瀬をはやみ
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「あーーぁあ、あちぃってばよぉー」
「ちょっと、やめなさいナルト…。余計暑く感じるじゃない」
「おい、とっとと手を動かせ」
「サスケくぅん!ストイックなところも素敵ー!」
ふんっと照れたように顔を背けるサスケを見て、サクラは暑さもなんとやら、作業を再開した。
今日も今日とてDランク任務。波の国の任務を終えてからは、比較的低ランクの任務が続いていた。
川の清掃作業ということで、「暑いこの時期にはうってつけデショ」と案の定2時間遅刻して来たカカシが悪びれもせず宣った。こんな暑い時に遅れるか普通しゃーんなろー。
当のカカシは両足を川につけ、草地の木陰で優雅にあのいかがわしい本を読んでいる。
「カカシせんせー!せんせーも手伝えってばよー!」
「まぁまぁ、ほらオレは監督しないとだからサ」
「監督も何も本読んでるだけじゃねーかよ!」
「確かに」
サクラも小声で同意する。サスケもカカシをジロリと睨みつけているところを見ると、同じ意見のようだ。
カカシはこれ見よがしにため息をつくと、本をパタリと閉じて身を起こした。動く気配はなく、両膝に腕を乗っけてようやくこちらに視線を向けた。
「あのねぇ、オレが手伝ったらお前らのためになんないでしょーが。何のために任務をこなすのか考えなさい」
「うっ」
「…正論ね」
「ちっ」
三人顔を合わせて内緒話を開始した。いつにないチームワークである。
「ねぇ、でも私達だけ汗水垂らして、カカシ先生は涼しい顔してるのは不公平じゃない?」
「オレらだってやる気でねぇってばよ」
「遅刻さえなけりゃあ、まだ涼しい時間で清掃活動ができたんだがな」
あくまで内緒話である。しかしもちろんカカシに聞こえていることは折り込み済みで、わざと相手の罪悪感を積み上げていく。
「だいたいさぁ、この前もその前も遅刻してさぁ。シカマルんとこなんかご褒美に焼き肉とか奢ってもらってんのに、オレらんとこは任務から帰ったら、カカシ先生あっという間にいなくなるしよー」
「そーよねー!チームワークどうのとかいって、自分はとっと解散して親睦深まるどころじゃないわよね」
サスケが頷き、みんなでカカシを見やる。
流石のカカシも旗色が悪いことを察したのだろう。参ったな…と呟きながら頭をかいている。
「わかった。今日の任務をあと1時間で終えたら、何かひとつ言うことを聞く…」
これでどう?とお手上げポーズで打診してくるカカシを見て、してやったり顔で三人顔を見合わせた。
*
「よっしゃー!終わったってばよー!!」
「ふっ、当然だ」
「いやー、まさかほんとに終わるとは」
カカシは苦笑いを浮かべながら手を叩いている。サクラは泥がついた顔を拭きながら、サスケくんが嬉しそうでかっこいい…と見惚れていた。
「さて、それじゃあ」
「あー!待つってばよ!カカシ先生!!」
「何でも言うことを聞くんだろ?」
「逃げるのはなしですよ!」
「いやいや、何でもとは言ってないでしょ?難しいお願いごとはやめてネ。あとマスクは外してもこれだよ」
カカシがマスクを下ろすと、もう一枚マスクがあった。どれだけ素顔を見せたくないんだ。
というかこの暑い中何枚マスクしてんのよ、しゃーんなろー!
三人は再び極秘会議を始める。勿論今回はかなり小声で。
「どーするってばよ?先回りされちまったぞ」
「うーん、カカシ先生ってばガードかたすぎるわね」
ナルトとサクラがグチグチと文句を垂れていると、サスケがこうなったらと口火を切った。
「カカシに晩御飯を作ってもらうってのはどうだ?」
「え、何でだってば?」
「なるほど、さすがサスケくん。ご飯を作るとなると、必然的にカカシ先生の家にお呼ばれになり、合法的に家に入れる。さらに料理を作ってもらうことで、先生の気を逸らしながら家の中を探ることができるってことね!」
「まぁ概ねそうだ。家ならアルバムとか写真があって、顔が写っているものもあるかもしれない。流石に赤ん坊の時からマスクをしている奴もいないだろ」
「へ、へぇー。まぁそれくらいオレも思いついたけどぉ」
「じゃあ決まりね!」
くるりと三人同時で振り返る。カカシは両手をポッケに突っ込んだまま、こちらを見ていたが、あまりにも勢いよく振り返ったせいか、ビクッと驚きで肩が揺れた。
「な、なに?」
「ひっひっひー」
ナルト、悪い笑みがすぎる。
*
「それで、一体何が食べたいの?」
カカシはスーパーの買い物カゴを手で持って、少し先を歩く。カカシ先生スーパー似合わねぇーと爆笑しているナルトを横目にサスケとサクラは目を泳がせる。
「ラーメン食いたいってばよ!」
「却下。ナルト、お前そればっか食ってるとほんとに死ぬぞ?」
「んーと、ち、筑前煮とか?」
「いや、待てサクラ。それだと切るまでは時間を稼げても、煮込み出したら余裕がでる。ここは、少し手が込むが違和感のないハンバーグを」
「サスケ、何かめんどくせぇってばよ」
ナルトが小姑みてぇとゲンナリすると、前を歩くカカシが「お、キャベツ安い」と手に取った。
「三人とも、ロールキャベツとかどう?」
「それで」「お願いします」「てばよ!」
*
「はい、どーぞ」
「お、お邪魔します…」
「おー!カカシせんせーんち、初めてだってばよー!」
「…」
扉が開いて、おずおずと入っていくサクラ。遠慮なくズカズカ入って行くナルトを見て、予想通りの反応の二人が面白くてつい笑ってしまった。
そんな中、不審そうに腕を組んでカカシを見ているサスケに向き直る。
「どーしたの?」
「…何を企んでる?」
「いやいや、ご飯にはオレ、真面目に取り組むようにしてるのよ。腹が減っては戦はできぬってゆーしね」
サスケの背中を軽く押す。
「ま、入ってよ。くつろいででいいから」
とは言ったものの、背後でコソコソされるのは非常に気になる。
カカシは晩御飯を作りながら、恐らくアルバムか何かを探っているであろう三人の気配に意識を集中させる。
時折わざと声をかけ、三人の動きを妨害しては、ギクっと動きを止める部下達の様子を楽しんだ。
「あれ、先生この写真私たち?え!もしかしてこっちは先生が若い頃!?」
「ん?あぁ。まぁね」
流石に写真立てを今更取り上げるのも気が引け、調理の手を止めた。三人が見ている後ろに回り込む。
「?これ何だってばよ?」
「ナルト知らないの?確かイルカって生き物よ。本で読んだことあるわ」
「へー!」
ナルトが写真立ての側に置いてある金色のイルカを指さす。サクラの説明にウンウンと頷くと、ふと懐かしい記憶が蘇った。
「知り合いにね、もらったんだよ。青い水の中をスイスイ泳いでるのを、気持ち良さそうだってオレが言ったのを聞いて、買ってくれたんだ」
「あんた、イルカ見たことあんのか?」
「うん。水族館でネ」
水族館という聞き慣れない単語を聞いて、三人揃って「何それ?」と振り返ってカカシを見る姿が可愛い。
「んー?ナイショ。それよりもうできるから、テーブルついてちょーだい」
皆でいただきますをして食べたロールキャベツは我ながら良い出来だった。
こちらとしては、逐一マスクの下を見ようとする目を掻い潜って食べるので、心休まらなかったが。
「うまっ!カカシ先生意外に料理できんだな!」
「まぁ、一人暮らし長いからなぁ。サスケはどう?」
「…まぁ、悪くない」
「先生!今度レシピ教えてください!!」
ナルトの話に頷いていたサクラは、サスケの返答を聞いてあっという間に詰め寄ってくる。
さすが、今どきのくのいちサクラ。
カカシは「はいはい」と適当にいなして、隙を見て茶をすすった。
美味しそうに、ケチャップを頬につけながらロールキャベツを食べるナルトを見て、ふと師匠とクシナさんを思い出した。そして、行儀良く箸を使ってサラダを食べるサスケを見て、イタチを思い出す。
カカシが今こうやって、何かしてあげようと思うことは単なる偽善になるのかもしれない。
「おかわりー!」
それでも、あの人なら… 千歌さんなら「え?どこがダメなの?」と本気で言ってきそうだ。
突然転がり込んだガキを、文句も言わずに家に置いてくれた彼女。
20年の月日が流れても、忘れることなど出来ない。たった7日間そばにいただけ。それだけなのに、自分の中では大切な、大切な記憶。
ただ、向こうの世界では7日間だったが、こちらとは時の流れが違ったそうで、1ヶ月近く行方不明になったカカシを探して、当時里は大騒ぎになっていた。
無事に帰ってきたカカシを三代目がとりなしてくれたので、事なきを得たのだが。
「せんせぇ、これタッパーで持って帰っていい?」
「ん?多めに作ったからどーぞ」
やったと喜ぶナルトを見て、あの時の千歌さんももしかしたらこんな気持ちだったのかもと微笑む。
ーーーお節介も、悪くないね。千歌さん…
