ヅカとはなたか
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✵✵✵✵✵✵✵
「ダメだね。」
及川はため息混じりにリサと一緒になって、練りに練ったメニュー表を机の上にそっと置く。
こうなる事は何となく想像していたけど、実際 そうなるとやっぱり凹む。
「黒木も平岩も実行委員会から出された食品取扱説明についてのプリント読んだ?」
「勿論、読んだわよ!」
呆れた表情の及川に食って掛かるリサは直ぐ様 噛み付くように言い返す。
「じゃ、何でこのメニューになんのさ。
生物……特にカスタードクリームや生クリームとか厳禁って書いてあったでしょ?
黒木、お前は俺らの模擬店で食中毒出したい訳?」
「えっ?
ちょっと待って!」
クッキーやカップケーキやパンケーキをメインにしてるはずなのに!
当初作っていた生クリームやフルーツ盛りだくさんのパフェやシュークリームはメニューは除外したはず……
リサと二人、放り出されたメニュー表を慌てて覗き込む。
「リサ、これ……」
「あ!」
そこには昨日 リサが捨てておくと言っていたメニュー表が何故か置かれている。
多分、リサが正規のメニュー表と誤って、及川に渡してしまったのだろう。
「ごめん、及川っ!
メニュー、渡し間違えた!
教室に取ってくるから、少し待ってて。」
「黒木!
ちょっと、勘弁してよ~
俺も暇じゃないんだからさ。」
リサが居なくなった女バレの部室に静寂が訪れ、再び 及川がため息をつく。
及川が呆れるのも当然。
除外されるはずのメニューが入っていたのだから、あんな風に嫌味を言われても仕方ない。
「ねぇ、平岩。
黒木がケアレスミス起こし易いの知ってんなら、事前にチェックしてやりなよ。
何の為の副主将なんだよ。」
確かに。
リサは昔からそういう所があった。
おまけにここの所、忙しくて いろんな事を見落としそうな事は薄々気付いていたのに……
それを及川に指摘され、何だか情けなくなって 唇を噛む。
「また、始まった。
お前は都合悪くなったら、黙りだよね。
こんな状態でお前ら 女バレに裏方任せられんの?」
追い討ちをかけるように、吐き捨てるような口調で及川は呟く。
自分の事を言われるのは仕方ないし、彼の棘のある物言いには慣れているつもりだった。
だけど……
「もう……それ以上、止めて。」
「はぁっ?!」
及川は怪訝な表情でこちらを見ている。
更に呆れさせてしまったようだ。
「その発言。
こうやって、自分が言われるのは構わない。
でも、リサや女バレのみんなの前ではやめてほしい。
始まる前から、みんなのモチベーション落としても良い結果なんか出せないから。」
一瞬にして頬が熱くなり、高ぶる気持ちを抑えるように震える両手を力一杯握り締めた。
「今までいろいろあったし、そう簡単に女バレを信用出来ないだろうけど、もう少し……寛大な目で見てくれない?」
みんな 日頃、口では及川の事を悪く言うが、何だかんだ言いながらもヤツの存在は意識している。
そんな人間から自分達の事を否定されたら、文化祭に向けた士気が急激に下がってしまう。
「わかった。
お前がそこまで言うなら、黒木や女バレの子の前では慎むことにするよ。」
珍しく引き下がった及川に驚き、
「ありがとう……」
拍子抜けしてしまう。
「だけど、俺の発言くらいで モチベーションが下がるんじゃないかって懸念したり、ミスを庇ってやる事がお前の仕事じゃないよ。
そんなの優しさなんかじゃないし、それが今の女バレの為になるとは到底思えない。
それぐらい、俺なんかに言われなくてもわかるよね?」
確かにその通りだ。
過ちをその場で正さねば、再び繰り返す。
そして、後々手遅れになり兼ねない。
仲間を庇って傷付けない事が優しさではない事くらい……
「……わかってる。」
✵✵✵✵✵✵✵
「メニュー、何とかなって良かったぁ!」
及川からの承諾を得た事に満足げに微笑むリサはジャージを羽織り、ロッカーの扉を閉める。
「アイツの事だから、もっと ねちねちどうのこうのといちゃもん着けてくるって思ったのに。
やけに大人しかったと思わない?」
あれから、リサが持って来たメニューを確認した及川は必要最低限の指摘のみ行うと、男バレが待つ体育館へと向かった。
出ていく前に交わした視線は明らかに『これは貸しだから』といわんばかりの笑みを浮かべて。
自分がみんなを支えなきゃ……
しっかりしなきゃ。
「……ねぇ、夏乃。」
突然、リサの顔が視界に入る。
「あ、うん。」
「大丈夫?
何か、顔色悪いけど……」
「大丈夫。
ちょっと疲れただけ。」
こういう時のリサは察しが良い。
及川とのやり取りを悟られないようにしないと。
❁❁❁❁❁❁❁
「まだベスト貰ってない人、こっちにありますよ!」
文化祭まであと一週間。
放課後、練習前に空き教室に集合し、衣装合わせが始まった。
執事に扮して、給仕をするのは2、3年中心の希望者。
俺は裏方で良かったのだが、及川が「レギュラーは全員執事やるよっ!!」と許してくれず。
エセ執事となる事に……
今回の文化祭ではどれだけ来客があるか、試算しているらしく執事として給仕する人数は足りたようで、
金田一・国見以外の1年や給仕を希望しなかった残りの部員は裏方の会場設営に回る。
「ちょっ、これでいいの?
何か、息苦しいんだけど……」
矢巾が蝶ネクタイを着けながら、首回りを調節している。
「あ、待って。
捻れてる!」
その様子を見つめていた渡が甲斐甲斐しく歪みを直す。
「さんきゅー。」
執事&メイド喫茶と決定した直後、『執事なんか、やってらんねぇ……』と言っていたヤツらも心なしか嬉しそうだ。
今回、文化祭で執事喫茶をするが、その衣装は本格的な燕尾服ではない。
何十着、それもガタイの良い男子高校生の衣装なんて 用意出来るはずもなく、
各自が自宅から親や兄弟のスーツのスラックスとYシャツを持参。
首元には女バレの1、2年の子達がミシンで作ってくれた濃紺の蝶ネクタイ、黒のベストを羽織って白い手袋を着用する。
皆、それぞれ持ち寄った衣装に身にまとい、本番さながらの執事スタイルになる。
「このベスト、肩回りが少しきついな。
黒木、これよりでかいのあるか?」
岩泉が窮屈そうに腕をぐるぐる回しながら、リサに声を掛ける。
「あ……それが一番大きいサイズなんだけど。」
「えっ、まじか……」
「とりあえず給仕するだけなんだから、少しくらい我慢出来ない?」
「ん……何だか具合悪りぃんだよな。」
二人がそんなやり取りをしていると、背後から……
「岩泉、明日 うちの父のベスト持ってくるから、試してもらえる?
父はかなり恰幅がいいから、岩泉が羽織っても大丈夫なくらい余裕あると思う。」
然り気無く平岩が近付き、岩泉に声を掛ける。
「 夏乃パパ、かなり横にでっかいもんね。
あれなら、岩泉も余裕だね。」
「でも、今のじゃ大き過ぎるから、若い時の探してくるから。」
「悪い。
じゃ、頼むな。」
「任せて。」
「ダメだね。」
及川はため息混じりにリサと一緒になって、練りに練ったメニュー表を机の上にそっと置く。
こうなる事は何となく想像していたけど、実際 そうなるとやっぱり凹む。
「黒木も平岩も実行委員会から出された食品取扱説明についてのプリント読んだ?」
「勿論、読んだわよ!」
呆れた表情の及川に食って掛かるリサは直ぐ様 噛み付くように言い返す。
「じゃ、何でこのメニューになんのさ。
生物……特にカスタードクリームや生クリームとか厳禁って書いてあったでしょ?
黒木、お前は俺らの模擬店で食中毒出したい訳?」
「えっ?
ちょっと待って!」
クッキーやカップケーキやパンケーキをメインにしてるはずなのに!
当初作っていた生クリームやフルーツ盛りだくさんのパフェやシュークリームはメニューは除外したはず……
リサと二人、放り出されたメニュー表を慌てて覗き込む。
「リサ、これ……」
「あ!」
そこには昨日 リサが捨てておくと言っていたメニュー表が何故か置かれている。
多分、リサが正規のメニュー表と誤って、及川に渡してしまったのだろう。
「ごめん、及川っ!
メニュー、渡し間違えた!
教室に取ってくるから、少し待ってて。」
「黒木!
ちょっと、勘弁してよ~
俺も暇じゃないんだからさ。」
リサが居なくなった女バレの部室に静寂が訪れ、再び 及川がため息をつく。
及川が呆れるのも当然。
除外されるはずのメニューが入っていたのだから、あんな風に嫌味を言われても仕方ない。
「ねぇ、平岩。
黒木がケアレスミス起こし易いの知ってんなら、事前にチェックしてやりなよ。
何の為の副主将なんだよ。」
確かに。
リサは昔からそういう所があった。
おまけにここの所、忙しくて いろんな事を見落としそうな事は薄々気付いていたのに……
それを及川に指摘され、何だか情けなくなって 唇を噛む。
「また、始まった。
お前は都合悪くなったら、黙りだよね。
こんな状態でお前ら 女バレに裏方任せられんの?」
追い討ちをかけるように、吐き捨てるような口調で及川は呟く。
自分の事を言われるのは仕方ないし、彼の棘のある物言いには慣れているつもりだった。
だけど……
「もう……それ以上、止めて。」
「はぁっ?!」
及川は怪訝な表情でこちらを見ている。
更に呆れさせてしまったようだ。
「その発言。
こうやって、自分が言われるのは構わない。
でも、リサや女バレのみんなの前ではやめてほしい。
始まる前から、みんなのモチベーション落としても良い結果なんか出せないから。」
一瞬にして頬が熱くなり、高ぶる気持ちを抑えるように震える両手を力一杯握り締めた。
「今までいろいろあったし、そう簡単に女バレを信用出来ないだろうけど、もう少し……寛大な目で見てくれない?」
みんな 日頃、口では及川の事を悪く言うが、何だかんだ言いながらもヤツの存在は意識している。
そんな人間から自分達の事を否定されたら、文化祭に向けた士気が急激に下がってしまう。
「わかった。
お前がそこまで言うなら、黒木や女バレの子の前では慎むことにするよ。」
珍しく引き下がった及川に驚き、
「ありがとう……」
拍子抜けしてしまう。
「だけど、俺の発言くらいで モチベーションが下がるんじゃないかって懸念したり、ミスを庇ってやる事がお前の仕事じゃないよ。
そんなの優しさなんかじゃないし、それが今の女バレの為になるとは到底思えない。
それぐらい、俺なんかに言われなくてもわかるよね?」
確かにその通りだ。
過ちをその場で正さねば、再び繰り返す。
そして、後々手遅れになり兼ねない。
仲間を庇って傷付けない事が優しさではない事くらい……
「……わかってる。」
✵✵✵✵✵✵✵
「メニュー、何とかなって良かったぁ!」
及川からの承諾を得た事に満足げに微笑むリサはジャージを羽織り、ロッカーの扉を閉める。
「アイツの事だから、もっと ねちねちどうのこうのといちゃもん着けてくるって思ったのに。
やけに大人しかったと思わない?」
あれから、リサが持って来たメニューを確認した及川は必要最低限の指摘のみ行うと、男バレが待つ体育館へと向かった。
出ていく前に交わした視線は明らかに『これは貸しだから』といわんばかりの笑みを浮かべて。
自分がみんなを支えなきゃ……
しっかりしなきゃ。
「……ねぇ、夏乃。」
突然、リサの顔が視界に入る。
「あ、うん。」
「大丈夫?
何か、顔色悪いけど……」
「大丈夫。
ちょっと疲れただけ。」
こういう時のリサは察しが良い。
及川とのやり取りを悟られないようにしないと。
❁❁❁❁❁❁❁
「まだベスト貰ってない人、こっちにありますよ!」
文化祭まであと一週間。
放課後、練習前に空き教室に集合し、衣装合わせが始まった。
執事に扮して、給仕をするのは2、3年中心の希望者。
俺は裏方で良かったのだが、及川が「レギュラーは全員執事やるよっ!!」と許してくれず。
エセ執事となる事に……
今回の文化祭ではどれだけ来客があるか、試算しているらしく執事として給仕する人数は足りたようで、
金田一・国見以外の1年や給仕を希望しなかった残りの部員は裏方の会場設営に回る。
「ちょっ、これでいいの?
何か、息苦しいんだけど……」
矢巾が蝶ネクタイを着けながら、首回りを調節している。
「あ、待って。
捻れてる!」
その様子を見つめていた渡が甲斐甲斐しく歪みを直す。
「さんきゅー。」
執事&メイド喫茶と決定した直後、『執事なんか、やってらんねぇ……』と言っていたヤツらも心なしか嬉しそうだ。
今回、文化祭で執事喫茶をするが、その衣装は本格的な燕尾服ではない。
何十着、それもガタイの良い男子高校生の衣装なんて 用意出来るはずもなく、
各自が自宅から親や兄弟のスーツのスラックスとYシャツを持参。
首元には女バレの1、2年の子達がミシンで作ってくれた濃紺の蝶ネクタイ、黒のベストを羽織って白い手袋を着用する。
皆、それぞれ持ち寄った衣装に身にまとい、本番さながらの執事スタイルになる。
「このベスト、肩回りが少しきついな。
黒木、これよりでかいのあるか?」
岩泉が窮屈そうに腕をぐるぐる回しながら、リサに声を掛ける。
「あ……それが一番大きいサイズなんだけど。」
「えっ、まじか……」
「とりあえず給仕するだけなんだから、少しくらい我慢出来ない?」
「ん……何だか具合悪りぃんだよな。」
二人がそんなやり取りをしていると、背後から……
「岩泉、明日 うちの父のベスト持ってくるから、試してもらえる?
父はかなり恰幅がいいから、岩泉が羽織っても大丈夫なくらい余裕あると思う。」
然り気無く平岩が近付き、岩泉に声を掛ける。
「 夏乃パパ、かなり横にでっかいもんね。
あれなら、岩泉も余裕だね。」
「でも、今のじゃ大き過ぎるから、若い時の探してくるから。」
「悪い。
じゃ、頼むな。」
「任せて。」