◆第二章◆『レベル1のプラグイン』
塁にメッセージを送信してから、数分も経っていない。
天井を見上げながら、明日からの生活についてぼんやりと考えていると、部屋の自動ドアが
「侑李くーーーんっ!!」
「おわっ!?」
視界に飛び込んできたのは、白衣をはためかせた小さな白い影。
避ける間もなく、小さな体当たりが俺の胸元に炸裂する。そのままベッドに押し倒される形になり、猫耳をパタパタと動かすユイさんが、満面の笑みで俺を見上げていた。
「残ってくれるって信じてたよ!あー、もう本当に嬉しい!!これで人手不足もマシになるし何より天才プログラマーと一緒に働けるなんて最高だよ!」
「あー……ユイさん、嬉しいのは分かったから…ちょっと苦しい、です……」
見た目は子供のようでも、彼女は三十歳のベテラン科学者だ。獣人と言うだけあって強い力でぎゅむぎゅむと抱きしめられ、俺は苦笑いしながら助けを求めるようにドアの方へ視線を向けた。
そこには、いつものようにタバコを咥えた塁さんが冷めた目でこちらを見下ろしている。
「おいチビ。四ノ宮が困ってんだろ。いい加減離れてやれ。……それと四ノ宮。返事が早くて助かった。決まり文句は『ようこそブラック職場へ』だ」
「ちょっと塁君!チビって言わない!それにうちの職場をブラックじゃないもん!ホワイトだよ!私特製のミルクココアくらいホワイト!」
ようやく俺から離れたユイさんが、頬を膨らませて塁さんに抗議する。相変わらず騒がしい二人だが、不思議と居心地の悪さは感じなかった。塁さんはタバコの煙を吐き出すと首を軽く鳴らした。
「挨拶はこれくらいにして、さっそく仕事の説明といくか。ユイさんの
俺はベッドから起き上がりヘッドホンを首に掛け、服の皺を軽く伸ばして二人の後ろに続いた。ガラスの向こうの外を、行き交う多種族の姿を横目に見ながら歩いていると、少し前を歩く塁さんがポケットに手を突っ込んだまま振り返ることなく口を開いた。
「おい、四ノ宮。これからユイさんの
普段の
俺は背筋を少し伸ばして「わかりました」と返事をした。
「一つ。俺たち科学者は、ここから異世界へ旅立つことを選んだ種族と、必要以上に交流しちゃならない。あいつらはもう俺たちの管理を離れた『
アセビさんの言っていた言葉が脳裏をよぎる。
異世界へ旅立った者は二度とここへは戻れない。つまり彼らと関わることは世界の
「二つ目。上の指示や許可がない限り、絶対に
(……再構築ができない…から…)
アセビさんから聞いた秘密が、塁の言葉の裏付けになっていることを俺は察していた。もちろん、そんな危険を
俺は黙って頷いた。
「そして三つ目。これが一番重要だ。お前にはこれから、普通の科学者とは違う、特殊な仕事を任せることになる。だから――」
そこで類さんが足を止め、ようやく俺の方を振り返った。
有鱗目の鋭い瞳が、じっと俺の瞳を見つめる。
「お前には、専属の『護衛』をつける。今後はそいつと一緒に行動をしてもらう。一人での行動は基本、厳禁だ」
「え、護衛……?」
思わぬ単語に俺は思わず目を丸くした。護衛なんてファンタジーのイベントやNPCの話だと思っていた。隣でユイさんが、少し申し訳なさそうに、でも期待を込めたような顔で俺を見つめている。
俺に任される特殊な仕事、そしてつけられるという護衛の存在。
まだ見ぬ「この