ヅカとはなたか
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
❁❁❁❁❁❁❁
長い準備期間を経て、ようやく開催に漕ぎ着けた文化祭。
当日は曇りという天気予報だったが、
「うわっ、すげぇ雨。」
空が泣き始めてしまった。
どんよりとした雲から雨粒が狙い定めたように勢いよく降り注がれる。
校庭の模擬店にいた生徒や来場者達は一斉に雨を避ける為、校舎へ雪崩れ込む。
一体、誰の行いが悪かったのか……
そんなこと、知ったこっちゃないが。
そのお陰もあり、校舎内に開設された うちの『執事&メイドカフェ』の客入りは上々。
入り口にはお目当ての部員達に給仕してもらいたいという客の行列が出来ていたが、少し落ち着いたのか、待ち時間は30分程度。
「「キャーー、及川さんカッコいいーーー」」
「お嬢様方、大変お待たせ致しました。
レモンティとミルクティ、クッキーとカップケーキのセットをお持ちしました。」
「「美味しそう……」」
その客達の一番人気の及川は朝から出ずっぱり。
ファンの女子に囲まれて最初こそ、鼻の下を伸ばしてニヤニヤしていたが、休憩無しで接客し続ける今、顔が引きつっている。
「なぁ、もうそろそろ限界なんじゃね?
助けてほしそうな顔して、こっち見てるぞ。
休憩させてやれば?」
客が席を立った後、テーブルを片付けていた俺の背後、バックヤードから松川の声が聞こえてきた。
恐らく岩泉に話しかけているのだろう。
「あ?
放っとけ。
今日は及川のファン感謝デーだ。
気にすんな。」
いつも女子にキャーキャー騒がれたいというヤツの性質を心得ている幼なじみは非情なコメントを残し、洗い物が入ったワゴンを押して廊下へ出ていく。
「では、お嬢様方、楽しいひとときをお過ごしください。」
ファンにかっこ良く一礼し、接客を終えた及川はバックヤードに入った途端、ヨレヨレしながらこちらにやってくる。
「執事長、お疲れ。」
疲労隠せない及川の肩をポンポンと叩き、声を掛けて労ってやると、
「もー、まっつん、マッキー!!
どうして俺が助けてサイン出してんのにスルーすんのさ!」
俺の肩を軽くポカポカと叩いた後、さっきまで岩泉が腰掛けていた椅子に座り込む。
「スルーしてねぇべ。
岩泉に休憩させた方がいいんじゃね?ってさっき進言してやったさ。」
松川は次の客に持っていくグラスにミネラルウォーターを注ぎ、それを待機している矢巾の盆の上に置いていく。
「で、俺は休憩入っていいの?
っていうか、岩ちゃんは?」
「調理室に洗い物持って行った。
岩泉曰く休憩無しで本日は『及川ファン感謝デー』だと。」
「はぁ??
休憩無しっ!!
どんだけブラックなんだよ。」
松川から岩泉の発言を聞き、激怒する及川。
日頃の行いの悪さもあり、自業自得ではあるものの、少し気の毒に思えたが、仕方ない。
「及川、ご指名よ~
パンケーキとオレンジジュースね。」
そうこうしてる内に、注文を聞き終わったメイド姿のリサがバックヤードに戻ってきた。
流石 及川、一番人気。
「ちょっと、俺トイレ……」
さっきまで項垂れていた及川がノソッ立ち上がり、
「じゃ、お前ら……あとは頼むよ。」
と捨て台詞を残してバックヤードから出て行く。
「えっ、ちょっ……及川!
すぐ戻ってきてよ!
……っていうか、アイツ逃げたんじゃないよね?!
ちょっと一年、及川追って!」
リサの予感は的中。
及川を捜索しに行った一年の報告ではトイレから逃げ出したらしい。
「あの野郎……!」
「戻ってきたら、ただじゃおかねぇ!」
岩泉とリサは酷い形相で大量の客を捌きながら、接客。
お目当ての及川が居なくなったせいか、客は潮が引くように居なくなっていき、
今じゃすぐに席に案内出来るほど、閑散とした状態になっていた。
✵✵✵✵✵✵✵
「バレー部は執事&メイド喫茶やってまーす……お時間ございましたら、お立ち寄りくださーーい!」
「カッコいい執事と可愛いメイドがお出迎えしてくれまーす!」
さっきまでの激しい雨も小止みになり、私とメイド姿の二年女バレの部員と看板を持ち、チラシを配りながら校内を呼び込み巡回する。
先日、花巻に言われた言葉の影響か……
今はこの前ほど自分に課す事を止め、自分なりに文化祭を楽しもうとしている。
アイツのお陰だとは思いたくないが、少し気分は楽になった。
午前中は厨房に入り、午後からは誰もやりたがらない客引きに回っていた。
完全な裏方だけど、今年は凄く充実している。
「先輩……何だか、校内 空いてきましたね。」
「そうだね。
午後からはステージ発表が多いから、そっちに流れたかな。」
午後1時も過ぎ、第1体育館で軽音部のライブや第2体育館で演劇部の公演や吹奏楽部のコンサートが始まるせいか、校内を歩く客の数は後輩の言葉通り、少なく思えた。
恐らく喫茶の客入りも少しは落ち着いてきたのではないだろうか。
「あっ、夏乃先輩!」
遠くで自分の名が呼ばれた気がして、振り返ると厨房を任せていた女バレ二年の子がエプロン姿で駆けてくる。
何かトラブルでもあったのだろうか?
「どうした?」
「た、大変です!
及川先輩が突然 居なくなっちゃって……チケット前払いしてた一部のお客様から返金しろって……
今、リサ先輩と岩泉先輩が対応してますが、ちょっと大変な事になってしまって……」
「突然居なくなったって……校内良く探した?
トイレじゃないの?」
「探しました。
今も手分けして探してますけど、どこにも居ないんです!
それでリサ先輩が夏乃先輩にこれ渡してって……」
彼女が手にしていた紙袋とメモを手渡された。
中には衣類と注文を取る為のメモが一枚入っている。
急いで書いたのだろう……
無理矢理引きちぎられたメモに殴り書かれた内容に目を通す。
『ごめん。
及川に逃げられた。
悪いけど、これ着て すぐに戻って来て!』
袋の中身を改めると、執事セットが入っている。
文化祭始まる前にリサから『夏乃は執事の格好はさせないって、及川と約束させられた』って聞いたが……
「え、どういうこと?」
思わず、手渡してきた後輩に尋ねると、彼女は困ったような笑みを浮かべ、
「及川先輩から夏乃先輩を執事にさせない約束でしたけど、
今回の及川先輩が持ち場放棄したので、男バレ側からの協力体制を破棄と判断し……約束も無効だそうです。
岩泉先輩もそれに関しては了承済みで、及川先輩が何か反論してきたら、力ずくで抑え込むそうです。
だから、安心してください!」
何と言うことだろうか。
今年は大人しく文化祭を終える事が出来ると喜んでいたのに、こんな目に遭おうとは……
「そうと決まったら、夏乃先輩!
早く着替えて、戻ってくださいよ!!
呼び込み、私達で続けますから。」
手にしていたチラシを奪い取られ、背中をポンと叩かれる。
「えっ、拒否権って……」
「無いです!!
皆の総意です。」
「そうそう!
夏乃先輩、出番ですよ!
ほら、急いでください!!」
後輩二人に笑顔で見送りだされ、更衣室へ向かう。
もうこうなったら、やるしかないか……。
長い準備期間を経て、ようやく開催に漕ぎ着けた文化祭。
当日は曇りという天気予報だったが、
「うわっ、すげぇ雨。」
空が泣き始めてしまった。
どんよりとした雲から雨粒が狙い定めたように勢いよく降り注がれる。
校庭の模擬店にいた生徒や来場者達は一斉に雨を避ける為、校舎へ雪崩れ込む。
一体、誰の行いが悪かったのか……
そんなこと、知ったこっちゃないが。
そのお陰もあり、校舎内に開設された うちの『執事&メイドカフェ』の客入りは上々。
入り口にはお目当ての部員達に給仕してもらいたいという客の行列が出来ていたが、少し落ち着いたのか、待ち時間は30分程度。
「「キャーー、及川さんカッコいいーーー」」
「お嬢様方、大変お待たせ致しました。
レモンティとミルクティ、クッキーとカップケーキのセットをお持ちしました。」
「「美味しそう……」」
その客達の一番人気の及川は朝から出ずっぱり。
ファンの女子に囲まれて最初こそ、鼻の下を伸ばしてニヤニヤしていたが、休憩無しで接客し続ける今、顔が引きつっている。
「なぁ、もうそろそろ限界なんじゃね?
助けてほしそうな顔して、こっち見てるぞ。
休憩させてやれば?」
客が席を立った後、テーブルを片付けていた俺の背後、バックヤードから松川の声が聞こえてきた。
恐らく岩泉に話しかけているのだろう。
「あ?
放っとけ。
今日は及川のファン感謝デーだ。
気にすんな。」
いつも女子にキャーキャー騒がれたいというヤツの性質を心得ている幼なじみは非情なコメントを残し、洗い物が入ったワゴンを押して廊下へ出ていく。
「では、お嬢様方、楽しいひとときをお過ごしください。」
ファンにかっこ良く一礼し、接客を終えた及川はバックヤードに入った途端、ヨレヨレしながらこちらにやってくる。
「執事長、お疲れ。」
疲労隠せない及川の肩をポンポンと叩き、声を掛けて労ってやると、
「もー、まっつん、マッキー!!
どうして俺が助けてサイン出してんのにスルーすんのさ!」
俺の肩を軽くポカポカと叩いた後、さっきまで岩泉が腰掛けていた椅子に座り込む。
「スルーしてねぇべ。
岩泉に休憩させた方がいいんじゃね?ってさっき進言してやったさ。」
松川は次の客に持っていくグラスにミネラルウォーターを注ぎ、それを待機している矢巾の盆の上に置いていく。
「で、俺は休憩入っていいの?
っていうか、岩ちゃんは?」
「調理室に洗い物持って行った。
岩泉曰く休憩無しで本日は『及川ファン感謝デー』だと。」
「はぁ??
休憩無しっ!!
どんだけブラックなんだよ。」
松川から岩泉の発言を聞き、激怒する及川。
日頃の行いの悪さもあり、自業自得ではあるものの、少し気の毒に思えたが、仕方ない。
「及川、ご指名よ~
パンケーキとオレンジジュースね。」
そうこうしてる内に、注文を聞き終わったメイド姿のリサがバックヤードに戻ってきた。
流石 及川、一番人気。
「ちょっと、俺トイレ……」
さっきまで項垂れていた及川がノソッ立ち上がり、
「じゃ、お前ら……あとは頼むよ。」
と捨て台詞を残してバックヤードから出て行く。
「えっ、ちょっ……及川!
すぐ戻ってきてよ!
……っていうか、アイツ逃げたんじゃないよね?!
ちょっと一年、及川追って!」
リサの予感は的中。
及川を捜索しに行った一年の報告ではトイレから逃げ出したらしい。
「あの野郎……!」
「戻ってきたら、ただじゃおかねぇ!」
岩泉とリサは酷い形相で大量の客を捌きながら、接客。
お目当ての及川が居なくなったせいか、客は潮が引くように居なくなっていき、
今じゃすぐに席に案内出来るほど、閑散とした状態になっていた。
✵✵✵✵✵✵✵
「バレー部は執事&メイド喫茶やってまーす……お時間ございましたら、お立ち寄りくださーーい!」
「カッコいい執事と可愛いメイドがお出迎えしてくれまーす!」
さっきまでの激しい雨も小止みになり、私とメイド姿の二年女バレの部員と看板を持ち、チラシを配りながら校内を呼び込み巡回する。
先日、花巻に言われた言葉の影響か……
今はこの前ほど自分に課す事を止め、自分なりに文化祭を楽しもうとしている。
アイツのお陰だとは思いたくないが、少し気分は楽になった。
午前中は厨房に入り、午後からは誰もやりたがらない客引きに回っていた。
完全な裏方だけど、今年は凄く充実している。
「先輩……何だか、校内 空いてきましたね。」
「そうだね。
午後からはステージ発表が多いから、そっちに流れたかな。」
午後1時も過ぎ、第1体育館で軽音部のライブや第2体育館で演劇部の公演や吹奏楽部のコンサートが始まるせいか、校内を歩く客の数は後輩の言葉通り、少なく思えた。
恐らく喫茶の客入りも少しは落ち着いてきたのではないだろうか。
「あっ、夏乃先輩!」
遠くで自分の名が呼ばれた気がして、振り返ると厨房を任せていた女バレ二年の子がエプロン姿で駆けてくる。
何かトラブルでもあったのだろうか?
「どうした?」
「た、大変です!
及川先輩が突然 居なくなっちゃって……チケット前払いしてた一部のお客様から返金しろって……
今、リサ先輩と岩泉先輩が対応してますが、ちょっと大変な事になってしまって……」
「突然居なくなったって……校内良く探した?
トイレじゃないの?」
「探しました。
今も手分けして探してますけど、どこにも居ないんです!
それでリサ先輩が夏乃先輩にこれ渡してって……」
彼女が手にしていた紙袋とメモを手渡された。
中には衣類と注文を取る為のメモが一枚入っている。
急いで書いたのだろう……
無理矢理引きちぎられたメモに殴り書かれた内容に目を通す。
『ごめん。
及川に逃げられた。
悪いけど、これ着て すぐに戻って来て!』
袋の中身を改めると、執事セットが入っている。
文化祭始まる前にリサから『夏乃は執事の格好はさせないって、及川と約束させられた』って聞いたが……
「え、どういうこと?」
思わず、手渡してきた後輩に尋ねると、彼女は困ったような笑みを浮かべ、
「及川先輩から夏乃先輩を執事にさせない約束でしたけど、
今回の及川先輩が持ち場放棄したので、男バレ側からの協力体制を破棄と判断し……約束も無効だそうです。
岩泉先輩もそれに関しては了承済みで、及川先輩が何か反論してきたら、力ずくで抑え込むそうです。
だから、安心してください!」
何と言うことだろうか。
今年は大人しく文化祭を終える事が出来ると喜んでいたのに、こんな目に遭おうとは……
「そうと決まったら、夏乃先輩!
早く着替えて、戻ってくださいよ!!
呼び込み、私達で続けますから。」
手にしていたチラシを奪い取られ、背中をポンと叩かれる。
「えっ、拒否権って……」
「無いです!!
皆の総意です。」
「そうそう!
夏乃先輩、出番ですよ!
ほら、急いでください!!」
後輩二人に笑顔で見送りだされ、更衣室へ向かう。
もうこうなったら、やるしかないか……。