これは恋ではない
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◇◇◇◇◇◇◇
「あ……っ……」
踵に硬い感触がした……
そう思った途端、私の身体はバーと共にマットの上に転がっていた。
「助走に勢いつけて。
もっと思いきって足上げて。」
体育教師の助言を噛み締めながら、身体を起こす。
この高さ、中学の頃は跳べてたのにな……
踏切、早かった?
助走に勢いがなかった?
いや、もしかして身体、重くなったから?
それに柔軟性ないからかも?
考え始めたら、数えきれないくらい跳べない原因が挙がる。
出来ていたことが出来なくなる……
自分がどんどんつまらない人間になっていくようで、ひどく悲しくて情けなくて……
泣きそうになるのをぐっと堪えながら、バーを戻す。
「じゃ、次!」
「はい!」
ホイッスルの音がなり、次の子が助走をつけて片足で踏み切る。
その身体は軽々とバーを越していく。
「いいな……」
私はそれを羨ましく思いながら、眺めるしかなかった。
体育の授業も終わり、昼休みに突入した。
跳べなかった私を含む数人の生徒が課題となった高さをクリアすべく練習をしていたが、
「お腹すいたから、もうやめる~」
空腹に負けたクラスメイトがマットの上、大の字で叫ぶ。
すると、跳べなかった他の子達もそれに便乗するように止めて戻っていく。
「平岩さんも一緒に戻らない?」
最後に残っていた子が気を遣って声を掛けてくれた。
いつもなら、私も諦めて帰るところだけど……
「あ……もう少し練習して戻る。
ありがとう。」
まだ戻れない。
何も掴めてないのに……
◆◆◆◆◆◆◆
「あらら、とうとう一人になっちゃった~」
牛乳パンをかじりながら、及川は窓から身を乗り出してグラウンドを眺める。
「ん、何?」
俺の気を引こうとする及川の呟きに松川も何事かと、その隣でグラウンドを覗き込む。
「……高跳びじゃん。
練習してんの?」
「そ。
でも、さっきからバー引っ掛けてばっかり。」
「鈍臭せぇ。」
それを見ていた松川がボソリと呟く。
「ありゃ……助走か?
踏み切る寸前、スピードが落ちてるべ。」
「……怖いんじゃない?
跳べないこと、わかってるから。」
及川と松川は窓辺からグラウンドの平岩の様子を眺めながら、評論家のように解説し始める。
しばらくして、二人して無反応な俺をチラ見、再びグラウンドに視線を落とす。
あぁ、その視線がうぜぇ。
ここが教室じゃなけりゃ、及川を蹴り倒してるところだ。
俺はそんな二人を無視し、食べ終えた弁当箱を鞄へ片付けていると、飯をかき込む花巻と目が合う。
いつもなら、松川と一緒になって面白がって俺をからかうはずなのに……
今日は珍しく我関せずと言わんばかりの態度を決め込んでいた。
だが、
「あ……」
しばらくして、何か思い出したように小さい声をあげたかと思えば、
「そう言えば……女子、次回 高跳びのテストって言ってた。
規定の高さ跳べねぇと放課後 補習らしい。」
クラスの女子が言っていたと呟いた。
「「それで練習してんだ~」」
花巻の発言に二人は声を揃えて納得する。
「でもさ、あれじゃ 補習確実だね。」
及川がニヤニヤしながら、吐き捨てるようにそう言った。
その顔は、うちのオカンが夢中になって見てる昼ドラの悪役女優みたいな表情をしている。
まるで嫁イビりする姑、そのものだ……
「あ……っ……」
踵に硬い感触がした……
そう思った途端、私の身体はバーと共にマットの上に転がっていた。
「助走に勢いつけて。
もっと思いきって足上げて。」
体育教師の助言を噛み締めながら、身体を起こす。
この高さ、中学の頃は跳べてたのにな……
踏切、早かった?
助走に勢いがなかった?
いや、もしかして身体、重くなったから?
それに柔軟性ないからかも?
考え始めたら、数えきれないくらい跳べない原因が挙がる。
出来ていたことが出来なくなる……
自分がどんどんつまらない人間になっていくようで、ひどく悲しくて情けなくて……
泣きそうになるのをぐっと堪えながら、バーを戻す。
「じゃ、次!」
「はい!」
ホイッスルの音がなり、次の子が助走をつけて片足で踏み切る。
その身体は軽々とバーを越していく。
「いいな……」
私はそれを羨ましく思いながら、眺めるしかなかった。
体育の授業も終わり、昼休みに突入した。
跳べなかった私を含む数人の生徒が課題となった高さをクリアすべく練習をしていたが、
「お腹すいたから、もうやめる~」
空腹に負けたクラスメイトがマットの上、大の字で叫ぶ。
すると、跳べなかった他の子達もそれに便乗するように止めて戻っていく。
「平岩さんも一緒に戻らない?」
最後に残っていた子が気を遣って声を掛けてくれた。
いつもなら、私も諦めて帰るところだけど……
「あ……もう少し練習して戻る。
ありがとう。」
まだ戻れない。
何も掴めてないのに……
◆◆◆◆◆◆◆
「あらら、とうとう一人になっちゃった~」
牛乳パンをかじりながら、及川は窓から身を乗り出してグラウンドを眺める。
「ん、何?」
俺の気を引こうとする及川の呟きに松川も何事かと、その隣でグラウンドを覗き込む。
「……高跳びじゃん。
練習してんの?」
「そ。
でも、さっきからバー引っ掛けてばっかり。」
「鈍臭せぇ。」
それを見ていた松川がボソリと呟く。
「ありゃ……助走か?
踏み切る寸前、スピードが落ちてるべ。」
「……怖いんじゃない?
跳べないこと、わかってるから。」
及川と松川は窓辺からグラウンドの平岩の様子を眺めながら、評論家のように解説し始める。
しばらくして、二人して無反応な俺をチラ見、再びグラウンドに視線を落とす。
あぁ、その視線がうぜぇ。
ここが教室じゃなけりゃ、及川を蹴り倒してるところだ。
俺はそんな二人を無視し、食べ終えた弁当箱を鞄へ片付けていると、飯をかき込む花巻と目が合う。
いつもなら、松川と一緒になって面白がって俺をからかうはずなのに……
今日は珍しく我関せずと言わんばかりの態度を決め込んでいた。
だが、
「あ……」
しばらくして、何か思い出したように小さい声をあげたかと思えば、
「そう言えば……女子、次回 高跳びのテストって言ってた。
規定の高さ跳べねぇと放課後 補習らしい。」
クラスの女子が言っていたと呟いた。
「「それで練習してんだ~」」
花巻の発言に二人は声を揃えて納得する。
「でもさ、あれじゃ 補習確実だね。」
及川がニヤニヤしながら、吐き捨てるようにそう言った。
その顔は、うちのオカンが夢中になって見てる昼ドラの悪役女優みたいな表情をしている。
まるで嫁イビりする姑、そのものだ……