君と私の帰る場所
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『清純派女優として知られています平岩 夏乃さんに初のロマンスか?
今朝のスポーツ紙の一面に気になる記事が出ています。』
早朝、寝ぼけ眼で着けたテレビの情報番組 芸能コーナー。
人気女子アナの滑津さんが私、平岩 夏乃の記事を紹介していた。
思わず、画面を凝視する。
『深夜のカフェで愛を語らっていたお相手は、現在 ドラマで共演している黒尾鉄朗さん。
記事によれば、ドラマ撮影後にスタッフと別れた二人はタクシーで都内のカフェに移動。
それぞれ料理を頼み、周囲の目も気にせずに互いの料理を突っ付き合うというラブラブ振りだったそうです。
平岩さんと黒尾さんは今期ドラマで兄妹という役柄ですが、共演を機に恋愛へと発展か?と記事は締め括ってます。』
その内容を見て、ホッと胸を撫で下ろした。
今回の取り上げられた記事はドラマの視聴率があまり芳しくないからってことで、事務所が仕組んだ話題作りの為の謂わばでっち上げ記事。
数日前にマネージャーから話があったのを思い出す。
いけない……
すっかり忘れていたわ。
「あ……オカンにも、あと報告しとかないと。」
一人呟きながら、番組の続きを眺める。
絶対に『あれ、何?!』って詰め寄られるヤツだ。
おそろしや……
『平岩 夏乃さんファンの鎌先アナの顔が今朝はずーっとひきつってますからね~』
『いや~、夏乃ちゃんの初のロマンスって記事見てたら、ショックで……
多分、今朝 凹んでる男性ファンは多いと思いますよ!
滑津アナ、事務所は何て言ってるんですか?』
『それがですね、この記事に対して双方の事務所、恋愛関係を否定してます。
仲の良い共演者です、というコメントでした。』
メインパーソナリティの鎌先アナは、
『そうでしょ、清純派の夏乃ちゃんに限って恋愛なんて早過ぎる。』
と首を大きく縦に振り、力説している。
「早過ぎるって言っても、私 もう26なんですけど……」
デビューから既に10年。
つい最近も学生役を演じたせいか……
実年齢通りに見られていないらしい。
この人達は、私が私生活でも『清純派』じゃないと気が済まないのだろう。
「……夏乃。
コーヒー入ったよ~。」
モヤモヤした気持ちを抱えていたところにリビングから声が掛かる。
「はーい。」
ベッドに置いていたリモコンでテレビを消して、私は寝室を出る。
リビングに向かうと、コーヒーの良い香りがしてきた。
キッチンからベーコンの焼ける匂いもしてきたのと同時に腹が鳴る。
お腹、空いたな……
キッチンに寄ってつまみ食いしたかったが、朝からオカンに睨まれたくない……
そんな欲求をぐっと堪え、洗面所へ向かうと玄関からチャイムの音がした。
すると、
「夏乃、ちょっと出てくれる?」
キッチンからオカンの声。
今朝は珍しく、手一杯なのだろう。
「はーい。」
小走りで玄関に向かい、すぐに鍵を開けると凄い形相をしたツッキーこと月島蛍が立っていた。
「おはよう、ツッキー。」
「おはようございます……」
彼はマネージャーという職にありながら、朝から『爽やか』とは縁遠い御機嫌斜めの表情。
その瞬間、頭の中で警告音が鳴り始める。
彼がマネージャーになって1年半……この顔はキレる寸前だ。
雷が落ちる前に顔洗いに行こうと私は踵を返し、洗面所へ向う。
だが、そのツッキーも私の後を追っているのか、洗面所までスリッパの音が続く。
「あの……今から身支度いたしますので、殿方にはご遠慮いただきた……」
「何が『殿方には……』だよ。
僕の事、そんな風に見てないくせに。
夏乃……前にも注意したけどさ、さっき ドアスコープ確認せずに出たでしょ?!」
……あぁ、朝からお説教が始まった。
私はいつものことと決め込み、ツッキーをシカトしながら顔を洗う。
だが、彼も負けじと私の背後に回り込み、
「もし、僕じゃなくて暴漢だったら、どうすんの?!
変な輩はいっぱいいるんだよ?
ちゃんと自覚しなよ!!」
鏡越しでこちらを威嚇するように睨み付ける。
「その時はオカンに盾となってもらうから。」
出来るだけ、ツッキーと目が合わないように顔をタオルで覆うと、
「オカン……って、そう言えば 今朝は姿見ないですけど、どうされたんです?
まだ支度していらっしゃるんですか?」
いつも出迎えるオカンがいないことにようやく気付いたらしい。
「いるよ、キッチンに。
さっき 手が離せなくて、私が代わりに出たの。」
そう言うや否や、ツッキーは早足で慌ただしくキッチンへと向かう。
「あ……オカン ごめんね。」
ツッキーの怒りの矛先がそっちに向かっちゃった。
それから間髪入れずに……
「本当に困るんですよ!
どんなに忙しくても、あの人を不用意に出さないでください。
何かあったら、どーすんですか?!」
キッチンで雷発生。
ツッキー(25)も年上にキレるとか、目上の人間を敬う気が全くないようだ。
だが、オカンもツッキーのお小言をスルーしたいのだろう。
「その時は俺が盾になります。」
私達の会話を聞いていたのか、同じことを言った。
「赤葦さん……
あなたも夏乃と一緒になって、茶化さないでくださいよ。
盾って、簡単に言いますけど……具体的にどうするんです?」
私には『オカン』というあだ名の旦那様、赤葦京治さんがいます。
結婚して、もう3年。
事務所の方針で結婚をしていることは極秘中の極秘だけど、私達は毎日 楽しく過ごしてます。
「大学で護身術 習ってます。」
「はぁ?!」
そして、彼の職業は大学職員。
この前から大学の市民講座の人数合わせで、事務長からの命令で嫌々習ってるって言っていたのを思い出す。
「オカンが盾か……」
一人妄想すると、何だか嬉しくなって自然とニヤ付く。
とりあえず、二人を止めに入ろう。
説教全部聞いてたら、現場に入るの遅れるわ。
「ツッキー、時間見て!
御飯食べないと遅刻しちゃうよ~
また監督に文句言われるけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃないです。」
この前、少し遅れそうになったのを思い出したのか、瞬時にビジネスモードに切り替えたツッキー。
我が家の食卓に着くとオカンが用意していたコーヒーを大人しく啜る。
やっと静かになった……
「オカン、おはよう~」
私はワイシャツにスラックス+エプロン姿の京治さんに力一杯に抱き付く。
昨夜は私の帰りが遅く、就寝していた彼と会話も出来なかった。
起きてる時ぐらい、こうして甘えたい。
「おはよう、夏乃。」
オカンも切れ長の目を細め、穏やかな声で挨拶を返してくれる。
京治さん、本当にいつ見ても格好いい……
キスしたくなってきた。
それは彼の気持ちも一緒だったようで互いの顔がゆっくり近付き、軽く唇を合わせる。
「……もう、終わり?」
「御飯、食べないと遅刻するって……」
「えぇーっ……」
はっきり言って、あんな程度じゃ物足りない!
もっとブチュッと濃いの、ほしいんですけど……
彼に上目遣いして懇願するも、
「ちょっとー、そこの二人。
朝っぱらから、人前でイチャイチャしないでくださーい!」
ツッキーの抗議により邪魔された。
今朝のスポーツ紙の一面に気になる記事が出ています。』
早朝、寝ぼけ眼で着けたテレビの情報番組 芸能コーナー。
人気女子アナの滑津さんが私、平岩 夏乃の記事を紹介していた。
思わず、画面を凝視する。
『深夜のカフェで愛を語らっていたお相手は、現在 ドラマで共演している黒尾鉄朗さん。
記事によれば、ドラマ撮影後にスタッフと別れた二人はタクシーで都内のカフェに移動。
それぞれ料理を頼み、周囲の目も気にせずに互いの料理を突っ付き合うというラブラブ振りだったそうです。
平岩さんと黒尾さんは今期ドラマで兄妹という役柄ですが、共演を機に恋愛へと発展か?と記事は締め括ってます。』
その内容を見て、ホッと胸を撫で下ろした。
今回の取り上げられた記事はドラマの視聴率があまり芳しくないからってことで、事務所が仕組んだ話題作りの為の謂わばでっち上げ記事。
数日前にマネージャーから話があったのを思い出す。
いけない……
すっかり忘れていたわ。
「あ……オカンにも、あと報告しとかないと。」
一人呟きながら、番組の続きを眺める。
絶対に『あれ、何?!』って詰め寄られるヤツだ。
おそろしや……
『平岩 夏乃さんファンの鎌先アナの顔が今朝はずーっとひきつってますからね~』
『いや~、夏乃ちゃんの初のロマンスって記事見てたら、ショックで……
多分、今朝 凹んでる男性ファンは多いと思いますよ!
滑津アナ、事務所は何て言ってるんですか?』
『それがですね、この記事に対して双方の事務所、恋愛関係を否定してます。
仲の良い共演者です、というコメントでした。』
メインパーソナリティの鎌先アナは、
『そうでしょ、清純派の夏乃ちゃんに限って恋愛なんて早過ぎる。』
と首を大きく縦に振り、力説している。
「早過ぎるって言っても、私 もう26なんですけど……」
デビューから既に10年。
つい最近も学生役を演じたせいか……
実年齢通りに見られていないらしい。
この人達は、私が私生活でも『清純派』じゃないと気が済まないのだろう。
「……夏乃。
コーヒー入ったよ~。」
モヤモヤした気持ちを抱えていたところにリビングから声が掛かる。
「はーい。」
ベッドに置いていたリモコンでテレビを消して、私は寝室を出る。
リビングに向かうと、コーヒーの良い香りがしてきた。
キッチンからベーコンの焼ける匂いもしてきたのと同時に腹が鳴る。
お腹、空いたな……
キッチンに寄ってつまみ食いしたかったが、朝からオカンに睨まれたくない……
そんな欲求をぐっと堪え、洗面所へ向かうと玄関からチャイムの音がした。
すると、
「夏乃、ちょっと出てくれる?」
キッチンからオカンの声。
今朝は珍しく、手一杯なのだろう。
「はーい。」
小走りで玄関に向かい、すぐに鍵を開けると凄い形相をしたツッキーこと月島蛍が立っていた。
「おはよう、ツッキー。」
「おはようございます……」
彼はマネージャーという職にありながら、朝から『爽やか』とは縁遠い御機嫌斜めの表情。
その瞬間、頭の中で警告音が鳴り始める。
彼がマネージャーになって1年半……この顔はキレる寸前だ。
雷が落ちる前に顔洗いに行こうと私は踵を返し、洗面所へ向う。
だが、そのツッキーも私の後を追っているのか、洗面所までスリッパの音が続く。
「あの……今から身支度いたしますので、殿方にはご遠慮いただきた……」
「何が『殿方には……』だよ。
僕の事、そんな風に見てないくせに。
夏乃……前にも注意したけどさ、さっき ドアスコープ確認せずに出たでしょ?!」
……あぁ、朝からお説教が始まった。
私はいつものことと決め込み、ツッキーをシカトしながら顔を洗う。
だが、彼も負けじと私の背後に回り込み、
「もし、僕じゃなくて暴漢だったら、どうすんの?!
変な輩はいっぱいいるんだよ?
ちゃんと自覚しなよ!!」
鏡越しでこちらを威嚇するように睨み付ける。
「その時はオカンに盾となってもらうから。」
出来るだけ、ツッキーと目が合わないように顔をタオルで覆うと、
「オカン……って、そう言えば 今朝は姿見ないですけど、どうされたんです?
まだ支度していらっしゃるんですか?」
いつも出迎えるオカンがいないことにようやく気付いたらしい。
「いるよ、キッチンに。
さっき 手が離せなくて、私が代わりに出たの。」
そう言うや否や、ツッキーは早足で慌ただしくキッチンへと向かう。
「あ……オカン ごめんね。」
ツッキーの怒りの矛先がそっちに向かっちゃった。
それから間髪入れずに……
「本当に困るんですよ!
どんなに忙しくても、あの人を不用意に出さないでください。
何かあったら、どーすんですか?!」
キッチンで雷発生。
ツッキー(25)も年上にキレるとか、目上の人間を敬う気が全くないようだ。
だが、オカンもツッキーのお小言をスルーしたいのだろう。
「その時は俺が盾になります。」
私達の会話を聞いていたのか、同じことを言った。
「赤葦さん……
あなたも夏乃と一緒になって、茶化さないでくださいよ。
盾って、簡単に言いますけど……具体的にどうするんです?」
私には『オカン』というあだ名の旦那様、赤葦京治さんがいます。
結婚して、もう3年。
事務所の方針で結婚をしていることは極秘中の極秘だけど、私達は毎日 楽しく過ごしてます。
「大学で護身術 習ってます。」
「はぁ?!」
そして、彼の職業は大学職員。
この前から大学の市民講座の人数合わせで、事務長からの命令で嫌々習ってるって言っていたのを思い出す。
「オカンが盾か……」
一人妄想すると、何だか嬉しくなって自然とニヤ付く。
とりあえず、二人を止めに入ろう。
説教全部聞いてたら、現場に入るの遅れるわ。
「ツッキー、時間見て!
御飯食べないと遅刻しちゃうよ~
また監督に文句言われるけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃないです。」
この前、少し遅れそうになったのを思い出したのか、瞬時にビジネスモードに切り替えたツッキー。
我が家の食卓に着くとオカンが用意していたコーヒーを大人しく啜る。
やっと静かになった……
「オカン、おはよう~」
私はワイシャツにスラックス+エプロン姿の京治さんに力一杯に抱き付く。
昨夜は私の帰りが遅く、就寝していた彼と会話も出来なかった。
起きてる時ぐらい、こうして甘えたい。
「おはよう、夏乃。」
オカンも切れ長の目を細め、穏やかな声で挨拶を返してくれる。
京治さん、本当にいつ見ても格好いい……
キスしたくなってきた。
それは彼の気持ちも一緒だったようで互いの顔がゆっくり近付き、軽く唇を合わせる。
「……もう、終わり?」
「御飯、食べないと遅刻するって……」
「えぇーっ……」
はっきり言って、あんな程度じゃ物足りない!
もっとブチュッと濃いの、ほしいんですけど……
彼に上目遣いして懇願するも、
「ちょっとー、そこの二人。
朝っぱらから、人前でイチャイチャしないでくださーい!」
ツッキーの抗議により邪魔された。