ヅカとはなたか
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❁❁❁❁❁❁❁
「ちょっと!
及川くん、いつ戻ってくるのよ!」
「さっきから『すぐ戻ります』の繰り返しじゃん。」
廊下で不満を口にする及川目当ての客に事情を話すリサや岩泉が頭を下げる姿が磨りガラス越しに見える。
「マッキー、何か外 大変そうね。」
「及川逃走中とか……
今、狂犬ちゃん達が校内探し回ってるんでしょ?」
同じクラスのチケットを買ってくれていたサカモト達がチラリと廊下へ視線をやる。
「ああ。
騒がしいけど、勘弁な。」
さっきまで俺もあっちで客の対応していたけど、コイツらが来てくれたから、こうやって接客に戻る事が出来た。
「あー、いいの、いいの。
気にしてないから。」
「そうそう。
うちらは夏乃の考案したスイーツ目当てだから、及川居ようと居まいとどっちでもいい~」
「おい、そこはさ『花巻が居るから、関係ない』くらい言えよ。」
「「「あー、ナイナイ!!」」」
色気より食い気……
俺の周りの女子はリサにしろ、コイツらにしろ……こんな感じだ。
「それにしてもああいう輩が一番厄介だよね。
私らみたいに純粋にスイーツ楽しめば良いのに……」
「本当本当。
いつでも店に及川居るって思うのも、おかしな話よ。
休憩で居ないかもとか、考えなかったのかね?」
「事前に及川が接客している時間帯を聞いておくとか、しておけば良かったんだよ。
うちらみたいに店内が空く時間帯をリサーチするとか、詰めが甘い。」
確かに。
だが、人は大概 自分に都合のいい解釈をするものだ。
「ここに居ても仕方ないし、他 回ろうか。」
「そうしよう~」
また客が列から離れていく。
リサと岩泉の説得に耳を貸す事なく……
引き留める術を持たない俺はそれをただ眺める事しか出来なかった。
こんな時にアイツが居たら、どうするだろう?
ふと脳裏に浮かんだのは平岩の姿。
……今、校内を客引きで歩き回っている頃だろうか。
「お嬢様方、もうお出かけですか?
チケットをお持ちですが、スイーツはもう食べられましたか?」
聞き慣れた声がする。
少し低めの優しい落ち着いた声……
「え……まだ、です。」
さっきまで悪態をついていた客達が怯む。
その瞬間、俺は廊下へ向かう。
そこには俺達と同じ執事の格好をした平岩がにこやかな笑顔で彼女達に話し掛けている。
「では、当店オススメのパンケーキとロイヤルミルクティを是非とも御賞味頂きたいのですが……如何でしょう?」
校内でも指折りのイケメン(笑)からの誘いに女子達は大きく頷き、こちらに向かってくる。
お前ら、及川って騒いでたのはどうした?
呆気に取られている俺に気付いた平岩は『お前もこれくらいしてみろよ』と言わんばかりのドヤ顔を向ける。
とりあえず、負けてられねぇ。
「お嬢様方、お帰りなさいませ。」
入り口で一礼して彼女達を迎え入れた。
❁❁❁❁❁❁❁
それを契機に店内の活気が再び戻り、空席が目立っていたテーブルも午前と変わらず 満席になっていく。
「お嬢様方、お味は如何ですか?
お口に合いましたでしょうか?」
「凄く美味しい!」
「お褒めに預り、光栄です。
ありがとうございます。」
平岩は各テーブルを回りながら、笑顔で接客。
その姿に触発された他の部員達の顔に、さっきまでの動揺の色はもう無い。
そして、美味しいスイーツと接客に満足した客が不平を口にする事もなく、この後も大きなトラブルは起こらずに済んだ。
「平岩、マジで助かった!!」
店内も落ち着いた頃、バックヤードに姿を見せた平岩に岩泉が深々と頭を下げた。
「本当、それ!
あの時、どうなるかと思った……
本当に助かったよ~」
リサが平岩に抱き着きながら、肩に額を擦り付ける。
「いや……そんな大袈裟な。
自分は出来る事しかしてないから……
とりあえず、何とかなってくれて良かったよ。
それよりも二人の方が大変だったね。
お疲れ様。」
接客に疲れたのか……
さっきまでのキリッとした執事の表情は崩れ、リラックスしような笑顔で傍らにいるリサの頭を撫でる。
「それにしてもアイツ、ひょっこり戻ってきやがったら、どうしてやろう……」
及川が抜け出してから発生する岩泉の眉間のシワは更に深くなる。
「まぁ、何とかなったんだから、ここは穏便に……」
怒る岩泉を苦笑しながら、宥める平岩の度量のデカさに改めて敵わないと痛感した。
自分の事より、周りに気を遣うって……
アイツ見てたら、自分がどれだけ非力な存在だろうって思い知らさせる。
「マジでイケメンだよね……」
耳元でボソリと聞こえてきた松川の声。
振り返ると、背後でニヤリと意味有り気に笑う。
「松川、背後から囁くの止めて。
ゾクゾクするからさ。」
「え、ダメ?
でも、そう思ったでしょ?」
「まぁな。」
コイツにはバレバレって事か。
「平岩~
執事トーク、完璧だったじゃん~」
溜め息を一つ着いて、平岩達に近付く松川の後を追う。
「あ……
だってあれ考えたのって、リサと自分だから。」
「それでか……
スパダリ感ハンパねぇって思ったんだ。
ねぇ、花巻?」
意味深な笑顔でパチンとウインクする松川の発言に、
「スパダリって……」
困惑する平岩。
中学最後の試合で見た、あの時の平岩は今と変わっていない。
本人は本人でそんな自分に悩んでいるんだろうけど……
「流石、ヅカだな。」
「悔しかったら精々男を磨きな、はなたか。」
アイツらしく居られるのなら、変わらなくてもいいんじゃないかって、俺は思う。
「ちょっと!
及川くん、いつ戻ってくるのよ!」
「さっきから『すぐ戻ります』の繰り返しじゃん。」
廊下で不満を口にする及川目当ての客に事情を話すリサや岩泉が頭を下げる姿が磨りガラス越しに見える。
「マッキー、何か外 大変そうね。」
「及川逃走中とか……
今、狂犬ちゃん達が校内探し回ってるんでしょ?」
同じクラスのチケットを買ってくれていたサカモト達がチラリと廊下へ視線をやる。
「ああ。
騒がしいけど、勘弁な。」
さっきまで俺もあっちで客の対応していたけど、コイツらが来てくれたから、こうやって接客に戻る事が出来た。
「あー、いいの、いいの。
気にしてないから。」
「そうそう。
うちらは夏乃の考案したスイーツ目当てだから、及川居ようと居まいとどっちでもいい~」
「おい、そこはさ『花巻が居るから、関係ない』くらい言えよ。」
「「「あー、ナイナイ!!」」」
色気より食い気……
俺の周りの女子はリサにしろ、コイツらにしろ……こんな感じだ。
「それにしてもああいう輩が一番厄介だよね。
私らみたいに純粋にスイーツ楽しめば良いのに……」
「本当本当。
いつでも店に及川居るって思うのも、おかしな話よ。
休憩で居ないかもとか、考えなかったのかね?」
「事前に及川が接客している時間帯を聞いておくとか、しておけば良かったんだよ。
うちらみたいに店内が空く時間帯をリサーチするとか、詰めが甘い。」
確かに。
だが、人は大概 自分に都合のいい解釈をするものだ。
「ここに居ても仕方ないし、他 回ろうか。」
「そうしよう~」
また客が列から離れていく。
リサと岩泉の説得に耳を貸す事なく……
引き留める術を持たない俺はそれをただ眺める事しか出来なかった。
こんな時にアイツが居たら、どうするだろう?
ふと脳裏に浮かんだのは平岩の姿。
……今、校内を客引きで歩き回っている頃だろうか。
「お嬢様方、もうお出かけですか?
チケットをお持ちですが、スイーツはもう食べられましたか?」
聞き慣れた声がする。
少し低めの優しい落ち着いた声……
「え……まだ、です。」
さっきまで悪態をついていた客達が怯む。
その瞬間、俺は廊下へ向かう。
そこには俺達と同じ執事の格好をした平岩がにこやかな笑顔で彼女達に話し掛けている。
「では、当店オススメのパンケーキとロイヤルミルクティを是非とも御賞味頂きたいのですが……如何でしょう?」
校内でも指折りのイケメン(笑)からの誘いに女子達は大きく頷き、こちらに向かってくる。
お前ら、及川って騒いでたのはどうした?
呆気に取られている俺に気付いた平岩は『お前もこれくらいしてみろよ』と言わんばかりのドヤ顔を向ける。
とりあえず、負けてられねぇ。
「お嬢様方、お帰りなさいませ。」
入り口で一礼して彼女達を迎え入れた。
❁❁❁❁❁❁❁
それを契機に店内の活気が再び戻り、空席が目立っていたテーブルも午前と変わらず 満席になっていく。
「お嬢様方、お味は如何ですか?
お口に合いましたでしょうか?」
「凄く美味しい!」
「お褒めに預り、光栄です。
ありがとうございます。」
平岩は各テーブルを回りながら、笑顔で接客。
その姿に触発された他の部員達の顔に、さっきまでの動揺の色はもう無い。
そして、美味しいスイーツと接客に満足した客が不平を口にする事もなく、この後も大きなトラブルは起こらずに済んだ。
「平岩、マジで助かった!!」
店内も落ち着いた頃、バックヤードに姿を見せた平岩に岩泉が深々と頭を下げた。
「本当、それ!
あの時、どうなるかと思った……
本当に助かったよ~」
リサが平岩に抱き着きながら、肩に額を擦り付ける。
「いや……そんな大袈裟な。
自分は出来る事しかしてないから……
とりあえず、何とかなってくれて良かったよ。
それよりも二人の方が大変だったね。
お疲れ様。」
接客に疲れたのか……
さっきまでのキリッとした執事の表情は崩れ、リラックスしような笑顔で傍らにいるリサの頭を撫でる。
「それにしてもアイツ、ひょっこり戻ってきやがったら、どうしてやろう……」
及川が抜け出してから発生する岩泉の眉間のシワは更に深くなる。
「まぁ、何とかなったんだから、ここは穏便に……」
怒る岩泉を苦笑しながら、宥める平岩の度量のデカさに改めて敵わないと痛感した。
自分の事より、周りに気を遣うって……
アイツ見てたら、自分がどれだけ非力な存在だろうって思い知らさせる。
「マジでイケメンだよね……」
耳元でボソリと聞こえてきた松川の声。
振り返ると、背後でニヤリと意味有り気に笑う。
「松川、背後から囁くの止めて。
ゾクゾクするからさ。」
「え、ダメ?
でも、そう思ったでしょ?」
「まぁな。」
コイツにはバレバレって事か。
「平岩~
執事トーク、完璧だったじゃん~」
溜め息を一つ着いて、平岩達に近付く松川の後を追う。
「あ……
だってあれ考えたのって、リサと自分だから。」
「それでか……
スパダリ感ハンパねぇって思ったんだ。
ねぇ、花巻?」
意味深な笑顔でパチンとウインクする松川の発言に、
「スパダリって……」
困惑する平岩。
中学最後の試合で見た、あの時の平岩は今と変わっていない。
本人は本人でそんな自分に悩んでいるんだろうけど……
「流石、ヅカだな。」
「悔しかったら精々男を磨きな、はなたか。」
アイツらしく居られるのなら、変わらなくてもいいんじゃないかって、俺は思う。
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