紅をさす
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「今は好きな人もいないし、恋愛は別にいいかなって……」
なーんて余裕かまして大人なコメントを口にし、もう片方の瞼にアイライナーで曲線を描く。
動揺して変になるかと心配したけど、何とか最後まで引けた。
ホッと胸を撫で下ろし、次の行程で使うマスカラをポーチの中から探す。
「平岩先輩って、損してますね。」
ポーチから見つけたマスカラの容器を掴んだ途端、アカアシくんがそっと目を開く。
「はっ、損?」
「ええ。
そんな受け身じゃ、好きになれそうな人がいたとしても恋愛なんて無理ですね。
本当に残念な感じです。」
「ざ、ザンネン?」
さっきの逆襲だろうか?
面と向かって言われた「残念」の衝撃に目元が引き釣るのを感じる。
「ええ。
平岩先輩、手 止まってますよ。」
あ……ヤバい。
残された時間はあと少し。
こんな話してる暇なかった。
「あ、うん。」
あー、言い返せなかった。
彼のメイクをしながら、彼の言葉「残念」が深く胸に突き刺さる。
『文化祭 開場の時間となりました。
これより正門で来賓受付をいたします。
生徒の皆さんは……』
とうとう、文化祭が始まってしまった。
間に合わなかったけど、アカアシくんのメイクも最後の仕上げまでこぎ着け、
「そのまま……動かないでね。」
「はい。」
リップブラシに口紅を取り、彼の薄い唇に塗っていく。
それにしても、この状況……やりにくい。
「………………」
至近距離にいるせいもあり、目の前のアカアシくんがこちらをガン見している。
自意識過剰って言われるかもしれないけど、彼の視線はさっきよりも厳しい。
「ザンネン」な女にメイクされて、嫌悪感一杯なんだろうか?
それとも木兎のことが好き過ぎて、邪魔者な私にイラついているとか?
そんなことを考え始めたら、口紅がはみ出してしまいそう。
いかん、いかん!
早く仕上げないと……
気を取り直し、彼の視線から逃れるように唇だけを見つめると息を殺してリップブラシを動かす。
真っ赤な口紅。
キツいかと思ったけど、唇全体を塗り終わってしまえば 意外に悪くない。
「ちょっとウィッグ直すね。」
彼の背後に回るとウィッグの位置をピンで固定し、乱れた髪の流れを直す。
「終わり……ですか?」
座りっぱなしで疲れたのだろう。
終わるのを待ちくたびれたアカアシくんの声はかなりイラついているように聞こえた。
私は再び彼の正面に回り、最終チェックをする。
ヤバい……
アカアシくんの憂いを帯びた表情も相まって艶っぽい。
っていうか、今回女装した男子バレー部のメンバーの中で一番……
いや、そこらを歩いてる女子より綺麗だ。
私なんか、目じゃない!
「うん、終わり。
鏡、見て。」
さっきのやり取りを忘れ、あまりの美しさに一人感動しつつ 彼に手鏡を差し出す。
だが、彼は鏡を受け取ることなく、椅子から立ち上がった。
なーんて余裕かまして大人なコメントを口にし、もう片方の瞼にアイライナーで曲線を描く。
動揺して変になるかと心配したけど、何とか最後まで引けた。
ホッと胸を撫で下ろし、次の行程で使うマスカラをポーチの中から探す。
「平岩先輩って、損してますね。」
ポーチから見つけたマスカラの容器を掴んだ途端、アカアシくんがそっと目を開く。
「はっ、損?」
「ええ。
そんな受け身じゃ、好きになれそうな人がいたとしても恋愛なんて無理ですね。
本当に残念な感じです。」
「ざ、ザンネン?」
さっきの逆襲だろうか?
面と向かって言われた「残念」の衝撃に目元が引き釣るのを感じる。
「ええ。
平岩先輩、手 止まってますよ。」
あ……ヤバい。
残された時間はあと少し。
こんな話してる暇なかった。
「あ、うん。」
あー、言い返せなかった。
彼のメイクをしながら、彼の言葉「残念」が深く胸に突き刺さる。
『文化祭 開場の時間となりました。
これより正門で来賓受付をいたします。
生徒の皆さんは……』
とうとう、文化祭が始まってしまった。
間に合わなかったけど、アカアシくんのメイクも最後の仕上げまでこぎ着け、
「そのまま……動かないでね。」
「はい。」
リップブラシに口紅を取り、彼の薄い唇に塗っていく。
それにしても、この状況……やりにくい。
「………………」
至近距離にいるせいもあり、目の前のアカアシくんがこちらをガン見している。
自意識過剰って言われるかもしれないけど、彼の視線はさっきよりも厳しい。
「ザンネン」な女にメイクされて、嫌悪感一杯なんだろうか?
それとも木兎のことが好き過ぎて、邪魔者な私にイラついているとか?
そんなことを考え始めたら、口紅がはみ出してしまいそう。
いかん、いかん!
早く仕上げないと……
気を取り直し、彼の視線から逃れるように唇だけを見つめると息を殺してリップブラシを動かす。
真っ赤な口紅。
キツいかと思ったけど、唇全体を塗り終わってしまえば 意外に悪くない。
「ちょっとウィッグ直すね。」
彼の背後に回るとウィッグの位置をピンで固定し、乱れた髪の流れを直す。
「終わり……ですか?」
座りっぱなしで疲れたのだろう。
終わるのを待ちくたびれたアカアシくんの声はかなりイラついているように聞こえた。
私は再び彼の正面に回り、最終チェックをする。
ヤバい……
アカアシくんの憂いを帯びた表情も相まって艶っぽい。
っていうか、今回女装した男子バレー部のメンバーの中で一番……
いや、そこらを歩いてる女子より綺麗だ。
私なんか、目じゃない!
「うん、終わり。
鏡、見て。」
さっきのやり取りを忘れ、あまりの美しさに一人感動しつつ 彼に手鏡を差し出す。
だが、彼は鏡を受け取ることなく、椅子から立ち上がった。