君がため
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カカシの話をきいて、泣いてしまった千歌を抱きしめながら宥めた。
ひとしきり泣いて落ち着いたのか、化粧が落ちたのに、お化粧品がないと困った顔の千歌に、笹沖に渡されたポーチを手渡す。中には最低限の化粧水や化粧品、下着が入ってあったとのことで、さすが女中頭は準備も完璧だ。
カゴの持ち手達は忍ではあったが、千歌に無理をさせないためにも途中で事前に予約していた宿による。千歌の父親が手配したためか、残念ながら部屋には立派なついたてがあった。さすがに入籍もしていない中で、カカシも手を出す気は無かったが。
「そういえば、この髪飾りや衣装もかえたいなぁ。どこかで売れるかな?」
「んー…この辺は観光地でもあるし、ちょっと一緒に巡ってみますか」
「ホント?!嬉しい!」
花のようにほころぶ笑顔とはこの笑顔を言うのではないかと思いながら、カカシは荷物を置いて立ち上がった。
*
古着屋で櫛や着物を売り、深緑色の着物に袖を通す。髪もそのままだと邪魔になるため、簪でひとまとめにした。
「それじゃあ、あとその紺色と白色の着物を包んで」
「かしこまりました!」
着替え用に追加で購入した着物の包みを持ち、入り口付近で待っていたカカシのもとへかけよる。カカシは本を読んでおり、パタンと閉じると「あ、終わった?」と本をポーチの中に入れた。
「今の本、何て題名?」
「なーいしょ」
護衛任務中は見られなかった姿に嬉しさを感じつつ、どんな本か気になって聞くが教えてもらえなかった。
今度こっそり調べてみよう。
それから、食べ物屋やアクセサリーショップ、お土産屋などによって観光を楽しんだ。
宿に帰ると夕食には少し早かったため、それぞれ風呂に入ることにする。千歌は初めての大浴場に期待していたが、人が多いというので背中の傷のこともあるため、部屋備え付きの風呂で我慢した。
部屋に戻ると、先に風呂へ出ていたカカシがもう戻って窓の外を眺めていた。
「かっ!」
顔がイイ!
「カ、カカシっ!ま、ますく…マスクは!?」
「ん?いや、温泉で出てすぐつけるのもちょっとね。…もしかして見惚れた?」
ニヤリと余裕な笑み。久しぶりにカカシのノーマスクの姿を見て、恥ずかしくなって背中を向ける。
これは、絶対今顔が赤い。だってこんなにもあついのだから。
「み、見惚れちゃダメ、なの?」
悔しくなったが、嘘をつくのも嫌だったので、チラリとカカシを覗き見る。
カカシは目を見開き、口を押さえて視線を逸らした。
「そーゆーのは反則デショ…」
「?」
「…そーだ。これ」
カカシは小さくため息をついたあと、近くまでやってきて右手を差し出してきた。
中には丸い小さめのダイヤがついた、可愛らしいネックレスがあった。
疑問に思って顔を上げると、「つけていい?」と確認される。千歌は返事もできず、コクコクと頷いた。
「今日よったお店で買ったんだ…指輪は間に合いそうにないから、何か送りたくて」
カカシの声が近くで聞こえる。いつものマスク越しではない声。首筋に触れるカカシの指が少しこそばゆい。
「ん!できた」
「あ、ありがと」
スッと手鏡を手渡される。これで着け心地を見ろと言うことだろう。と、受け取ると
「あれ?これ…」
「あ、わかっちゃった?その手鏡、自分用に買っちゃった」
店員さんの勧め方が上手だったとにこやかに話すカカシに向き直る。千歌が押し売りのようにわざと大袈裟にした説明だったが、あの後買ってくれていたのかと購入する姿を想像してつい笑ってしまった。
「本当にありがとう。すっごく嬉しい」
「若葉マートで選んでも良かったけど、最初の贈り物くらい自分で考えて選びたかったからね」
千歌の宝物を扱っているという話を覚えていたのだろう。確かに好みの物の中から選ぶとなれば、間違いはない。
間違いはないが、「それ、私が選んでたやつの一つじゃん」と気付いてしまったら純粋な気持ちでつけれなかったかもしれない。
色々考えてくれたことがわかってより嬉しさが増す。
「婚約指輪ならぬ、婚約ネックレスね」
「千歌、改めてになるけど…」
そっとほおに添えられた手につられて、カカシの目を覗き込む。黒と赤の目が、揺らめいて見えて、まるで夜空を見上げた時みたいに吸い込まれそうだと思った。
「俺のこと、選んでくれてありがと。絶対大事にする…。忍ってことで、もしかしたらずっとそばにいられないかもしれないけど、寂しい時は言って欲しい」
「うん…カカシ、好きよ」
「フッ…それ俺のセリフ」
スッとかがんだカカシを包み込むように腕を伸ばした。
きっと、今日という1日を忘れることはない。
*
秋晴れが美しい昼下がり。
木の葉の里のあ・うんの門の前に、カゴが一台とまった。4人のカゴの持ち手は忍らしく、音もなくその場にかがむ。
その様子を見ていた門番二人は、互いの顔を見合わせた。
誰かVIPの訪問でも予定されていただろうか。
門番が続いて驚いたのは、立派なカゴからはたけカカシが降りてきたこと。
さらにエスコートするように一人の女性が降りてきて、美しく凛としたお姫様のようなその女性にカカシが始終嬉しそうに微笑みかけているではないか。
今まで浮いた話の一つもなかったコピー忍者カカシが、あんなに幸せオーラ全開に女性の手を握って歩き始める。
これはカカシを狙っていたくのいち達にあっという間に話が広まるに違いない。
門番二人は女性からの「ご苦労様」という言葉に鼻の下を伸ばし、カカシに思い切り睨まれて顔を青くした。
*
「あら、カカシじゃない?」
「ん?おぉ、何か忙しそうにしてたみてぇだが、もう良いのか?」
「紅、アスマ…」
まさかこんなにも早く会うとは思っていなかった顔ぶれに、カカシは少しゲンナリする。絶対に色々突っ込まれるのは目に見えている。
わかりやすくゲンナリしているカカシの袖をくいっと千歌が引っ張る。恐らく紹介しろと言うことだろうと諦めて「同期の夕日紅と猿飛アスマ」とだけ伝える。
千歌はカカシの横から一歩前に出た。
「千歌よ。よろしくね」
「はっ」
紅もアスマも二人して千歌の前に跪く。千歌は一瞬ポカンとして「ね、今そんなに前の口調にはなってなかったよね?」とカカシに尋ねた。
「んー…ま、完全には習慣って抜けないからね。どちらにしても社長さんだったから違和感無かっただけで、一般人のフリしてても雰囲気はまだお姫様って感じだったよ」
あまり大っぴらに言わなくてもいいかと千歌にコソコソ伝える。
千歌は軽くショックを受けたようで、カカシはまぁまぁとなだめるしかない。
「ごめんなさい。なぜか跪いちゃったわ」
「いやー、身体に染みついた習性ってのはすげーもんだな。あんた、良いとこのお嬢様か何かか?」
「あ、ううん…平気…」
ちょっとしょんぼりしている千歌も可愛いなぁとカカシは千歌だけを視界に入れていた。アスマが話しかけていることに気付かずに。
「…い!…おい!カカシ!聞いてんのか?」
「ん?あぁごめん。なんて?」
「良かったらこれから一緒に飯でも食べねーか?お前らの話も気になるしな」
「あー、悪い。これから火影様の所に行って戸籍登録して、そのまま俺と千歌の入籍手続きする予定なのよ」
ホント悪いねと声をかけると、紅もアスマも「は?」と小首をかしげた。理解できなかったかともう一度伝えようとすると
「はぁああ!!?」
というアスマの大声が里中に響いた。
*
あとで絶対に詳しく説明しろよと強く強く強調するアスマ達をその場に残して、火影邸に向かった。
火影邸では相変わらず商魂たくましい千歌に若干押され気味な火影様を見れて、うちの奥さん最強説を察したカカシであった。
「火影様、早速ですけど若葉マートの木の葉の里支店拡張についてなんですが、ひとまず周囲の土地を拡大したく、交渉の場を後日設定するつもりです。それに伴って店舗の改装及び店員の補充も必要で…」
一通り千歌の好きに喋らせたあと、カカシが改めて今回の出来事について説明した。
「…と、いう訳でして…。先日も手続きの関係でご迷惑をおかけしたのですが、今後ともどうかよろしくお願いいたします」
「うむ。わかっておるわ…」
三代目はカカシと千歌を交互に見ながら、ニコリと微笑んだ。
「しかし、カカシよ。そなたに素敵な出会いがあったこと、嬉しく思う。友や師匠の死を受け、投げやりな人生を送ってしまうのではないかと心配しておったのだが…もうその心配は無用じゃのぉ」
「ふふっ…カカシってば、私のこと生涯守ってくれるそうなので!」
私は100まで生きますよ!とあまり筋肉がないので目立たない力こぶを作る千歌。
プロポーズをバラされるのは気恥ずかしく、カカシは頭をかいた。
それから書類を提出し、晴れてはたけ千歌になった千歌は、早速墓参りに行こう!と鼻息荒くカカシを引っ張る。
そんな野生動物と化したかのような千歌をなだめ、お墓は逃げないし長旅で疲れているだろうから一旦家に帰るよう説得した。
「ここがカカシのお家…」
「散らかっててごめーんね」
「ううん!そんなことない!」
お邪魔しますと少し他人行儀な千歌を見て、緊張してる?と笑ってしまった。
そんなことないのにと拗ねたような千歌を後ろから抱きしめる。
「これからよろしくね、千歌」
「うん」
「さてと、それじゃあ先に部屋の中案内して、片付けとご飯食べちゃおっか」
千歌の屋敷に比べたら小さい家だが、千歌は興味深そうについてきてくれた。
ご飯を作るにあたっては、数日前に食料を買い込んでいたので、二人で台所に立った。父と住んでいた時以来のことで、少し浮き足立つ。
「わ、カカシってお料理上手!もしかして料理人を夢見てたとか?」
「ないよ」
「えー?なれそうだけど」
ふふっと嬉しそうに千歌は、また魅惑的な香りでカカシを惑わす。
ずっと抱きしめていたい。
*
「千歌様!すみません!」
食事が終わり、お茶で一服しているとドアを叩く音がしたため開ける。そこには、キリッとした印象のスーツを着た女性が立っていた。
「あの、木の葉支店の支店長をしておりますメノウと申します!お父上から大量の結納品もどきがうちに届きまして、中にはナマモノもあり…」
「カカシ、ちょっと行ってくる!先に寝てて!」
「え?ちょっ!」
慌てて走り出す千歌を追う右手は虚しく空に浮いたまま。
君がため惜しからざりし命さへ ながくもがなと思ひけるかな
(えぇ〜…今日って、初夜…。親父さん絶対確信犯デショ…)
(もー!)
