ご褒美
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「只今~」
ようやく自宅に帰り着くと、母が玄関にすっ飛んで来た。
「ちょっと、遅かったじゃない!
何度も携帯に連絡入れてたのに、見てないの?」
「ごめん。
図書委員の当番で残ってて。」
鞄の中を漁り、携帯を取り出すとメールと着信の嵐だった。
滅多に怒らない人が一度 激怒したら、大変なことになる。
例えば、貯水量満杯のダムが決壊したときと同じくらいの破壊力とか何とか……
抑えなんか全く効きやしない。
激流に圧されて、一気に飲み込まれてしまう……
昔、誰かに聞いた話を思い出したが、時 既に遅し。
「一人で帰ったんじゃないでしょうね?!
こんなに遅くなるときは家に電話しなさいって言ったでしょ!」
「大丈夫。
一人じゃなかったから。」
「本当に?!
怒られたくないから、出任せ言ってるんじゃないでしょうね?」
私がこんな時間まで連絡しなかったのがいけなかったんだけど、母の怒りは最高潮。
本当のことを言っても全く信じてもらえない。
こんなことなら、黒尾くんの申し出通り、自宅まで送ってもらうんだった……
「本当だってば。
嘘なんかついてないって!
バレー部の子と駅まで一緒だったもん。」
「嘘おっしゃい。
お母さんはそんな子に育てた覚えは無いわよ……」
二階に向かう階段を上がる私の後を歩くスピーカーと化し、背後霊のように着いてくる。
それがうるさかったのだろうか。
「母さん、レイが帰ってきたんなら、飯にしてくれよ。
腹減った。」
突然、迷惑そうな大学生の兄が部屋からヌッと顔を出す。
あらら……
無関係の兄にとばっちりがいってしまったか!
こんなとき、いつも助け船を出してくれるけど、あまり期待出来ないか……
ガックリと肩を落としていると、
「もうそろそろ、父さんが帰ってくるんじゃない?
御飯、準備しといた方がいいと思うけど。」
今日は機嫌が良かったのか。
母を台所へ戻るように仕向けてくれた。
……助かった。
「おかえり、レイ。」
本来の静けさを取り戻した廊下で兄がニッと笑う。
「ただいま……」
「ちゃんと連絡しないとダメだろ。
母さん、ずっと待ってたんだからな。」
口調は丁寧だが、絶対 怒ってる。
兄もどっちかと言えば、母と同じダム決壊タイプだったことを思い出した。
とりあえず貢ぎ物!
「お兄ちゃん、お菓子食べる?」
私は手にしていたコンビニの袋からグミ(お腹空いたとき用のお菓子)を取り出した瞬間、ペットボトルがゴロンと転がり落ちた。
「あ、俺……菓子じゃなくて、それでいいや。
新商品だろ、そのジュース。」
そう言いながら、黒尾くんからの『ご褒美』を手にする。
「あっ、それはダメ!!」
持っていた鞄やレジ袋を放り出し、兄の手から奪い返す。
その剣幕に兄は驚いた表情を見せ、
「何だよ……そんな怒ることないだろ。
ジュースぐらい、明日コンビニで買えばいいじゃん。」
そう言い放った。
たかが ジュース。
同じ物は店や自販機ですぐに買えるだろう。
他の人にとったら、どこにでもある新商品のペットボトルのジュース。
だけど、私にとって……
これだけは違う。
「ごめん。
これだけはいくらお兄ちゃんでも譲れないんだ。」
だってこれは……
黒尾くんが今日 頑張った私の為に買ってくれた『ご褒美』なんだから。
「お腹空いてるなら、このグミにして。
結構、美味しいんだから。
試してみて、じゃ!」
呆気にとられていた兄にグミの袋を掴ませ、床に散乱した鞄や袋を手にすると自室へと逃げ込んだ。
ペットボトルを大切に抱えて、おかしく思われただろうけど……
「まぁ、いいか。」
だって、こんなことしてもらったの……初めてなんだから。
黒尾くんにしてみたら、ジュース一本奢ったくらいのことなんだろうけど。
先週まで隣の席で冗談ばかり言っていた人が、さりげなくあんなことが出来る男前だったとは……
「本当、意外だ……」
『ご褒美』を机の上に置き、しばらくそれを眺めた。
「只今~」
ようやく自宅に帰り着くと、母が玄関にすっ飛んで来た。
「ちょっと、遅かったじゃない!
何度も携帯に連絡入れてたのに、見てないの?」
「ごめん。
図書委員の当番で残ってて。」
鞄の中を漁り、携帯を取り出すとメールと着信の嵐だった。
滅多に怒らない人が一度 激怒したら、大変なことになる。
例えば、貯水量満杯のダムが決壊したときと同じくらいの破壊力とか何とか……
抑えなんか全く効きやしない。
激流に圧されて、一気に飲み込まれてしまう……
昔、誰かに聞いた話を思い出したが、時 既に遅し。
「一人で帰ったんじゃないでしょうね?!
こんなに遅くなるときは家に電話しなさいって言ったでしょ!」
「大丈夫。
一人じゃなかったから。」
「本当に?!
怒られたくないから、出任せ言ってるんじゃないでしょうね?」
私がこんな時間まで連絡しなかったのがいけなかったんだけど、母の怒りは最高潮。
本当のことを言っても全く信じてもらえない。
こんなことなら、黒尾くんの申し出通り、自宅まで送ってもらうんだった……
「本当だってば。
嘘なんかついてないって!
バレー部の子と駅まで一緒だったもん。」
「嘘おっしゃい。
お母さんはそんな子に育てた覚えは無いわよ……」
二階に向かう階段を上がる私の後を歩くスピーカーと化し、背後霊のように着いてくる。
それがうるさかったのだろうか。
「母さん、レイが帰ってきたんなら、飯にしてくれよ。
腹減った。」
突然、迷惑そうな大学生の兄が部屋からヌッと顔を出す。
あらら……
無関係の兄にとばっちりがいってしまったか!
こんなとき、いつも助け船を出してくれるけど、あまり期待出来ないか……
ガックリと肩を落としていると、
「もうそろそろ、父さんが帰ってくるんじゃない?
御飯、準備しといた方がいいと思うけど。」
今日は機嫌が良かったのか。
母を台所へ戻るように仕向けてくれた。
……助かった。
「おかえり、レイ。」
本来の静けさを取り戻した廊下で兄がニッと笑う。
「ただいま……」
「ちゃんと連絡しないとダメだろ。
母さん、ずっと待ってたんだからな。」
口調は丁寧だが、絶対 怒ってる。
兄もどっちかと言えば、母と同じダム決壊タイプだったことを思い出した。
とりあえず貢ぎ物!
「お兄ちゃん、お菓子食べる?」
私は手にしていたコンビニの袋からグミ(お腹空いたとき用のお菓子)を取り出した瞬間、ペットボトルがゴロンと転がり落ちた。
「あ、俺……菓子じゃなくて、それでいいや。
新商品だろ、そのジュース。」
そう言いながら、黒尾くんからの『ご褒美』を手にする。
「あっ、それはダメ!!」
持っていた鞄やレジ袋を放り出し、兄の手から奪い返す。
その剣幕に兄は驚いた表情を見せ、
「何だよ……そんな怒ることないだろ。
ジュースぐらい、明日コンビニで買えばいいじゃん。」
そう言い放った。
たかが ジュース。
同じ物は店や自販機ですぐに買えるだろう。
他の人にとったら、どこにでもある新商品のペットボトルのジュース。
だけど、私にとって……
これだけは違う。
「ごめん。
これだけはいくらお兄ちゃんでも譲れないんだ。」
だってこれは……
黒尾くんが今日 頑張った私の為に買ってくれた『ご褒美』なんだから。
「お腹空いてるなら、このグミにして。
結構、美味しいんだから。
試してみて、じゃ!」
呆気にとられていた兄にグミの袋を掴ませ、床に散乱した鞄や袋を手にすると自室へと逃げ込んだ。
ペットボトルを大切に抱えて、おかしく思われただろうけど……
「まぁ、いいか。」
だって、こんなことしてもらったの……初めてなんだから。
黒尾くんにしてみたら、ジュース一本奢ったくらいのことなんだろうけど。
先週まで隣の席で冗談ばかり言っていた人が、さりげなくあんなことが出来る男前だったとは……
「本当、意外だ……」
『ご褒美』を机の上に置き、しばらくそれを眺めた。