瀬をはやみ
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カカシくんと過ごしてから、早いもので5年が経過していた。
あれから、無事調理師免許を取得し、追加で管理栄養士になるため大学に入学した。
「(かんりえーよーしって何?)」
「(んー、栄養バランスを考えて、献立を作ったりする人だよ)」
「(へー)」
もっと自分に知識があれば、役に立てることが増えるのではと考えてのことだった。実際料理に携わる資格でも、新たに学べたことがたくさんあったので、とても有意義な時間になった。
大学を卒業後はいったん母の実家へ戻った。
というのも、祖母が認知症になり、施設に入ったのだが、大学卒業前に亡くなったのだ。それを聞いて闘病中であった祖父が、次の日後を追うように亡くなった。
母は、一気に両親を亡くし、祖父母の大きな家が残されたのを見て、自分が管理すると言い出したのだ。
「(えぇ!ばーちゃんとじーちゃんがほぼ同時に!?)」
「(ちょっと!ナルト黙んなさい!)」
それを手伝うために、大学卒業後はいったん実家に戻り、片付けを手伝いながらバイトを続けていた。
「ただいまー…って、あれ?」
今日、バイトを終えて家に帰ると、自室においてある壺が金色に光って見えた。
「(壺?さっき壊れたやつか?)」
「(そうそう。オレが千歌さんと会う時にも、その壺がキーアイテムだったんだよ)」
その時、これに触れればカカシくんに会えると咄嗟に思った。何も言わずに帰られてから、ずっと言いたかったことが脳裏によぎる。
千歌はリュックを背負ったまま、壺に抱きついた。
すると、ボブッと目の前が真っ白になり、気付くと空を落ちていた。
*
「と、こんな感じ…です」
千歌は、三代目火影のもとで、今までの事を緊張しながら伝えた。とても優しそうなおじいさんで、ようやく落ち着いてきた。
しかし、伝えて思ったけど、あまりに衝動的な行動だ。
「ふむ。以前カカシが行方不明になった時を覚えたおるが、向こうの世界からもこちらにこれるとはのぅ。しかし、そうなればしばらく壺について調べさせてもらうしかない。時空間忍術を得意な者に依頼しよう」
「ありがとうございます!」
「それでは、居住地じゃが…」
「昔はオレがお世話になったわけだし。そこは恩返しさせてください」
カカシがサッと前に踏み出した。三代目は机に着いたまま、千歌とカカシを交互に見た。
「カカシ、お主はもう7つの子供ではないのじゃぞ」
「わかってます。三代目は、オレが千歌さんが悲しむようなことをするとでも?」
「…あの、でも…」
「千歌さんは、オレといるのはイヤ?」
お世話になるのは申し訳ないと断ろうとしたが、カカシくんがじっとこちらを見てきた。う、子犬のような目で見られている。この目に弱いのは変わらないようだ。
「イヤじゃ、ないよ」
「じゃあ決まり。三代目、そういうことで上にも伝えてください」
「はぁ、まぁお主達が良いというならソレで良かろう。カカシが居れば、護衛も不要じゃしな」
*
話がひと段落して、落ち着いてきたら千歌がもじもじとサクラに近づいてきた。「あの、サクラちゃん…」とこちらにかがんでくるので、少し首を傾けて千歌が話しやすいようにする。
「お手洗いってどこかな?」
この声は、忍達にはもちろんバッチリ聞こえているのだが、そこら辺は気遣いができる男達だったので皆知らない顔をしていた。
サクラはにっこりと「こっちです」と案内した。
「あの、言っては何ですけど大丈夫ですか?カカシ先生も忍とはいえ男ですけど」
それも18禁小説を読み歩いてる、見た目怪し過ぎる男、である。千歌は手を洗おうと水を出し、鏡越しにサクラをチラリとみた。
「ん、私はカカシくんのこと信じてるし、カカシくんを信じる自分も信じてる、ので大丈夫だよ!…ところで、さっきネックレスのこと何か言いかけた?」
「あ、カカシ先生のお部屋にあったのと同じ、イルカだなって。最近見たばかりだったから、こんなに短期間に見るとは思わなくて」
千歌はピタリと洗う手を止め、蛇口を捻って水を止めた。ハンカチで手を拭きながらサクラに向き直る。
「ね、それって金色のイルカ?」
「はい」
「ふふっ。真面目で優しいとこは、20年経っても変わってなさそう」
どういうことだろう。
サクラの疑問を感じ取ったのだろう。千歌は「あのね」とまた耳打ちしてきた。
「そのイルカ、私があげたものだと思う」
「……えぇ!?」
それって、カカシ先生、20年越しの片想い…。いや、それはどうだ?7歳の時だし。でもでも、憧れが恋になんてことになってたりして!
もう2度と会えない相手のものを後生大事にするって相当ではないか。
じっと千歌を見上げる。
「(めっちゃ綺麗な人だし、気さくで話やすいし、ひょっとするのかも?)」
これはこの先楽しみになってきた、とサクラはニヤニヤと笑うのを止められなかった。
執務室に戻ると、ナルトが嬉しそうに話しかけてきた。
「千歌ねーちゃん!今日はオレ達も晩御飯一緒に食べていい?」
「え!うん、もちろん!」
千歌はとても嬉しそうに微笑んだ。サクラがチラリとカカシを見ると、逆にため息をついていた。そこまで残念がることはないのでは。
「じゃあ、必要物品買い足してから帰ろっか」
「うん!」
「あ、私今日は…」
母親に早めに帰ってこいと言われていたのを思い出し、言い出しかけたところでカカシに呼び止められる。今日は内緒話ばかりさせられる。
「千歌さん、多分女の子いてくれた方が安心だと思うから、買い物とかね。良かったら付き合ってくれない?」
まじまじとカカシを見てしまう。
これって本当にカカシ先生なの?もしかして違う人が変化しているのでは?
*
服や雑貨等、とりあえず数日問題ないように買い揃え、食材を買いにスーパーへ向かった。
勿論だが、荷物は全て下忍持ち。カカシは千歌の手を引いてエスコートである。サスケ達は不服な顔をしつつ、周囲の視線を受け止めていた。
普段から一人飄々と歩くカカシが、一人の女性の歩幅に合わせてにこやかに談笑しながら歩いているのだ。カカシを知っている者からしたら違和感でいっぱいに違いない。
「サクラちゃんいてくれて良かったぁ。お店とかわからないことも多いし…。お礼に何か作ろっか?」
「え!?良いんですか?」
「うん!何が良いかなぁ?あ、カカシくんは何か食べたいものある?」
「んー。おにぎりかな」
サクラは比較的少なめの荷物なので、まだ良い方だ。大きめな荷物を持たされているサスケとナルトは、バランスを崩さないよう注意しつつ、距離を離されないよう気をつけねばならなかった。
時折心配そうに、「大丈夫?」と千歌が声をかけてくることが救いだった。
「なー、サスケェ。オレらさぁ、これ…カカシせんせーのデートについて来てるみてぇじゃね?」
「黙ってろ、ウスラトンカチ…」
「二人とも、大丈夫?やっぱり私も持つよ!」
コソコソと悪態をついていたら距離があいていた。どうやら疲れたと勘違いした千歌がカカシの手を引いて引き返して来た。
「いやいや、これも修行のうちだから。ネ?二人とも?」
笑っているのに、怖い。この雰囲気はまるで初めての演習で「忍をやめろ」と言った以来ではないだろうか。
「問題ない」「へーきだってばよ!」
*
割り切るしかないと思っていた。
想っても2度と会えない相手だと。
それが目の前に現れるなんて、そんな奇跡が自分に許されるのか。
初恋の相手を忘れられず、アプローチしてくる女性を無意識に比べてしまうのが癖になった。好きになれない相手に手を出す気にもならず、このままでは多分一生独身だなと悟りを開きかけた時だった。
「千歌、さん?」
あまり背格好は変わってない。少し髪が伸びて、雰囲気が大人っぽくなったと感じた。自分の名前が彼女の唇から紡がれるのを聞くと、身体が興奮で粟立つ。
とにかくカカシから触れたい一心で、手を差し出すと躊躇いもなく握り返してくれたのが嬉しかった。
「(オレの女神様…誰にも渡さない…)」
サクラと一緒に食材を選んでいる千歌を少し離れて見ながら、カカシは腕を組んだ。男の店員が案内している。
「カカシ先生、目が座ってるってばよ」
「人でも殺しそうな勢いだな。千歌のそばでやったら嫌われるぞ」
弟子二人に指摘されるとは。相当殺気を放っていたようだ。
