はリーマスと新入生ならではの話をして盛り上がった。お互いの出身や両親のこと、ホグワーツからの手紙が来た時のこと、ダイアゴン横丁での買い物のこと、そしてホグワーツの寮について…。
「私の家族はみんなハッフルパフなんだ」
組分け儀式の話になり、名前はリーマスに自分の不安を吐露した。
「家族と同じ組になる子が多いって聞くけど…どうなんだろう。実際のところ今からすごく緊張してるの」
「なかには違う人もいるみたいだね」
リーマスは2枚目のチョコレートの包みを剥がしながら言った。
「でも…この数時間話しただけで、君がとても優しい子だっていうのは伝わってきたから、きっと家族と同じハッフルパフになるんじゃないかな」
共感性が強く、心優しい生徒がハッフルパフに組分けされる。リーマスの言葉を聞いて、名前は最初に出会った同級生が彼で良かったと思った。
「リーマスはどの寮がいいの?」
名前は彼から板チョコの半分を受け取りながら訊ねた。
「僕は、出来ればグリフィンドールがいいかなあ」
リーマスは期待と不安が入り混ざった声色で答えた。
「まあ、でもスリザリンでなければいいよ。あそこは闇の魔法使いの出身寮だから…」
名前はハッフルパフ以外の寮についてはあまり知らなかった。寮によってどれだけの違いがあるのだろう。それを話すと、リーマスはグリフィンドールの素晴らしさについて熱っぽく語ってくれた。少年の瞳には、勇気と騎士道を重んじる紅の寮への憧れが強く宿っていた。
時間とともに、車窓の景色が様変わりしていく。それでも名前とリーマスの会話は途切れることがなかった。11歳の二人にとって、汽車での数時間は友達になるには十分な時間だった。
車窓から眺める景色もだんだんと暗くなり、大半の生徒がウトウトし始めた頃、間もなく学校に到着するので準備をするようにとのアナウンスが入った。名前とリーマスは慌てて学校指定のローブを羽織り、お互いにおかしな所はないかチェックし合った。
汽車を降りると、そこは一見して森の中のようだった。あたりは既に真っ暗で、浮かび上がるランタンが生徒たちの足元を照らしている。
背後から「イッチ年生!イッチ年生はこっちにこい!」という大きな声がした。声がする方に早足で向かうと、なるほどこれ程の大声なわけだ。見たこともないような大男がランタンを持って立っている。その大きさに圧倒され、名前は思わずたじろいだ。この人は先生なのだろうか。隣のリーマスも目を丸くしている。
「よし、全員揃ったみたいだな。イッチ年生、俺についてこい!はぐれずにな」
大男の掛け声と共に、集まっていた一年生たちはゾロゾロと歩き出した。夜の道は暗かったが、どんなに距離が離れても見失うはずはないくらい巨大な案内人だったので、最後尾を歩く名前とリーマスはホッと胸を撫で下ろした。
プラットホームから小道に入り、しばらく歩くと、目の前に大きな黒い湖が現れた。
そこからの移動はボートだった。名前はリーマスと、もう2人の女の子と一緒にボートに乗り込んだ。誰が漕ぐわけでもなく、ボートはひとりでに湖を進んでいく。しばらくして、暗闇のなかにボワっと光が差し込んだかと思うと、いつの間にか目の前に荘厳な城が現れていた。想像していたよりも遥かに立派な城だ。塔がいくつあるのか数え切れない。新入生たちは皆、その光景に息を飲んだ。
ボートから降りた後、新入生たちは城に足を踏み入れ、大理石の階段を上がって、ひとつの部屋に集められた。部屋の奥には厳格そうな魔女が立っており、何かをチェックするかのように、新入生一人一人に目を注いでいる。
「僕、あの人知ってる」
体を強ばらせる名前の隣でリーマスが囁いた。
「マクゴナガル先生だ。グリフィンドールの寮監なんだよ」
背後で扉がキィと閉まる音がした。一同が揃ったのを見渡して、マクゴナガルが口を開いた。
「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎が間もなく始まりますが、皆さんは大広間の席に着く前に、入る寮を決めなければなりません」
マクゴナガルは簡単に各寮の説明をし、生徒達にしばし待つように伝え、部屋から出ていった。
部屋には新入生だけになり、皆がざわつき始めた。名前は横にいるリーマスをちらっと見た。彼も緊張しているようで、唇の下を噛みながらソワソワと落ち着かない様子だ。
ふと目線を斜め前にやると、見覚えのある姿が視界に飛び込んできた。汽車に乗る前に見かけた、黒髪の男の子と赤毛の女の子だ。
「…君も僕も、スリザリンになるといいな」
男の子が小さく呟くのが聞こえた。隣の女の子は微笑みながら、相づちを打っている。
「リーマス、私たち、別の寮になってもまた会えるかな」
名前はこの場の緊張を紛らわそうと、リーマスに話しかけた。
「当たり前さ!」
リーマスは明るく微笑んで言った。
「好きな時にいつでも会おう。もう僕たちは友達なんだから」
リーマスのその言葉に、名前は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。せっかく仲良くなれたのだから、同じ寮になれたらいいのに。そもそも寮に分ける必要性はあるのだろうか。皆等しく仲良く学べれば、それでいいのに…。
再び扉が閉まる音がし、マクゴナガルが部屋の中央に戻ってきた。ざわめきだっていた新入生たちは一斉に口を閉じ、部屋は再び静寂につつまれた。
「組み分けの準備が出来ました。皆、遅れないで私についてくるように」
ついにこの時がやってきた。大広間へ続く重厚な扉がゆっくりと開き、生徒たちは全身を緊張に支配されながら一歩ずつ前へと進み始めた。
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