瀬をはやみ
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「あの、お風呂、お先に頂きました」
どうも緊張してしまって、つい敬語になる。買い物を終えて帰り、晩御飯を賑やかな中食べて、皆が帰ったらその静寂が際立ってしまう。
まだ自分の中で完全に7歳の頃のカカシくんが、あっという間に27歳になっていることのギャップが埋まらない。
コソッとリビングを覗くと、ソファであぐらをかいて巻物を読んでいたカカシくんが顔を上げた。千歌の姿を見て、フッと笑う。
左目の傷が痛々しいが、もう何ともないとさっき額当てを外した時にきいた。普段は目に負担をかけないように閉じているとも。
「昔と逆だね。…髪、乾かすよ」
ちょいちょいと手招きをされ、慌ててソファの隣に座る。髪をあまり乾かさずに出てしまった。まだ湿気っている髪を肩に広げたタオルで自然乾燥させようとしていたところだったが、カカシくんがドライヤーを取って来てくれた。
「家主より先にお風呂に入ると思うと、急いじゃった」
「だと思った。シャツ、やっぱ大きかったね」
「ううん!これはこれでワンピースみたいに着れて楽だよ!」
実はパジャマを買い忘れて、普段着は買ったばかりだったので洗濯してしまっていた。そこでカカシくんのシャツを借りたのだが、いかんせん体格差があり、シャツというよりシャツワンピである。
ボォーとドライヤーがつき、タオルも使いながら乾かしてくれる。
あ、寝そう。気持ちい…。カカシくん、手が大きくなったんだなぁ…男の人って感じ…。
カチッと、ドライヤーが止まる音でハッと目が覚めた。一瞬うたた寝してしまったらしい。
「おしまい。じゃあオレも、お風呂行ってくる」
「あ、ありがと!」
慌てて振り返ってお礼を言う。カカシくんは「どーいたしまして。くつろいでね」と余裕の笑みを残して行ってしまった。
くつろぐ、って良いのかなぁ。
部屋を少しウロウロして、懐かしいイルカを見つけたり、写真立ての写真が可愛くて悶えたり、千歌はわりと充実した時間を過ごした。
「千歌さん、アイスいる?あいつらには内緒ね。数少なかったから」
お風呂から出て来たカカシくんが、よりラフな格好になって聞いてくれた。千歌はコクコク頷いて冷蔵庫に近づく。
「はい、どーぞ」
「ありがとー!…あの、今更だけど彼女というか、恋人はいなか、った?」
念のため、念のためにも聞いておかねば。20年の月日は、千歌が想像しているより長い気がする。特に思春期を含める20年は。
ソファに一緒に座り、アイスをかじりながら、カカシを盗み見る。
「千歌さんは?今そーゆー人いる?」
「まさかっ!いないよ!」
「そう…。んー、オレは、初恋こじらせてるからなぁ」
「?」
「7つの時だったから。初恋」
ーーーゴクンッ
驚きすぎてアイスを半分くらい噛まずに飲み込んでしまった。それって、7歳ってつまり…
「多分このまま誰とも恋愛とかせずに生涯終えると思ってた。…ごめんね。気持ち悪いでしょ?会えないのに20年も好きなんて」
「なん!なんで気持ち悪いなんて言うの!?好きって気持ちは、あったかくて、大事で、尊くてっ!」
…あれ?待って。彼は今27で、私より一つ年上で、20年間ずっとてことは…
「あの、今も、好き?」
「!…」
カカシくんは驚いた顔をした後、へにゃっと笑う。
「ずっと好き…」
「!!!」
突然体温が急上昇したのを感じた。今私は、告白をされた?
ぱたっと残りのアイスが指から手首へ流れていった。冷たさにはっとなり、慌てて残りが下に落ちるのを食い止めようと少し上に持ち上げる。すると、カカシくんがパクっと残っていたアイスを食べてしまった。
「(ゆ、指っ!指にくちびるが当たっ)」
顔から湯気が出ていないだろうか。ペロリと舐める舌がめちゃくちゃ艶かしい。
「ごめん、食べちゃった。オレのアイス…を…」
慌てて手をはなされるが、千歌は固まったまま動けない。何か言いかけたカカシくんがカチカチな千歌を見て頬を染めた。
「あの、そんな反応されると、さすがのオレも照れるんだけど」
「え!ご、ごめんね!」
パタパタと熱を冷まそうと顔を両手で仰ぐ。どうしよう、ドキドキしてしまう。
うーんと悩むカカシくんは、アイスを食べ切ったあと、突然横でパッパッと印?を組んだ。
「変化っ!」
7歳のカカシくんだ!か、可愛い!!
千歌にとっては5年ぶりの姿だ。まさか、また会えるとは…。抱きしめたいけど、中身は年上だから、ダメ!と頭をふった。
「この姿のが落ち着くでしょ。千歌さん、一緒に寝よ?色々あったし疲れたデショ?」
「う、はい」
スッと差し出される手に、流れるように手を乗せる。少し大きめのベッドに、二人で横になった。
「(あれ、いいのか?)」
「おやすみ、千歌さん」
「…おやすみなさい」
嬉しそうに挨拶してくれるカカシくんを見て、さっきまでのドキドキも少し落ち着いてきた。横になると、だんだん身体の力が抜けてきて、千歌はすぐに眠りの世界に旅立った。
*
「…」
横から規則的な寝息が聞こえてきて、姿を変えただけでここまで警戒されないのもどうなのかと一瞬悩む。
いや、この信頼は今までに積み上げてきたものだから、深く考えないことにしよう。
変化を解き、改めて千歌の寝顔を見つめる。
さっきドライヤーをかけた時、心地良さそうに身を委ねられて理性が飛ぶかと思った。
自分の想いを伝えるつもりは、最初なかった。彼女も元の世界に帰らないといけないから。
それなのに、彼女の口から他に女性がいるのかと聞かれた瞬間、千歌には知っていて欲しいと思ってしまった。
ただの自己満足だ。
それでも、ほんのちょっとだけでも、千歌がカカシのことを考えてくれるなら何でもいい。
「(絶対、もう後悔したくない)」
*
朝起きると、大人のカカシくんが目の前で寝ていた。
「(キレイ…彫刻?)」
眠気が覚めず、そんなことを考えていた。
「…はよ…」
眠たげに目をあけるカカシくんの片目と目が合って、一気に目が覚めた。
「あれ!?小ちゃいカカシくんは!?」
「ごーめんね。寝ちゃうと解けちゃうんだよね」
はははと笑いながら身体を伸ばすカカシくんを見て、千歌は「そ、そっか」と髪を手櫛で整える。あまり意識しすぎても失礼な気がする。
「今日、良かったらお昼外食しない?」
「!うん!」
*
「ちょっと歩くけど、オススメの店があるんだ」
そう言って手を差し出す。最初からこうしていたおかげか、千歌は疑問を持たずに手を握ってくれる。
「楽しみっ!せっかくだし遠回りしてみて!木の葉の里ゆっくりみたい!」
「りょーかい」
千歌のペースで歩いていると、遠くから「おーーい」と微かに聞こえた。まずいと思う暇もなく、目の前にドロンとガイが現れた。
「よーう!カカシ!何やら昨日美女とデートしていたそうじゃないか!まさかこの人がそうなのか!?」
「あ、千歌さん驚かせてごめんね。こいつはマイト・ガイって言って、オレとは腐れ縁というか」
「初めまして!千歌さんと言うのか!よろしくな!ちなみにオレはカカシより強いよ」
キラリと歯を輝かすガイ。千歌さんは突然すぎてポカンと口を開けている。
その顔可愛い。
「えっと、昔馴染みってこと?ですか?」
「そうだ!つまり永遠のラ」
「もしかしてカカシくんの親友!?」
「うむ!そうだ!」
ちょっと、ライバルって言おうとして何言い変えてんの。
そう思いながら、「ちょっとガイ」と肩を組んで千歌と背を向ける。出来るだけ小声で話しかけた。
「あんま余計なこと喋んないでちょーだいよ」
「当然だ。安心しろカカシ。過去の事をそう簡単にバラしたりしない」
そんなコソコソ話をしていると、興味から遠慮なく話しかけてくる千歌。
「あの、良かったら今度カカシくんや、ガイさんの武勇伝聞かせてください」
「いいぞ!」
「ガイ?」
「すまん!太陽のような眩しいオーラに当てられた!」
ワクワクしている千歌とは打って変わって、非常にゲンナリしてしまったカカシであった。
ようやく目的の定食屋に着く。
ーーー定食屋“またたび”
「わぁ、知る人ぞ知るって雰囲気!」
「美味しいとこ、探すの好きだったデショ?」
暖簾をくぐると、数人の客が座っていた。顔見知りもおり、相手もこちらに気付いたようで、片手をあげて挨拶してきた。
「あ、その人が噂の人すか?」
「ゲンマ。噂って何よ、噂って」
千歌はぺこりとお辞儀していた。
「噂は噂っす。てゆうかオレ、三代目に壺の調査を依頼されたんすよ。昔4代目んとこで時空間忍術かじってましたんで」
あぁそうかと適当に相槌をうち、千歌を椅子に腰掛けるよう促した。それを見ながらにやっと笑い、しかし何も言わずにゲンマは続ける。
「ここのばーちゃん、めちゃ飯美味いんですよ。でも最近身体悪くして、ちょっと大変みたいです」
「そーなの?最近来てなかったから知らなかったな」
ちょうど食べ終えていたらしいゲンマは「それじゃ、また色々話聞かせてくださいね」と勘定をして出て行った。
千歌は少しの間背中を追っていたが、すぐに手元のメニュー表に視線を戻した。
「(なーんか会う男会う男ぜーんぶ千歌さんのタイプだったらどーしよーとか考えちゃうな…。まぁガイは、うん。…この様子ならゲンマは違うか?そういえば以前もそんな話したことないし)」
「私、チキン南蛮にしよー!カカシくん決まった?」
「オレもそれにする」
