ちはやぶる
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日、今日は千歌とこの世界で過ごす最後の時間だ。恐らく彼女が学校に行って、帰って来た時にはもうカカシはいないだろう。
昨晩こっそり確認した紅葉は一枚になっていた。
「じゃあカカシくん。くれぐれも火の扱いには気を付けて。包丁もね。作り方は覚えてると思うけど、難しかったら私が帰ってから一緒に作ってもいいし、無理しないこと。」
「わかった」
千歌を玄関まで送ろうと着いて行くと、再三注意を繰り返される。
こうやって、心配されるのも新鮮だった。
「それじゃ、行ってくるから。お昼はお弁当食べてね」
晩御飯楽しみにしてるとにっこり笑う彼女の、袖をくいっと引っ張っていた。
「?どしたの?」
「あ、いや。あの」
泣くな、笑顔だ。
「ありがと、千歌さん」
「?うん。私も料理もプレゼントもありがとね!行って来ます!」
*
料理の前に、いつもどおり掃除をした。カチコチっと時計の音がやけに大きく聞こえる。
「よし、終了」
それから服を元の服に着替えて、買ってもらった服を丁寧に畳んで、ベッドの上にまとめて置いた。
そういえば昨日の晩、眠れずゴソゴソと寝返りをうっていると、
「寝れない?」
背後から心配そうな千歌の声。
振り返って見ると、眠そうに目をこする千歌が身体を少し起こした。そのままこちらに来て
ーーーちゅっ
おでこに柔らかい感触。カカシは目をパチクリさせた後、パッと手でおでこを抑える。真っ暗だから相手には見えないが、顔があついので、恐らく真っ赤になっているだろう。
「よく眠れる、おまじない」
へへへと照れ笑いを浮かべながら枕に頭をのっけた千歌。この人はオレのことを弟としか見てないんだと自分に何度も言い聞かせているうちに、自然と寝てしまった。
ーーーあんなの、父さんにもされた記憶ない…
物心つく前はわからないが、ついてからは初めてのはずだ。
多分一生忘れない。
ふぅとため息をつき、台所に戻ってからエプロンをつけて料理をする。
「できた」
自分の呟きが妙に大きく聞こえる。
お昼が近くなったので、お弁当をしっかり噛み締めて食べ、洗ってからクロスの上で乾かす。
冷めた料理はラップをして冷蔵庫に入れた。
最後に、忘れ物をしないよう壺の近くに額当てと金色のイルカを置く。
それから昨日買ったプレゼントも机の上に置いた。
「これで、お別れ…だね。千歌さん」
プレゼントをみた千歌はどんな反応をするだろう。カカシが作った料理を見て喜ぶだろうか。しかし、その姿を見ることは叶わない。
その時がくるまで、カカシは外の景色を見ていた。そろそろ時間だと言う時になって、額当てをつけて金のイルカをポケットに入れた。
フワッと壺が金色に光だし、無意識に手が伸びた。
*
桜の季節になると、彼を思い出す。
あの柔らかな銀髪に、陶器のように白い肌。落ち着いた声音に、ゆったりした雰囲気。
昔の人は言ったそうだ。
この世の中に全く桜というものがなかったら、春における人の心はのどかであるだろうに、と。
桜が咲き誇る中出会った彼は、桜が散る頃にいなくなった。
*
あの日、家に帰るとカカシくんの姿はなかった。机の上には壺とプレゼントが置かれて、冷蔵庫の中には晩御飯が一人分。
ベッドの上に丁寧にたたまれた服。服の上に一枚の紙が置いてあった。
「ありがと。お世話になりました。カカシ」
真面目な彼らしい簡潔な文章でわかった。
彼は元の世界に帰ったのだ。
千歌には告げずに。
朝方、笑顔で別れた彼の顔を思い出す。
プレゼントを開ける時には手が震えていた。
「!…これ…」
中にはネックレスが入っていた。小さな銀色のボディに、丸い桜色のガラスがついている。
千歌があげた入浴剤のイルカと、意図せずお揃いだ。
「…あれ?」
ネックレスの箱を持つ手に、水が一滴落ちた。
涙だとわかったのは、目の前が歪んで見えてから。
カカシくんのことは、家族だと思っていた。そばにいてくれる居心地の良さ。テンポの良いやり取り。時折照れる可愛らしいところも、もっと見たかった。
壺を見ると、絵柄が違っていることがわかって、カカシは恐らくそれに気づいたのだとわかった。紅葉の葉っぱの数だけ、彼がこの世界にいたのだ。
「私、何も気付かなかったね…」
カカシくんが残してくれたイルカのネックレスに話しかける。
きっと元気に過ごしているのだと、彼を信じていよう。
「今度もし会えたら、その時は」
プレゼントと料理が嬉しかったこと、突然いなくなって悲しかったことを伝えよう。
「よし!」
やりたいことを整理したら少し落ち着いてきた。
「覚悟しとけよーカカシくん!」
ちはやぶる神代もきかず龍田川 からくれないに水くくるとは
(は、っくしょん!)
(かぜか?)
(いや、平気…何か悪寒が…)
to be continue.. ..?
