ちはやぶる
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昨晩、寝る直前に「カカシくん、明日水族館行こ!」と千歌が誘ってきたため、今日は朝早くからお出かけの準備をしている。
どうやら明日は祝日というものらしく、バイトも店長が休みをくれたそうだ(随分からかわれたが)。
「よし、お弁当持ったし…お財布持った…水筒に、帽子…」
「千歌さん、スマホ…テーブルの上に忘れてる」
「わ!ありがとー!」
「あと、帰りちゃんとお店寄るの忘れないでね」
「はい!承知しました!」
帰りはスーパーに寄って、食材を買い足すことにしている。実はカカシが料理をしてみたいと申し出たのだ。
色々とお世話になったので、何かお礼をと考えたが、お金はないし、出来ることが限られていることに気付いた。
それならば、教わったことができるようになったのを見せることはどうかと考えたのだ。
案の定、千歌はとても嬉しそうに了承してくれた。今日は出かけるし、明日元の世界に帰る前に作ろうと算段する。
「ではしゅっぱーつ!」
「おー」
そこまで千歌と準備をして、いざ玄関の戸を開き掛けてから気付いた。
「ところで、すいぞくかんって何?」
*
「ほぁー!きれー!」
「…すごい…」
入ってすぐ左手に、イルカプールがあった。下の階が大きな水槽で、上の階がイルカがイベントショーを見れる。
下の階に入ってすぐ、パッと見上げるとイルカがあっという間に通り過ぎた。
「水ってこんなに青いんだね。こんな中泳げたら気持ち良いんだろうな…。イルカって初めて見た」
カカシくんが水槽をじっと見つめていた。
普段から大人びている彼から、なんだか可愛いセリフが聞けて嬉しくなる。
「あ、クラゲだー!フワフワだ!」
「こんなにいたら、刺された時痛そう」
「カニだ!足長い!美味しそう」
「食い気強すぎ」
「もー!カカシくんコメント辛辣ー!」
わざと拗ねるように言うと、カカシくんは「ごめんごめん」と軽くあしらってきた。
その後はカワウソのとんでもなく早い動きに少し驚いたり、ハズレのないくじ引きでカワウソのぬいぐるみが欲しくなってカカシくんに引いてもらった。
「3等です!おめでとうございまぁす!」
「え!すごー!」
「ハズレないんだから、普通じゃない?」
「ぐっ!でも私だったら4等だったはず…」
カワウソを抱きしめつつ、お昼にとレストランに入る。祝日なので、やはり人は多い。
「… 千歌さん、なんで今日水族館に連れて来てくれたの?」
「え!深い意味は特になかったんだけど、私がカカシくんとお出かけしたかったからかな」
「そっか」
なんだかほっとしたように見えたけど、気のせいかな。
千歌は美しい所作でうどんを食べているカカシくんをじっと見た。
「何?」
「ん?いや、えっと…。そうだ!帰りにお土産屋さんでお互いにプレゼント買わない?」
「え、でもそれ」
「カカシくん、お手伝いいっぱいしてくれるから、お小遣いをお渡しします!」
すちゃっと事前に用意していたポーチを取り出して差し出す。カカシくんは一瞬戸惑っていたが、おずおずと受け取ってくれた。
「じゃー、あと食べきったらイルカショー見よ!」
「ん」
うぅ、うどんもぐもぐしながら頷くカカシくん可愛い。リスのよう…。
*
「それじゃあ、買い終わったらここにまた戻ってこよーね!」
「わかった」
千歌と別れて、カカシはキョロキョロと周りを見渡した。色々なお土産があるので、どれがいいかと悩む。
多分千歌なら、何を選んでも大喜びするのだろう。
さっき、「水族館に連れて来たのは、あと少ししか一緒にいられないってわかったから」、と言われるのではないかと身構えてしまった。
逐一確認はしているが、壺の位置が変わった様子はない。千歌はそこまで壺の絵に興味を示していないはずだ。
ーーー知っているのは自分だけ
まだ、伝えた方が良いかもという迷いはあるが、伝えてどうなるのか。きっと千歌はから元気に話しかけてくるだろう。それは耐えられそうにない。
できれば最後まで、世話焼きお節介な千歌でいて欲しい。
「…!」
これなら、両手を料理に使う千歌の邪魔にはならない。かつ、カカシのことを覚えていて欲しいという自身の勝手なエゴも満たせる。
これから、千歌には店長だけではない、色んな男性との出会いがあるはずだ。たった7歳の自分はその土俵にすら立てなかったが、その時でも、忘れないでいて欲しい。
「あー!もう買ったの?カカシくん早いなぁ」
「千歌さん、なんかいっぱい買ってるね」
「えへ、友達とかバイト先にもせっかくだし、お菓子買ってみた」
じゃあひとまず帰ろっかと歩き出す千歌の手にある袋をいくつか奪う。
「オレも持つ」
「え!いやいや!カカシくん!」
「いーでしょ?千歌さん、何か危なっかしいし。それに」
はいと荷物を持った手と反対の手を差し出す。
「手、つないで帰ろ」
「うぅ!はい!」
荷物を持たせる罪悪感は飛んでいったようで、ギュッと握られた手があたたかかった。
*
「これ、入浴剤?」
「そう!海の生き物シリーズだよ!水族館行った思い出にもなるし。なんと中にはイルカを初め8種類の生き物がどれか当たります!」
くるっと袋を裏返すと、なるほど、何種類かは水族館で見た生き物と同じようだ。
「ほら、カカシくん青い水の中で泳いだら気持ち良さそうって言ってたでしょ?それ、お風呂青色になるんだよ!ちょっとでも海気分味わえるかなーって思って」
とても誇らしそうに説明する千歌が可笑しくて笑った。
「カカシくんのは?何を選んでくれたの?」
「ん、いや。オレのは明日、料理とともにお届けします」
自分が選んだものの反応を見るのが怖いなんて、情けない。それでも、喜んでくれたらもう会えないって辛くなる気がして、先延ばしにした。
千歌は「ちぇー」と悔しがりながらも「じゃー、明日楽しみにしてよう」とワクワクしている。
胸がチクリと痛む。
「じゃあ、ご飯食べてお風呂入ろ!今日はカカシくん先に入って、何が当たったか教えてね!」
今日も美味しい料理に舌鼓を打ち、お風呂でぶくぶく泡立つ入浴剤から、金色のイルカが出て来た。
「え!す、すご!!これシークレットだよ!」
カカシよりも千歌の方がテンション爆上がりになったのだった。
