ヅカとはなたか
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どうなることかと見守っていたが、助け船を出す間もなく解決してしまった。
「夏乃、ありがとう。」
「気にしないで。
リサ、向こうでマネが呼んでた。
ここは任せて、行ってもらっていい?」
「わかった。
じゃ、お願いね!」
最近、よく見る光景。
リサの周りに平岩が控え、さっきのように然り気無く手を貸している。
その姿はまるで……
「……すげぇ、スパダリ感。」
耳元から心の中で思っていた言葉が聞こえ、振り返るとニッと微笑む松川が視界に入って……
「そう思わねぇ?」
いや、俺の心の中にまでズカズカと入り込む。
土足禁止って言葉を知ってても踏み込んでくるような……松川にはそんな所がある。
「言われてみたらな。 」
確かに、恐ろしい程の包容力……
それは時に羨ましく思える。
「平岩先輩!」
俺達の視線の先、女バレの後輩達が不安そうな表情で平岩に近付く。
「用意したタイとベストが足りないんです!
どうしましょう……」
その瞬間、裏方に回ると言っていた何人かのヤツらが突然「執事になりたい!」と騒ぎ出していた事を思い出した。
制止役であるはずの及川が、何故か「そんなにやりたければ、やればいい」と唆し……
衣装の小道具を担当する女バレにとって、想定外の出来事だ。
「縫うにしても、生地がもう無くって……」
「どれくらい足りない?
数が多いようなら、別シフトの人にタイやベストを遣い回してもらえるよう頼んでみたらいい。」
「あ!
そうですね。」
「それなら、上手く回ります。
じゃ、私達 頼んできますね。」
平岩から指示を出された彼女達はテキパキ動く。
「平岩先輩!
ちょっと……こっち、いいですか?」
また向こうで何かあったのだろう。
「はい。
今、行く!」
そう答えると、声を掛けた後輩の元へと平岩の姿は消えていく。
「ここんとこ、あんな感じだろ?
それも黒木だけじゃなくて、さっきみたく女バレの子に対する気の遣い方、そつが無いっていうか……」
瞬時に判断、的確に指示する平岩の横顔を思い出し、俺なんか敵わねぇと思い知らされる。
「おまけに黒木より目立たぬよう、地味にバックアップしてるだろ?
あのスパダリ感、ハンパねぇ。
あれを愛と言わずして何と言う?」
「……愛か。」
松川の発言を聞きながら、ふと違和感を覚える。
「そう言えば、シュークリーム落選だったな……残念。
平岩の愛は全て黒木と女バレに向けられてさ。」
「お前、まだ言ってんの?
懲りねぇな。」
「塩キャラメルも落選だし、国見も振られたな。」
「松川、しつこい。」
その時、ふと思った。
平岩のそれは……愛なのだろうか、と。
傍目では松川が言う通りに思えるが、何だか『重く』感じてしまう。
それはまるで過保護な親のようにも思えた。
❁❁❁❁❁❁❁
「ちょっと、貴大。」
夕食後、リビングのソファにもたれ掛かりながら、バラエティー番組を見てた俺の視界に青いファイルが突き付けられる。
ファイルを差し出す母親と目があった瞬間、
「回覧板、お隣に持って行って。」
お前に任せた!といわんばかりにパッと手を放し、ファイルは重力に従うように俺の膝の上にストンと落ちてきた。
長年使っているマンションの回覧板は可哀想なくらいヨレヨレだっていうのに、酷い扱いしやがる。
「さっき、お父さんのビールを少し分けてもらって飲んじゃったら、何だかドッと疲れちゃって……頼むわよ!」
アルコールが入ったせいか、気だるいという身勝手な理由を振りかざして俺の隣に陣取る。
こうなったら、自分で行く気はないらしい。
「俺ぇ?」
Tシャツにスエットのズボンといういわゆる部屋着で、外に出歩く格好じゃねぇのに。
「アンタ以外に誰が居んのよ。
隣に行って渡すだけでしょ。
誰もアンタの格好なんて、いちいちチェックなんてしないわよ。」
ま、確かにそうか。
見られても幼馴染のリサだ。
今更 気にする必要もない。
「わーったよ。」
……しゃあねぇ、行くか。
青いファイル片手にソファから立ち上がり、リサの家に向かう。
チャイムを鳴らしてしばらく待つと、制服姿のリサが玄関のドアを開く。
「あ、貴大。」
コイツ、まだ着替えてないのか……
そんな事をぼんやり考えながら、
「これ、おばさんに渡しといて。」
「あ、うん。」
手にしていたファイルを差し出した途端、大きくドアが開かれ、リサの背後からジャージ姿の平岩が現れた。
「ねぇ、貴大。
夏乃を送ってほしいんだけど。」
✵✵✵✵✵✵✵
キューーーーッ……
ハートの型紙にピンクのマーカーで縁取り終え、リサに手渡す。
「これ、ラスト。」
「ほいきた。」
そう呟くとリサは慣れた手つきでそれを裏返し、ハートの中心に置いた安全ピンをテープで止める。
「……終わった。」
ようやくメイド&裏方の女バレ全員分の名札が完成した途端、二人して机に突っ伏した。
「お疲れ様!」
「お疲れ~」
『いつも頑張ってくれる皆の為に何かしたい!』
リサたっての希望により、二人で出し合ったアイデア。
部員達の名前を愛らしい丸文字で書き、キラキラのスパンコールやラメで飾ったハート型の名札を文化祭当日に手渡す事になった。
放課後の練習終わってから、リサの家で二人して部員に内緒でせっせと作業していたけど、それも今日で終わりを迎える。
ふと時計を見ると、21時を過ぎていた。
「ねぇ……夏乃、今日泊まって行けば?
今から帰っても遅いし、うちは全然大丈夫だから。」
今の疲れた状態に魅惑的な誘いだが、
「ありがとう。
でも、家に帰るよ。
明日の授業の教科書とノート置いてるし、親も帰ってくるって思ってるし。」
ここの所、遅い帰宅時間に父があまり良い顔をしていないと母から聞いている事もあり、荷物をまとめる。
「残念~
夏乃と語り合いたかったのに!」
「ま、それはまたの機会に。」
長らく座っていたせいか、ゆっくりと立ち上がると関節からパキパキ音がなる。
あ……早く帰って、横になりたい。
そう思いながら、リサの部屋を出る。
「今日、親が残業じゃなかったら、車出してもらうのに。
ごめんね。」
リサの家は両親が共働きで、時折 今日のように帰りが遅くなる事もあるらしく、一人っ子のリサはこうして一人過ごす事も少なくないそうだ。
そんな話を聞くと、兄弟のいる自分は恵まれているなと改めて思う。
「リサの家、駅からすぐだし、大丈夫だよ。」
今から出れば、22時には自宅に到着するな……
そんな事をぼんやりと考えていると、玄関からチャイムが鳴る。
「もしかしたら、親かも。
ちょっと待ってて!」
リサはそう言うと、急いで玄関に向かう。
自分もその後を追うように歩を進めながら、鞄に入れたスマホを取り出し、母の携帯に『これから帰る』とメールする。
玄関先ではドアを開く音がし、リサと誰かの話し声が聞こえてくる。
ドアの開き具合から、どうやら親御さんではないのはわかった。
宅配業者だろうか?
こんな時間にそれはないか。
じゃ、変質者?
思わず、足早にリサの傍へ向かうと、
「ねぇ、貴大。
夏乃を送ってほしいんだけど。」
ドアが大きく開かれ、Tシャツとスエットズボン姿の花巻が姿を現す。
「「はあぁっ??」」
「夏乃、ありがとう。」
「気にしないで。
リサ、向こうでマネが呼んでた。
ここは任せて、行ってもらっていい?」
「わかった。
じゃ、お願いね!」
最近、よく見る光景。
リサの周りに平岩が控え、さっきのように然り気無く手を貸している。
その姿はまるで……
「……すげぇ、スパダリ感。」
耳元から心の中で思っていた言葉が聞こえ、振り返るとニッと微笑む松川が視界に入って……
「そう思わねぇ?」
いや、俺の心の中にまでズカズカと入り込む。
土足禁止って言葉を知ってても踏み込んでくるような……松川にはそんな所がある。
「言われてみたらな。 」
確かに、恐ろしい程の包容力……
それは時に羨ましく思える。
「平岩先輩!」
俺達の視線の先、女バレの後輩達が不安そうな表情で平岩に近付く。
「用意したタイとベストが足りないんです!
どうしましょう……」
その瞬間、裏方に回ると言っていた何人かのヤツらが突然「執事になりたい!」と騒ぎ出していた事を思い出した。
制止役であるはずの及川が、何故か「そんなにやりたければ、やればいい」と唆し……
衣装の小道具を担当する女バレにとって、想定外の出来事だ。
「縫うにしても、生地がもう無くって……」
「どれくらい足りない?
数が多いようなら、別シフトの人にタイやベストを遣い回してもらえるよう頼んでみたらいい。」
「あ!
そうですね。」
「それなら、上手く回ります。
じゃ、私達 頼んできますね。」
平岩から指示を出された彼女達はテキパキ動く。
「平岩先輩!
ちょっと……こっち、いいですか?」
また向こうで何かあったのだろう。
「はい。
今、行く!」
そう答えると、声を掛けた後輩の元へと平岩の姿は消えていく。
「ここんとこ、あんな感じだろ?
それも黒木だけじゃなくて、さっきみたく女バレの子に対する気の遣い方、そつが無いっていうか……」
瞬時に判断、的確に指示する平岩の横顔を思い出し、俺なんか敵わねぇと思い知らされる。
「おまけに黒木より目立たぬよう、地味にバックアップしてるだろ?
あのスパダリ感、ハンパねぇ。
あれを愛と言わずして何と言う?」
「……愛か。」
松川の発言を聞きながら、ふと違和感を覚える。
「そう言えば、シュークリーム落選だったな……残念。
平岩の愛は全て黒木と女バレに向けられてさ。」
「お前、まだ言ってんの?
懲りねぇな。」
「塩キャラメルも落選だし、国見も振られたな。」
「松川、しつこい。」
その時、ふと思った。
平岩のそれは……愛なのだろうか、と。
傍目では松川が言う通りに思えるが、何だか『重く』感じてしまう。
それはまるで過保護な親のようにも思えた。
❁❁❁❁❁❁❁
「ちょっと、貴大。」
夕食後、リビングのソファにもたれ掛かりながら、バラエティー番組を見てた俺の視界に青いファイルが突き付けられる。
ファイルを差し出す母親と目があった瞬間、
「回覧板、お隣に持って行って。」
お前に任せた!といわんばかりにパッと手を放し、ファイルは重力に従うように俺の膝の上にストンと落ちてきた。
長年使っているマンションの回覧板は可哀想なくらいヨレヨレだっていうのに、酷い扱いしやがる。
「さっき、お父さんのビールを少し分けてもらって飲んじゃったら、何だかドッと疲れちゃって……頼むわよ!」
アルコールが入ったせいか、気だるいという身勝手な理由を振りかざして俺の隣に陣取る。
こうなったら、自分で行く気はないらしい。
「俺ぇ?」
Tシャツにスエットのズボンといういわゆる部屋着で、外に出歩く格好じゃねぇのに。
「アンタ以外に誰が居んのよ。
隣に行って渡すだけでしょ。
誰もアンタの格好なんて、いちいちチェックなんてしないわよ。」
ま、確かにそうか。
見られても幼馴染のリサだ。
今更 気にする必要もない。
「わーったよ。」
……しゃあねぇ、行くか。
青いファイル片手にソファから立ち上がり、リサの家に向かう。
チャイムを鳴らしてしばらく待つと、制服姿のリサが玄関のドアを開く。
「あ、貴大。」
コイツ、まだ着替えてないのか……
そんな事をぼんやり考えながら、
「これ、おばさんに渡しといて。」
「あ、うん。」
手にしていたファイルを差し出した途端、大きくドアが開かれ、リサの背後からジャージ姿の平岩が現れた。
「ねぇ、貴大。
夏乃を送ってほしいんだけど。」
✵✵✵✵✵✵✵
キューーーーッ……
ハートの型紙にピンクのマーカーで縁取り終え、リサに手渡す。
「これ、ラスト。」
「ほいきた。」
そう呟くとリサは慣れた手つきでそれを裏返し、ハートの中心に置いた安全ピンをテープで止める。
「……終わった。」
ようやくメイド&裏方の女バレ全員分の名札が完成した途端、二人して机に突っ伏した。
「お疲れ様!」
「お疲れ~」
『いつも頑張ってくれる皆の為に何かしたい!』
リサたっての希望により、二人で出し合ったアイデア。
部員達の名前を愛らしい丸文字で書き、キラキラのスパンコールやラメで飾ったハート型の名札を文化祭当日に手渡す事になった。
放課後の練習終わってから、リサの家で二人して部員に内緒でせっせと作業していたけど、それも今日で終わりを迎える。
ふと時計を見ると、21時を過ぎていた。
「ねぇ……夏乃、今日泊まって行けば?
今から帰っても遅いし、うちは全然大丈夫だから。」
今の疲れた状態に魅惑的な誘いだが、
「ありがとう。
でも、家に帰るよ。
明日の授業の教科書とノート置いてるし、親も帰ってくるって思ってるし。」
ここの所、遅い帰宅時間に父があまり良い顔をしていないと母から聞いている事もあり、荷物をまとめる。
「残念~
夏乃と語り合いたかったのに!」
「ま、それはまたの機会に。」
長らく座っていたせいか、ゆっくりと立ち上がると関節からパキパキ音がなる。
あ……早く帰って、横になりたい。
そう思いながら、リサの部屋を出る。
「今日、親が残業じゃなかったら、車出してもらうのに。
ごめんね。」
リサの家は両親が共働きで、時折 今日のように帰りが遅くなる事もあるらしく、一人っ子のリサはこうして一人過ごす事も少なくないそうだ。
そんな話を聞くと、兄弟のいる自分は恵まれているなと改めて思う。
「リサの家、駅からすぐだし、大丈夫だよ。」
今から出れば、22時には自宅に到着するな……
そんな事をぼんやりと考えていると、玄関からチャイムが鳴る。
「もしかしたら、親かも。
ちょっと待ってて!」
リサはそう言うと、急いで玄関に向かう。
自分もその後を追うように歩を進めながら、鞄に入れたスマホを取り出し、母の携帯に『これから帰る』とメールする。
玄関先ではドアを開く音がし、リサと誰かの話し声が聞こえてくる。
ドアの開き具合から、どうやら親御さんではないのはわかった。
宅配業者だろうか?
こんな時間にそれはないか。
じゃ、変質者?
思わず、足早にリサの傍へ向かうと、
「ねぇ、貴大。
夏乃を送ってほしいんだけど。」
ドアが大きく開かれ、Tシャツとスエットズボン姿の花巻が姿を現す。
「「はあぁっ??」」