ヅカとはなたか
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✵✵✵✵✵✵✵
「リサ、大じょ……」
「だぁーめっ!
貴大、夏乃が何を言おうと駅まで送るのよ。」
エレベーターの前に立ち塞がったリサは何が嬉しいのか、満面の笑みを浮かべてパーカーを羽織ってきた花巻をエレベーターに乗せる。
「ハイハイ。」
「返事は一回!
夏乃、また明日ね~」
花巻は溜め息交じりに『閉』ボタンを押して扉を閉めた。
二人だけになった途端、エレベーターがウィンと音を立て、静かに降下していく。
身体に負荷を感じながら、ふと思う。
こんな状況になるなら、リサの家に泊めてもらえば良かった……後悔してももう遅いけど。
コイツも多分 同じ事、考えてるんだろうな……
前方に立つ花巻を一瞥した。
あと5分 回覧板を遅く持って来れば、こんな事にならなかっただろう。
本当つくづく残念なヤツだ。
仕方ない、早々に解放してやるか。
「あのさ……」
「ん?」
「リサはああ言ってたけど、下まででいいから。
ジャージ着てるし、この格好なら女には見られないし。」
コイツがあだ名する『ヅカ』を自ら認めてしまう事になるが、この状況下では致し方無い。
そう告げた瞬間、エレベーターはタイミング良く一階に到着。
閉ざされていた空間からゆっくりと解放される。
茶化してくるかと思った花巻は口を閉ざしたまま、何もなかったかの様にエレベーターホールへと降り立つ。
「えっ?
ちょっと……」
さっきの話……
聞いていなかったのだろうか?
戸惑いを隠せないこちらの状況に気付く事なく、マンションの入り口へ向かう。
「おい、何してんだよ。」
ようやく固まっているこちらの状況に気付いたのか、憮然とした表情で振り向き、
「ほら、行くぞ。」
扉が閉じないように腕で押さえ、降りてくるように促す。
「え……でも……。」
いつもの花巻なら、茶化してきて……
幼稚な言い争いになるはずなのに。
「早く来いよ。」
いつもと違う。
私服だから?
いや、違う。
何だろう……わからない。
学校で会う花巻じゃないって感じただけで、何だか落ち着かない。
その雰囲気に気圧され、エレベーターから降りると、
「お前さ……皆の事は大事にするのに、自分の扱いは雑だな。」
花巻がボソッと呟き、ゆっくりとマンションの入り口へと向かう。
「ザツ?」
突然の発言に呆然としていると、再び ヤツは振り向いた。
「無自覚か……質悪りぃな。」
「ムジカク、タチ……ワルイ?」
誰が?
疑問を思わず口にすると、
「ここんとこ お前、ずっとそんな感じじゃん。
自分の事より、リサや部員の事が優先でさ。」
花巻はそう言いながら、マンションの自動ドアを通り抜けていく。
及川からのプレッシャーが引き金になっていたのだろうけど、コイツにはそんな風に見えていたんだ……
「副主将なんだから、普通そうなるだろ?」
責任者として部員を導かなくてはならない……
花巻の後を追いながら、自分を突き動かしている理由を口にする。
「そうかもしれないけどさ、お前の場合は全力過ぎだろ。」
……全力出し過ぎ?
今まで自分が信じてやってきた事を何も知りもしない花巻に否定された、そんな気分になった。
「それのどこが悪い?」
先々 進んでいく花巻のパーカーの裾を思い切り掴む。
「何も出来なければ、後悔するだろ。」
いつも不安だった。
文化祭も皆のペースでのんびり準備していたら、間に合わなくなるんじゃないか?
しっかり準備したとしても及川が予言するように、何か起こってしまうんじゃないか?
文化祭の準備の事だけじゃない。
部活の事、学校生活の事……
何か結果が出せない事がいつも自分を不安にさせる。
全力出し切っても、為し遂げられなかったあの中学最後の試合からずっと燻っていた。
それがいつか払拭出来るのだろうかと、ひたすら前だけ見つめて進んでいた。
頑張れば、報われる……
そう信じよう。
それが気休めの言葉だと知りながらも、自分のやろうとしている事は間違ってないと信じたかったのに。
「わりぃ、別に批判とかするつもりはなかった。」
突然の事に驚いたのか、花巻が足を止めた。
「全力が悪いんじゃねぇよ。
ただ、やり方がマズいと思った。
お前、今 すげぇつまらねぇ事ない?」
突然、そう問われて考え込む。
確かに……
今の状況、正直楽しむ余裕なんてない。
花巻はこの沈黙を肯定と捉えたのか、再び 話し始める。
「最近のお前がそんな風に見えてさ。
ここんとこ、目 釣り上げて、おっかねぇ顔して……」
「そんな顔してたか?」
「してる。
あのさ、俺思うんだけど……お前一人で全部出来る訳ねぇじゃん。
黙ったままで一人でやっても、どうしてほしいかなんて、周りに伝わるわけねぇよ。」
花巻の発言に衝撃を受けた。
あまりの事に言葉もない。
「バレーも一緒で声掛けたり、まずは仲間と意志疎通する事が必要だろ?
何も言わない事が美徳、自分一人で何とか出来るとか思ってるんなら、それ……間違ってると思うよ。
周りを信じられねぇと始まらねぇだろ。」
中学最後の試合の事がふと頭を過る……
あの時、勝つことだけに執着して、自分が決めれば勝てると思い上がって、仲間を信じる事すらしてなかった。
自分が、自分がと……
今も仲間の事を想う振りして、失敗しないようにする事だけ考えていたのかもしれない。
「仲間信じて……それで失敗しても本望じゃね?」
「……」
「失敗なんてしない方がいいし、うまくいく方が良いに決まってる。
でも、自分の信じてる奴らと全力出してやったんなら、失敗してもいいじゃん。
腹立つけど、しゃーねぇなって思えるじゃん。
今のお前を支えようと着いて来てくれる仲間いるんだし、お前がソイツら信じなくて、どうすんだ?」
自分なら何とか出来るなんて……
思い上がりも甚だしい。
花巻に言われるまで、気付かないなんて。
どうして、こんな大切な事に気付かないんだろう。
みんな、いつも傍で一緒に頑張ってくれているのに。
人に言われて、今更気付くなんて情けない。
「良い時も悪い時も一緒になって頑張る為の仲間だろ?
運命共同体なんだから、お前の考えてる事をぶちまければいいだろ。」
それを耳にした瞬間、視界がぼやけていくのに気付き、慌てて俯くと花巻の背中に額がぶつかる。
どうしよう……
恥ずかし過ぎて身動き出来ない。
「……ど、した?」
花巻も予想外の展開に動揺しているのか、声が上擦っている。
「あのさ……少しだけ……」
こうなったら、自棄だ。
「背中、貸してくれ。」
「リサ、大じょ……」
「だぁーめっ!
貴大、夏乃が何を言おうと駅まで送るのよ。」
エレベーターの前に立ち塞がったリサは何が嬉しいのか、満面の笑みを浮かべてパーカーを羽織ってきた花巻をエレベーターに乗せる。
「ハイハイ。」
「返事は一回!
夏乃、また明日ね~」
花巻は溜め息交じりに『閉』ボタンを押して扉を閉めた。
二人だけになった途端、エレベーターがウィンと音を立て、静かに降下していく。
身体に負荷を感じながら、ふと思う。
こんな状況になるなら、リサの家に泊めてもらえば良かった……後悔してももう遅いけど。
コイツも多分 同じ事、考えてるんだろうな……
前方に立つ花巻を一瞥した。
あと5分 回覧板を遅く持って来れば、こんな事にならなかっただろう。
本当つくづく残念なヤツだ。
仕方ない、早々に解放してやるか。
「あのさ……」
「ん?」
「リサはああ言ってたけど、下まででいいから。
ジャージ着てるし、この格好なら女には見られないし。」
コイツがあだ名する『ヅカ』を自ら認めてしまう事になるが、この状況下では致し方無い。
そう告げた瞬間、エレベーターはタイミング良く一階に到着。
閉ざされていた空間からゆっくりと解放される。
茶化してくるかと思った花巻は口を閉ざしたまま、何もなかったかの様にエレベーターホールへと降り立つ。
「えっ?
ちょっと……」
さっきの話……
聞いていなかったのだろうか?
戸惑いを隠せないこちらの状況に気付く事なく、マンションの入り口へ向かう。
「おい、何してんだよ。」
ようやく固まっているこちらの状況に気付いたのか、憮然とした表情で振り向き、
「ほら、行くぞ。」
扉が閉じないように腕で押さえ、降りてくるように促す。
「え……でも……。」
いつもの花巻なら、茶化してきて……
幼稚な言い争いになるはずなのに。
「早く来いよ。」
いつもと違う。
私服だから?
いや、違う。
何だろう……わからない。
学校で会う花巻じゃないって感じただけで、何だか落ち着かない。
その雰囲気に気圧され、エレベーターから降りると、
「お前さ……皆の事は大事にするのに、自分の扱いは雑だな。」
花巻がボソッと呟き、ゆっくりとマンションの入り口へと向かう。
「ザツ?」
突然の発言に呆然としていると、再び ヤツは振り向いた。
「無自覚か……質悪りぃな。」
「ムジカク、タチ……ワルイ?」
誰が?
疑問を思わず口にすると、
「ここんとこ お前、ずっとそんな感じじゃん。
自分の事より、リサや部員の事が優先でさ。」
花巻はそう言いながら、マンションの自動ドアを通り抜けていく。
及川からのプレッシャーが引き金になっていたのだろうけど、コイツにはそんな風に見えていたんだ……
「副主将なんだから、普通そうなるだろ?」
責任者として部員を導かなくてはならない……
花巻の後を追いながら、自分を突き動かしている理由を口にする。
「そうかもしれないけどさ、お前の場合は全力過ぎだろ。」
……全力出し過ぎ?
今まで自分が信じてやってきた事を何も知りもしない花巻に否定された、そんな気分になった。
「それのどこが悪い?」
先々 進んでいく花巻のパーカーの裾を思い切り掴む。
「何も出来なければ、後悔するだろ。」
いつも不安だった。
文化祭も皆のペースでのんびり準備していたら、間に合わなくなるんじゃないか?
しっかり準備したとしても及川が予言するように、何か起こってしまうんじゃないか?
文化祭の準備の事だけじゃない。
部活の事、学校生活の事……
何か結果が出せない事がいつも自分を不安にさせる。
全力出し切っても、為し遂げられなかったあの中学最後の試合からずっと燻っていた。
それがいつか払拭出来るのだろうかと、ひたすら前だけ見つめて進んでいた。
頑張れば、報われる……
そう信じよう。
それが気休めの言葉だと知りながらも、自分のやろうとしている事は間違ってないと信じたかったのに。
「わりぃ、別に批判とかするつもりはなかった。」
突然の事に驚いたのか、花巻が足を止めた。
「全力が悪いんじゃねぇよ。
ただ、やり方がマズいと思った。
お前、今 すげぇつまらねぇ事ない?」
突然、そう問われて考え込む。
確かに……
今の状況、正直楽しむ余裕なんてない。
花巻はこの沈黙を肯定と捉えたのか、再び 話し始める。
「最近のお前がそんな風に見えてさ。
ここんとこ、目 釣り上げて、おっかねぇ顔して……」
「そんな顔してたか?」
「してる。
あのさ、俺思うんだけど……お前一人で全部出来る訳ねぇじゃん。
黙ったままで一人でやっても、どうしてほしいかなんて、周りに伝わるわけねぇよ。」
花巻の発言に衝撃を受けた。
あまりの事に言葉もない。
「バレーも一緒で声掛けたり、まずは仲間と意志疎通する事が必要だろ?
何も言わない事が美徳、自分一人で何とか出来るとか思ってるんなら、それ……間違ってると思うよ。
周りを信じられねぇと始まらねぇだろ。」
中学最後の試合の事がふと頭を過る……
あの時、勝つことだけに執着して、自分が決めれば勝てると思い上がって、仲間を信じる事すらしてなかった。
自分が、自分がと……
今も仲間の事を想う振りして、失敗しないようにする事だけ考えていたのかもしれない。
「仲間信じて……それで失敗しても本望じゃね?」
「……」
「失敗なんてしない方がいいし、うまくいく方が良いに決まってる。
でも、自分の信じてる奴らと全力出してやったんなら、失敗してもいいじゃん。
腹立つけど、しゃーねぇなって思えるじゃん。
今のお前を支えようと着いて来てくれる仲間いるんだし、お前がソイツら信じなくて、どうすんだ?」
自分なら何とか出来るなんて……
思い上がりも甚だしい。
花巻に言われるまで、気付かないなんて。
どうして、こんな大切な事に気付かないんだろう。
みんな、いつも傍で一緒に頑張ってくれているのに。
人に言われて、今更気付くなんて情けない。
「良い時も悪い時も一緒になって頑張る為の仲間だろ?
運命共同体なんだから、お前の考えてる事をぶちまければいいだろ。」
それを耳にした瞬間、視界がぼやけていくのに気付き、慌てて俯くと花巻の背中に額がぶつかる。
どうしよう……
恥ずかし過ぎて身動き出来ない。
「……ど、した?」
花巻も予想外の展開に動揺しているのか、声が上擦っている。
「あのさ……少しだけ……」
こうなったら、自棄だ。
「背中、貸してくれ。」