ちはやぶる
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カカシは、朝日がサンサンと自分に降り注いでいることに気付き、やっと目を覚ました。
「…」
目を開けると、目の前に見知らぬ女性が寝ていた。寝ぼけた頭が稼働するのに、いつもより時間を要す。
「!!っと、わぁ!」
昨日の記憶が一気に甦り、あっという間に覚醒したカカシは、飛び起きてベッドの端から落ちた。
「んぅう」
しまった、起こしたか…。
恐る恐るベッドの上を覗くと、さっきの姿勢から少し身じろぎした千歌がまだ寝ている。ホッとして振動を極力抑えながらさっきの位置に戻る。
「(きれい、だな…)」
マジマジと千歌の顔を見て思う。
昨日はあの後、先に寝てて良いとベッドに押し込まれた。起きていようと試みたものの、ぬくい寝床に疲れた身体は沈み込み、一度だけ、千歌が布団に入って来た時しか浮上しなかった。
「おやすみ」
優しい声に安心して、また微睡んだ。
訳が分からず気疲れしていたとはいえ、忍にあるまじき失態だ。
「うにゅ…」
千歌をよく見ると髪の毛を食んでいる。気持ち悪いかも、と髪の毛をそっと口から外した。
さすがに起きてしまったようで、「あれ、カカシくんもうおきたのぉ」とぐっと伸びをし、ニコッと微笑んでくれた。
少しドキドキする。
「あの、オレ…」
じっとこちらを見る千歌に、ここはひとまず挨拶をすることしか思い付かず、「おはよう、ございます」とお辞儀した。
「カカシくんってしっかりしてるよねぇ。昨日洗濯物も自分で手洗いしてたし、私…してあげれることほとんどなかったや」
ご飯の後、千歌は後片付けをしてからお風呂に入っていた。洗濯物も回したのか。
全部してもらうのが申し訳なくなり、気付くと「朝ごはん、オレも作って良いですか?」と声をかけていた。
千歌は嬉しそうに「もちろん!」と返してくれた。
*
「それじゃあ、フレンチトーストでも作ろっかな!あとコーンスープとウインナーと、サラダにしまーす!じゃあカカシくんはこっちのレタスを洗ってちぎってもらおっかな!」
「わかった」
カカシくんはコクリと頷くと、黙々と作業を開始した。千歌はなんて素直な良い子なのだろうかとまた涙が溢れそうになる。
昨日現れた時、ずぶ濡れで怪我をしていたのは、もしかして虐待ではないか…。きっと聞いても違うと言うだろうし、今はとにかく状況を整理しなくては。
そのためにもまずは腹ごしらえである。
「かーんせーい!」
「いただきます」
あまり感情を出してはいないが、なんだか嬉しそう。ワクワクしてる?ように見える。
なんか可愛いなぁと自分も手を合わせて食事を始めた。
「今日は私、バイトも学校もお休みだから…良かったら服を買いに行こっか」
「…はい」
もぐもぐしている。可愛い。
ついニヤニヤしながら朝食を終えた。
「それで、カカシくんが住んでるとこはどんなところ?」
「えっと、そうですね…」
「あ、もう敬語とか気にしないでいいよ!好きに話してね」
「う、わかった」
少しぎこちなかったが、話す間にだんだんと慣れてきたようだ。
五大国や各忍里があり、争いが絶えないこと。影を名乗る長がいてカカシくんの里では火影様と呼ばれていること。ご両親はいないこと。
「え!中忍で今7歳って、もしかしてカカシくんってエリート?」
「んー、どうだろ。まぁ同い年のやつは見たことないけど」
天才だ。間違いない天才児だ。
こんな適当なTシャツ短パンを着せていることが申し訳なくなる。
一通り話を聞いた後、こちらの世界についても最低限の知識を伝えた。交通ルールも。
カカシくんは一度言うとすぐに覚えてしまうので、苦労は全くなかった。ベランダから外を見て、実物もふまえて説明する。
車を見る目がキラキラしていたのは可愛すぎた。
「よし、じゃあ出発ー!」
「千歌さん、鍵しめた?」
「は!」
*
「っ!めっちゃ似合うぅ!」
「あ、それも良い!」
「デザイナー天才なの!?」
「ぐっ!神よありがとうっ」
最後の方はわけがわからないが、とりあえず千歌が褒めてくれることはわかった。
カカシは、千歌の気が済むまで着せ替え人形状態だったが、お世話になってる手前全部受け入れる。
最終的に「全部良かったよね!全部買いたい!」と力説する千歌を説得して3、4着着回しやすいシンプルな服を買ってもらった。申し訳ないが、お金がないので払ってもらうしかない。
お手伝いとかして返そう。
「あ、カカシくんカカシくん!このカフェ入って良いかな?」
「あ、うん」
見た目可愛らしいお店を指さす千歌。
店に入ると店員が席まで案内してくれた。窓際の席に着き、メニュー表を見せられる。
「美味しそう…どれ食べる?」
「あの、オレ甘いのはちょっと…」
「あ!そうなんだ!それなら、ここら辺なら軽食だからどうかなー」
千歌に勧められた中で、小さめのサンドイッチがあったのでそれを頼んだ。千歌はケーキセットを注文している。
店員がさがると、出されたお水を飲みながら店内をキョロキョロ見る。木の葉の里にはこんなお店はない。いつかできるだろうか。
そんなことを考えていたら、前から視線を感じた。目があってにこりと微笑む千歌。
「いろんな美味しいお店開拓するの、好きなんだぁ。いつも一人だけど、今日はカカシくんいてくれるからすっごく楽しい」
「っ!」
あまりにも無防備な笑み。愛しむような、安心する空気に、カカシは息をのむ。
自分には縁がないと思っていただけに、不意打ちをくらった形で頬が赤くなるのがわかった。
「ありがとね。付き合ってくれて」
「…いや、こっちこそ…」
衣食住全て千歌に頼ってしまっている。申し訳なさとありがたさで声が小さくなった。そんなカカシを励ますように、千歌は声を明るくして言った。
「いやいや!私ってば店長いわく、生粋の世話焼きらしいからね!いくらでも頼ってよ」
そもそも私が壺を磨いたのが原因だと思うしねーと少し困ったように話した。
生粋の世話焼きには同意する。
そんな話をとりとめもなくしていたら、気がつくと料理が届いていた。
「んー!おいしーい、幸せー」
「ふっ」
「あ!今笑った!?」
「あ、ごめん。本当に幸せそうでなんかつられた。… 千歌さんがあんまり美味しそうに食べるから」
「あ、もしかしてちょっと気になってるでしょ?一口食べてみる?」
はい、あーん。と差し出されたスプーン。
ギョッとしてつい首を振ってしまったが、後からやっぱり一口くらいもらっても良かったかもと後悔した。
