黒づくめ
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「俺さ、思ったんだけど……」
近くにあったベンチに腰掛け、各々が買ったパックにストローを刺して飲もうとしていたとき、成田が口を開いた。
「縁下、あの話聞きたくなくて教室から出てきたんだろ?」
俺、他人がわかるほど、露骨に嫌な顔をしていたかな?
成田に見透かされたようで、何だか恥ずかしかった。
「バレたか……
皆して、犯人捜しでもするみたいに詮索し始めたから、ちょっと嫌になって……」
「わかる。
俺もそう思ったから。
でも、あの場から誰も出ないし、立ち上がるタイミング無くして……
だから、縁下が立ち上がったとき、『あ、俺と一緒のヤツがいた!』って思って 嬉しかった。」
成田はストローに口をつけ、俺の方を見てニッと笑う。
自分と同じ感覚のヤツが身近に居るって思うと、さっきまでの憂鬱な気分も薄れていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「縁下!
アレ、うちの担任じゃないか?」
廊下を曲がると、少し先を歩く担任の姿が目に入った。
その先、あと数歩行けば、俺達の教室だ。
「うわっ、ヤバい!」
隣のクラスの担任より年配の先生で温厚そうだけど、入学二日目で遅刻なんかで怒らせたくない。
出来るだけ早足で歩き、先生に近付く。
……もうこうなったら、奥の手だ。
「せ、先生!
おはようございます!!」
背後から近付き、担任を呼び止めるように挨拶をした。
その間に先生よりも先に教室へ向かう……
今はこれしか、遅刻から逃れる術はない。
すると、声をかけられた担任とその横を歩いていたショートカットの女子生徒が立ち止まり、こちらを振り返った。
「ん……おはよう。
朝から元気だねぇ。
ほら早く入りなさい、ホームルームを始めますよ。」
担任はニッと笑いながら、教室のドアに手をかける。
とりあえず、セーフということなのだろう。
俺と成田は互いの顔を見合せながら、ホッと息をついた。
「ほらほら、自分の席に戻りなさい。」
扉を開くと、出ていく前と同じ光景のまま、石野を中心に皆が集まっていた。
「ホームルームを始めますよ。」
先生が教室に入ると、蜘蛛の子を散らすように一斉に自分の席へと向かう。
その後に続こうと一歩踏み出した瞬間、艶やかな黒髪、涼しげな目元が視界に飛び込んでくる。
俺は先生の隣に居た女子とぶつかりそうになっていた。
「あっ、ごめん……」
咄嗟に身を引くと、後ろにいた成田がクスクス笑う。
「縁下、紳士は女子を優先させるもんだぞ。」
「うるさい!」
顔が一気に熱くなるのを感じながら、自分の席へと急いだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、今朝はホームルームを始める前に、昨日休んでいた南雲 つばささんを紹介します。」
さっき、入り口でぶつかりそうになった彼女が教壇に立つ先生の隣に俯いたまま並び、会釈をする。
その瞬間、教室全体の空気が変わった気がした。
恐らく、昨日欠席していた彼女を黒づくめではないかと疑っているに違いない。
「さ、自己紹介しましょうか。」
クラスメイトがそんな好奇な目で彼女を見ていると知りもしない担任は彼女に視線を向ける。
すると、彼女はゆっくりと顔を上げ、姿勢を正した途端……
俺の胸がトクリと高鳴った。
スッと通った鼻筋、柔らかな曲線を描く輪郭に良く似合う短く切り揃えられた黒髪。
さらさらとした前髪からのぞく切れ長の瞳は真っ直ぐ前を見据え、固く結ばれていた唇がゆっくりと開く。
「南雲 つばさです。
どうぞ、よろしくお願いたします。」
想像していたよりも低い声は、落ち着いていて耳障りが良かった。
ずっと聞いていたいくらい……
俺は一瞬のうちに彼女に惹かれてしまった。
近くにあったベンチに腰掛け、各々が買ったパックにストローを刺して飲もうとしていたとき、成田が口を開いた。
「縁下、あの話聞きたくなくて教室から出てきたんだろ?」
俺、他人がわかるほど、露骨に嫌な顔をしていたかな?
成田に見透かされたようで、何だか恥ずかしかった。
「バレたか……
皆して、犯人捜しでもするみたいに詮索し始めたから、ちょっと嫌になって……」
「わかる。
俺もそう思ったから。
でも、あの場から誰も出ないし、立ち上がるタイミング無くして……
だから、縁下が立ち上がったとき、『あ、俺と一緒のヤツがいた!』って思って 嬉しかった。」
成田はストローに口をつけ、俺の方を見てニッと笑う。
自分と同じ感覚のヤツが身近に居るって思うと、さっきまでの憂鬱な気分も薄れていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「縁下!
アレ、うちの担任じゃないか?」
廊下を曲がると、少し先を歩く担任の姿が目に入った。
その先、あと数歩行けば、俺達の教室だ。
「うわっ、ヤバい!」
隣のクラスの担任より年配の先生で温厚そうだけど、入学二日目で遅刻なんかで怒らせたくない。
出来るだけ早足で歩き、先生に近付く。
……もうこうなったら、奥の手だ。
「せ、先生!
おはようございます!!」
背後から近付き、担任を呼び止めるように挨拶をした。
その間に先生よりも先に教室へ向かう……
今はこれしか、遅刻から逃れる術はない。
すると、声をかけられた担任とその横を歩いていたショートカットの女子生徒が立ち止まり、こちらを振り返った。
「ん……おはよう。
朝から元気だねぇ。
ほら早く入りなさい、ホームルームを始めますよ。」
担任はニッと笑いながら、教室のドアに手をかける。
とりあえず、セーフということなのだろう。
俺と成田は互いの顔を見合せながら、ホッと息をついた。
「ほらほら、自分の席に戻りなさい。」
扉を開くと、出ていく前と同じ光景のまま、石野を中心に皆が集まっていた。
「ホームルームを始めますよ。」
先生が教室に入ると、蜘蛛の子を散らすように一斉に自分の席へと向かう。
その後に続こうと一歩踏み出した瞬間、艶やかな黒髪、涼しげな目元が視界に飛び込んでくる。
俺は先生の隣に居た女子とぶつかりそうになっていた。
「あっ、ごめん……」
咄嗟に身を引くと、後ろにいた成田がクスクス笑う。
「縁下、紳士は女子を優先させるもんだぞ。」
「うるさい!」
顔が一気に熱くなるのを感じながら、自分の席へと急いだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、今朝はホームルームを始める前に、昨日休んでいた南雲 つばささんを紹介します。」
さっき、入り口でぶつかりそうになった彼女が教壇に立つ先生の隣に俯いたまま並び、会釈をする。
その瞬間、教室全体の空気が変わった気がした。
恐らく、昨日欠席していた彼女を黒づくめではないかと疑っているに違いない。
「さ、自己紹介しましょうか。」
クラスメイトがそんな好奇な目で彼女を見ていると知りもしない担任は彼女に視線を向ける。
すると、彼女はゆっくりと顔を上げ、姿勢を正した途端……
俺の胸がトクリと高鳴った。
スッと通った鼻筋、柔らかな曲線を描く輪郭に良く似合う短く切り揃えられた黒髪。
さらさらとした前髪からのぞく切れ長の瞳は真っ直ぐ前を見据え、固く結ばれていた唇がゆっくりと開く。
「南雲 つばさです。
どうぞ、よろしくお願いたします。」
想像していたよりも低い声は、落ち着いていて耳障りが良かった。
ずっと聞いていたいくらい……
俺は一瞬のうちに彼女に惹かれてしまった。