つくばねの
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岩隠れの千歌は、偶然にもキイの部屋から出て帰る途中の道で向かいからやって来た。最初は千歌もナルトとサクラに気付かず、サクラが「あの、ちょっとお話が…」と声をかけると誰か分かったようで、顔を真っ赤にして突然逃げた。
「え!?あれ?」
「ナルト!早く追いかけるわよ!」
しばらく追いかけっこが続いたが、建物の屋上で小さくなっている千歌を見つけた。本人も本気で隠れる気はなかったのだろう。
「う、あの…あの時は本当に、お恥ずかしい姿をお見せして…」
「あの、良かったら落ち着いて話しませんか?」
恥ずかしさから目が潤んでおり、可愛らしさに色気がプラスされ、女であるサクラもドキドキしてしまう。千歌は渋々頷き、甘味処まで大人しく着いてきてくれた。
「えっと、ナルトくんとサクラちゃん、だよね?カカシさん…六代目様の教え子なんでしょ?二人から見てどんな人なのか聞いて良い?」
ナルトとサクラは初めての質問に互いの顔を見合わせる。そういえば誰一人としてカカシ本人について聞いてくれる人はいなかった。
「あの、どうして知りたいんですか?」
「え!?あ、ダメだった?噂ならたくさん聞いてるんだけど、噂じゃなくてちゃんと知りたくて。綱手様からカカシさんには接触しないよう言われてるから…二人ならよく知ってるだろうと思って」
教えてくれる?と遠慮がちに小首を傾げた姿が、めちゃくちゃ可愛くてサクラは胸を撃ち抜かれた。年上のはずだが、なんだろうこの守ってあげたくなる感じは…。
ナルトは嬉しかったらしく早速出会いから語り出し、千歌は笑いながら聞いている。
「(そういえば、こうやって昔の話を振り返って誰かに言うことってあまりなかったかも)」
戦後の混乱がやっと開けたと言うのもあるが、ナルトとサスケ、そしてサクラとカカシの功績は自分達が伝える間もなく隅々まで情報は行き渡っている。
そこに人となりは関係なく、ただ事実のみ伝わっていることも多い。
どんな思いでそこに立っていたか、どんな過去を抱えて戦ったか…。
里の仲間達は知っているし、詳しくない人は気を遣ってかあえて話題にしてこない。
悲しい思い出だけじゃなかった。出会いも、修行の日々も、任務をこなして頑張ったことも、話しているうちに思い出した。
「ありがと!色々聞けて良かったぁ」
「俺も楽しかったってばよ!」
今度おいろけの術を見せてねとおどける千歌と店を出ると、人だかりが見える。
「どうしたんですか?」
とサクラが近くの男性に声をかけるとどうやら女性が産気づいているらしいことがわかる。
ならば自分の出番と前に行こうとするが、人が多くて前に行けない。
「すみません!あけて!通してください!」
大声を出すも、ガヤガヤとした喧騒にかき消される。
すると千歌が「ちょっとごめんね!」とサクラに触れた。
「きゃあ!」
宙に浮く感覚は、いったい何度やっても慣れそうにない。千歌は中心まで浮かせて連れて来てくれ、人々は驚きから少し場所を開けてくれた。
「大丈夫ですか!?話はできます?」
「うぅうう、いったいぃ」
苦悶の表情ではあるが、喋れている。破水を確認したいが、往来では…何か布でも…とサクラが周りを見渡すと
「土遁、土流壁!!」
土壁が四方を囲み、空から千歌の顔が覗き込んできた。
「取り急ぎで作ったから、診察お願い!今ナルトくんに清潔な布とお湯を探してもらってる!ひと段落したら木の葉病院まで運ぼう!」
「千歌さん!ありがと!」
まさにお願いしたかった処置を全て先回りでしてくれた。幸い子宮口の拡大はそこまでではなく、破水して間もない様子のようだった。
陣痛が少しおさまったタイミングで、千歌の軽重岩の術で文字通り、病院に直行した。
*
「と、今日の話はこんな感じです」
「…騒ぎがあったことは知ってたけど、まさか彼女も関わってたとは…」
「あのさあのさ、カカシ先生ってばもしかしてまだ悩んでんの?相手」
「ん?何で?」
ラーメンを食べ終えて手持ち無沙汰にテウチと話していたナルトが突然話に割って入る。
「えー!だって色々聞き回ってるしさぁ!…俺ってばレンアイはよくわかんねーけど、良い人がどんなかはわかるってばよ!それで言ったらぁ」
「ことは里をまたいでの政略結婚だ。私情は必要ないし、この里に一番メリットのある人と結婚するよ」
そう伝えれば、ナルトはムスッとして、サクラは心配そうだ。少し困ってうーんと外に目を向けると
「あれ、カカシセンセー!ナルトにサクラも!おそろいで何してんのー?」
「いのじゃない。別に…ちょっと報告してたの。あんたこそ、こんな時間にここらへんにいるなんて珍しいじゃない」
「まぁねー!父さんの墓前に花供えてからの帰りよ!あ、そうだ!花といえばさぁ、この前岩隠れの千歌さんがお店に来たんだけどぉ」
報告者 いの
「いらっしゃいませぇ」
ちょうど花に水をやり終えた時、お店の扉が開いた。視線を向けると、キョロキョロと物珍しそうに店内を見ながら奥にやってくる女性が一人。
いのはその時まだ千歌の存在を知らなかったが、立ち居振る舞いから忍であることは分かった。木の葉隠れの里の者でもないことも。
「こんにちは!観光か何かですか?」
「え?あぁ、うーん…そうなのかなぁ?仕事ではないし…」
歯切れの悪い答えを気にすることなく、いのは続けて話しかける。
「どんな花をお探しですかぁ?」
「あの、謝罪って花言葉があるお花ってあるかな?」
ちょっと謝りたいんだけど、直接会えないんだよね…と困ったように笑う千歌。
もしや何か訳ありだろうかと邪推しつつ、いのはそれならと花瓶を指さす。
「紫陽花なんてどーですか?季節もいいし」
「紫陽花…じゃあそれでお願い」
花で謝罪なんて可愛らしい人だなぁと思いながら花を包んだ。
*
「紫陽花…」
今まで朧げだったものが段々と形作られていく。
あの時、写輪眼がないのかと言って立ち止まった彼女の顔には驚きと後悔の色。
その後、執務室の上に置かれた紫陽花の花。
里の人助け。
「…ちょっと、会ってみたくなったな」
その後、帰る前にカメラをレンタルし、家に着いてから久しぶりに変装道具を取り出す。スケアという名で、以前第七班と楽しく調査をしたのがまるでついこの間のように感じた。
カツラも無事使えそうだ。
カカシは準備を終えてから、明日の段取りを思い浮かべながら眠りについたのだった。
次の日、カカシは午前中に優先度が高い仕事を片付け、食事をとってから旅館に張り込んだ。
どうやら千歌は今日は旅館にいたらしく、しばらくしてから外へ出て来た。
陽の光を浴びて、黒髪が艶めいている。相変わらずツインテールだ。
黒いチャイナ服も彼女の肢体の白さを際立たせる。初めて見た時は凍てついた瞳と感じたのが嘘のように、つぶらな瞳はキラキラと好奇心に満ちていた。
「あのっ」
あまり引き離されるとストーカーじみてくる気がして、早めに声をかける。
くるりと振り返った千歌は、背の高さの違いから上目遣いで、カカシは一瞬ドキッとしてしまう。
「?何か?」
「っ!…あの、岩隠れの千歌さんですよね?ジャーナリストのスケアと言います。良かったらお話し聞かせてもらえますか?」
カメラを掲げて見せながら、なるべくにこやかに対応する。千歌は突然のことに驚いたのか、目をパチクリとまたたかせ、少し警戒した様子で了承した。
「良かったら、里の案内もしましょうか?こう見えて西に東に旅してますから、詳しいですよ」
「…それじゃあ、お願いします」
それからカカシは、オススメのお店を何軒か巡りながら、千歌を注意深く観察した。
美味しそうに饅頭を食べる姿がリスのようだとつい、カメラで撮ってしまった。武器屋では興味深そうにクナイを握る横顔が印象的だった。
ぬいぐるみが飾ってあるショーウィンドウをあまりにもじっと見ていたので、九尾を買ってやると両手で嬉しそうにギュッと抱いていた。こちらが心臓を掴まれそうだ。
「えっと、それじゃあそろそろインタビューしたいんだけど、どっかお店でも入ろうか?」
そう声をかけると、少し思案した千歌は「いえ」とニヤリと笑う。
「話を誰にも聞かれないところ、私知ってます」
そう言って差し出された手。
もしかしてと意図を読み取ったカカシは生唾を飲み込みつつ覚悟を決めた。
空へと浮かぶ彼女は、片手にぬいぐるみを抱えながら、カカシの手を握ってどんどん高く行くので、少し冷や冷やした。
「ここなら、ちょっと暑いかもしれませんけど、ゆっくり話せます」
そう言って笑う千歌は、しばらく共にいたからかだいぶ警戒心は薄れているようだ。カカシはチラリと下界を見下ろし、千歌に向き直る。
「どうして、火影とのお見合いに?六代目なんて」
「え、憧れませんか?世界を救った英雄ですよ!お見合いの話を綱手様に頂いた時はチャンスだって思って。…それに…すごく優しいなって」
「優しい?」
「写輪眼のこと、カカシさんにとって失礼なこと言ったのに、困ったように笑って、怒らないでいてくれたから」
それぐらい、気にしない。そう言ってしまいたくなった。
千歌はふぅと小さくため息をつく。
「あの、もうお察しのことだと思いますけど、私…」
「血継淘汰、だね」
「…そうです。ムウ様、祖父のオオノキしかいなかった三人目として…岩隠れではずっと里に守られて来ました。隔世遺伝だと皆喜んだけど、私は皆と戦える力があると嬉しかった…。じい様ほどはまだ扱えない力だけど、自分なりに磨いてきました…」
誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。彼女は繋いだ手をそっと離し、九尾のぬいぐるみを強く抱きしめた。
「それなのに、忍界大戦では里を守れと、第一線には出させてもらえませんでした。いざという時、何かあった時にこの力を次に繋げるようにと…」
だんだんと下を向く千歌が心配になり、覗き込む。大戦に参加しなかったことが、彼女にとって本当に辛いことだったのだろう。だから、キイがそれをついた時に激昂した。
「悔しかったっ…私も戦えるのにっ」
顔を勢いよくあげた千歌の目には大粒の涙が溢れていた。
すごくキレイだと思った。
透明で、陽の光を反射して、まるで宝石のようで。
「あの、ごめんね」
こんなにも美しい心根の彼女を偽り続けることが心苦しくなり、謝ってカツラを外す。それからシールを取った。メイクまではさすがに難しいので、そのままにする。
「え?」
「はたけ、カカシです」
涙は止まったようだが、目玉が飛び出るのではないかと思うほど目を見開いている。大丈夫?と声をかけると、止まっていた時が突然動き出したかのように、顔がゆでだこのごとく真っ赤になった。持っていた九尾のぬいぐるみで顔を隠した。
「あの、あのあの!言い訳になるんですが…黒ツチが、カカシさんはナルトやガイさんと付き合いが長いらしいから、賢い人からしたら少しバカっぽい方が可愛いんじゃないかって…。初めて会った時は、緊張と演じることへのプレッシャーで酷いことばかり口走ってしまって」
ごめんなさい!とまくし立てるように言った千歌。これは俺の気を引きたかったということなのかとつい可笑しくて「フッ」と笑ってしまう。
「あのね、あるかないかの想いだったのに、君の話をたくさん聞くたびに想いが積もって…今ではこんなにも愛おしいって思えるんだ。…俺のこと、これからそばで支えてくれませんか?」
「わ、たしで、いいの?」
やっとぬいぐるみから覗かした顔を見れた。
「千歌ちゃんがいいの」
筑波嶺のみねより落つるみなの川 恋ぞつもりてふちとなりぬる
(あれ?ナルトくんのおいろけの術もツインテール…カカシさんもしかしてツインテール萌えですか?)
(え!?いや!違う!違うから!!)
