神様、もう少しだけ……
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去年の春……
私は一つ下の学年の子と共に卒業することに酷く抵抗があり、通信制の高校に転入も考えていた。
だが、とある人から、
『どこに行って勉強したって、この先 同級生と卒業することなんて一生出来ないんだよ』
と言われ、この青葉城西で残りの一年を過ごすことに。
この部には退院してから、いろんなことにチャレンジしてみたい……
そんな気持ちから入部。
年下の子達と仲良くなれるか、凄く不安だったけど、留年は隠しようのない事実だし、私がそれを気にしても仕方ない。
ダメ元で話し掛けたら、意外にも打ち解けて、今じゃたくさんの後輩と仲良くなった。
高校に四年通ったことになるが、意外にも最後の年が私にとって一番充実していたような気がする。
「マロちゃん先輩、鍵は責任持って片付けておきます!」
「……はい、よろしく頼むね~
じゃ、またね!」
散々泣いた後、私は茶道部の皆と別れて昇降口へと向かう。
名残惜しいけど、ここはもう私の居る場所じゃなくなったから。
人気のない下駄箱で靴を履き替え、今まで履いていたシューズをビニール袋に収めていると……
「ちょっと、いつまでモタモタしてんの?
寒いんだから、さっさとしなよ。」
どこかで聞いた声が響く。
「え……」
「卒業おめでとう、平岩。」
顔を上げたその瞬間、背後から誰かにギュッと抱き着かれる。
「え……」
「え、じゃない!
全く、早く出てきなよ。
こっちは校門でずーっと待っていたっていうのに!!
お前がなかなか出てこないから、卒業取り消されて また留年すんのかと思ったよ。」
縁起でもないことを耳元で囁かれ、背筋がゾワリと粟立つ。
こんな毒づく事を言うのはこの人しかいない!
「……お、及川くん?!」
彼とは親友(友達も微妙……)とまではいかないが、卒業後もいろいろと気に掛けてもらっている。
『卒業式の日?
その日は野暮用が入って宮城に戻れない。』
先日、電話が掛かってきた時にそう言ってなかったっけ?
「と、東京にいるはずじゃ……」
「バカ、サプライズに決まってるだろ!
ってか……何、その花束?
俺のより立派なの、誰からもらったの?!」
身体に巻き付くその手には後輩からの花束より、ほんの少し小さめの可愛らしいラッピングでチューリップの花束が握られていた。
何だかんだと悪態をついているけど、久しぶりに会ったこの人は何にも変わってないんだ……
そう思ったら、再び 涙が溢れそうになる。
「…………男の子。」
「はぁ?!
ちょっと、誰?
そんなの、及川さん聞いてないよ!
ってか、お前に彼氏とか……俺は認めない!!!」
私の言葉を真に受けた彼はかなりイラついたようで、私の身体を更に強い力で抱き締めてくる。
ちょっと意地悪し過ぎたかと思いながらも、本当のことを言うのを躊躇う。
あぁ、神様。
もう少しだけ……
このままでいさせてください。
2017.7.15
Web拍手お礼小話として公開
私は一つ下の学年の子と共に卒業することに酷く抵抗があり、通信制の高校に転入も考えていた。
だが、とある人から、
『どこに行って勉強したって、この先 同級生と卒業することなんて一生出来ないんだよ』
と言われ、この青葉城西で残りの一年を過ごすことに。
この部には退院してから、いろんなことにチャレンジしてみたい……
そんな気持ちから入部。
年下の子達と仲良くなれるか、凄く不安だったけど、留年は隠しようのない事実だし、私がそれを気にしても仕方ない。
ダメ元で話し掛けたら、意外にも打ち解けて、今じゃたくさんの後輩と仲良くなった。
高校に四年通ったことになるが、意外にも最後の年が私にとって一番充実していたような気がする。
「マロちゃん先輩、鍵は責任持って片付けておきます!」
「……はい、よろしく頼むね~
じゃ、またね!」
散々泣いた後、私は茶道部の皆と別れて昇降口へと向かう。
名残惜しいけど、ここはもう私の居る場所じゃなくなったから。
人気のない下駄箱で靴を履き替え、今まで履いていたシューズをビニール袋に収めていると……
「ちょっと、いつまでモタモタしてんの?
寒いんだから、さっさとしなよ。」
どこかで聞いた声が響く。
「え……」
「卒業おめでとう、平岩。」
顔を上げたその瞬間、背後から誰かにギュッと抱き着かれる。
「え……」
「え、じゃない!
全く、早く出てきなよ。
こっちは校門でずーっと待っていたっていうのに!!
お前がなかなか出てこないから、卒業取り消されて また留年すんのかと思ったよ。」
縁起でもないことを耳元で囁かれ、背筋がゾワリと粟立つ。
こんな毒づく事を言うのはこの人しかいない!
「……お、及川くん?!」
彼とは親友(友達も微妙……)とまではいかないが、卒業後もいろいろと気に掛けてもらっている。
『卒業式の日?
その日は野暮用が入って宮城に戻れない。』
先日、電話が掛かってきた時にそう言ってなかったっけ?
「と、東京にいるはずじゃ……」
「バカ、サプライズに決まってるだろ!
ってか……何、その花束?
俺のより立派なの、誰からもらったの?!」
身体に巻き付くその手には後輩からの花束より、ほんの少し小さめの可愛らしいラッピングでチューリップの花束が握られていた。
何だかんだと悪態をついているけど、久しぶりに会ったこの人は何にも変わってないんだ……
そう思ったら、再び 涙が溢れそうになる。
「…………男の子。」
「はぁ?!
ちょっと、誰?
そんなの、及川さん聞いてないよ!
ってか、お前に彼氏とか……俺は認めない!!!」
私の言葉を真に受けた彼はかなりイラついたようで、私の身体を更に強い力で抱き締めてくる。
ちょっと意地悪し過ぎたかと思いながらも、本当のことを言うのを躊躇う。
あぁ、神様。
もう少しだけ……
このままでいさせてください。
2017.7.15
Web拍手お礼小話として公開
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