引っ越し前夜
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「おう。」
ガクちゃんは、モスグリーンのタートルネックのニットに黒のパンツ、スニーカー、そして 首元にはダークグレーのマフラー、お気に入りの濃紺のダッフルコートを身に纏い、ゆっくりと立ち上がった。
黒のヨレヨレになったコート、グレーの毛玉の着いたセーターとジーンズ姿の私より数倍も小綺麗な格好をしている。
「ごめん、待たせた。」
彼に謝りながら近付くと、抱えていた段ボールを突然 奪われた。
「大丈夫だ。
全然、待ってない。」
いつものぶっきらぼうな口調で、さっきまで座っていた荷台に段ボールを置く。
だが、高い鼻、頬や耳たぶは寒さで真っ赤に染まっている。
随分と待たせてしまったようだ。
「段ボール、あと何箱?」
「階段上がった所に四箱。
あ、でも、私が運ぶか……」
最後まで私の話を聞くこともなく、彼は階段を一気に登っていく。
「つばさはそこにいろ。
ずっこけるのが、目に見える。」
「ちょっと、言い方……」
口は悪いが、私にとって頼りになる兄貴分である。
「なぁ、つばさ。」
コンビニに向かう道すがら、段ボール箱を載せた台車を押すガクちゃんが徐に口を開く。
「その髪 どうするんだ?
入学式、明後日だろ。」
隣に並んだ私の方へ一瞬視線をやり、再び 前を向き直す。
「ああ……マズいですね。」
私は右手で頭の上にまとめた髪をポンと軽く叩いた。
「宮城でも『不良少女A』 やんの?」
「やりません。」
きっぱりと断言しながら、つい一週間前に行われた演劇サークルの定期公演を思い出す。
『不良少女A』の役作りの為、ポニーテールの部分だけを金髪にしたのだ。
「明日、向こうに着いたら、すぐに切るよ。
……ショートにでもするかな。」
公演が終われば切るつもりだった。
だが、美容室に行く間もなく 荷造りやら手続きやらで忙殺され、今日に至ってしまった。
明日 宮城に午前八時過ぎには到着する予定。
一旦、祖父宅に荷物を置いて、昼前に出来上がった制服を受け取ったついでに寄ればいい。
頭の中で明日の予定を組んでいると、
「そこまで伸ばしたのにバッサリ切るなんて、勿体ない。
染めればいいのに。」
ガクちゃんの呟きが聞こえる。
「そう?」
何気無い彼の『勿体ない』 という言葉に首を傾げてしまった。
私自身、この長い髪に然程 思い入れがなく、髪を染めてまで伸ばしたいという気持ちもない。
お金を使わなければ、母を困らせない……
そんな理由から美容室に行かなかっただけ。
髪が長かろうが、短かろうが……
私にとって、母の機嫌さえ悪くならなければ、どちらでも良かった。
『女の子は髪の長い子がいい』 と明言するガクちゃんにこんな理由を知られたら、呆れてるだろう。
「ガクちゃんにそう言われると、俄然 切りたくなってきた。」
「はぁっ?
お前、喧嘩売ってんのか?
段ボール、今すぐ側溝に突き落と……」
「さないで!
本当にやめて!」
ガクちゃんは、モスグリーンのタートルネックのニットに黒のパンツ、スニーカー、そして 首元にはダークグレーのマフラー、お気に入りの濃紺のダッフルコートを身に纏い、ゆっくりと立ち上がった。
黒のヨレヨレになったコート、グレーの毛玉の着いたセーターとジーンズ姿の私より数倍も小綺麗な格好をしている。
「ごめん、待たせた。」
彼に謝りながら近付くと、抱えていた段ボールを突然 奪われた。
「大丈夫だ。
全然、待ってない。」
いつものぶっきらぼうな口調で、さっきまで座っていた荷台に段ボールを置く。
だが、高い鼻、頬や耳たぶは寒さで真っ赤に染まっている。
随分と待たせてしまったようだ。
「段ボール、あと何箱?」
「階段上がった所に四箱。
あ、でも、私が運ぶか……」
最後まで私の話を聞くこともなく、彼は階段を一気に登っていく。
「つばさはそこにいろ。
ずっこけるのが、目に見える。」
「ちょっと、言い方……」
口は悪いが、私にとって頼りになる兄貴分である。
「なぁ、つばさ。」
コンビニに向かう道すがら、段ボール箱を載せた台車を押すガクちゃんが徐に口を開く。
「その髪 どうするんだ?
入学式、明後日だろ。」
隣に並んだ私の方へ一瞬視線をやり、再び 前を向き直す。
「ああ……マズいですね。」
私は右手で頭の上にまとめた髪をポンと軽く叩いた。
「宮城でも『不良少女A』 やんの?」
「やりません。」
きっぱりと断言しながら、つい一週間前に行われた演劇サークルの定期公演を思い出す。
『不良少女A』の役作りの為、ポニーテールの部分だけを金髪にしたのだ。
「明日、向こうに着いたら、すぐに切るよ。
……ショートにでもするかな。」
公演が終われば切るつもりだった。
だが、美容室に行く間もなく 荷造りやら手続きやらで忙殺され、今日に至ってしまった。
明日 宮城に午前八時過ぎには到着する予定。
一旦、祖父宅に荷物を置いて、昼前に出来上がった制服を受け取ったついでに寄ればいい。
頭の中で明日の予定を組んでいると、
「そこまで伸ばしたのにバッサリ切るなんて、勿体ない。
染めればいいのに。」
ガクちゃんの呟きが聞こえる。
「そう?」
何気無い彼の『勿体ない』 という言葉に首を傾げてしまった。
私自身、この長い髪に然程 思い入れがなく、髪を染めてまで伸ばしたいという気持ちもない。
お金を使わなければ、母を困らせない……
そんな理由から美容室に行かなかっただけ。
髪が長かろうが、短かろうが……
私にとって、母の機嫌さえ悪くならなければ、どちらでも良かった。
『女の子は髪の長い子がいい』 と明言するガクちゃんにこんな理由を知られたら、呆れてるだろう。
「ガクちゃんにそう言われると、俄然 切りたくなってきた。」
「はぁっ?
お前、喧嘩売ってんのか?
段ボール、今すぐ側溝に突き落と……」
「さないで!
本当にやめて!」