黒いカタマリ
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「はぁーっ……」
部活も終わり、バレー部の一年で群れを成して坂ノ下商店に向かう道すがら、木下が大きなため息をつく。
「何だよ?
テンション下がってんな、木下。」
それに気付いた田中がガックリ肩を落としている木下の背中を叩いた。
「今日、先輩にこっぴどく叱られたせいか?」
隣にいた成田が優しく声を掛ける。
虫の居所が悪かったのだろうか?
三年の先輩が練習に少し遅れてしまった木下を大声で叱りつけた。
それは練習中 終始続き、二年の澤村さんや菅原さんがその先輩を宥めに入るほど……
練習後に聞いた話だが、慣れてきて気が弛んできた俺達 一年に対しての『見せしめ』と三年が話していたらしい。
多分、言い易そうな木下をターゲットにしたのだろう。
「んなもん、気にすんなよ。
次、しっかりやりゃーいいだろ。」
すぐ後ろにいた西谷も木下の背中をバシバシ叩いた。
「そうだ、そうだ!」
「気にすんなよ。」
その場にいた他の者もそれに同調し、木下を励ますが、ショックは大きかったのか?
表情は曇ったまま、おもむろに口を開いた。
「ち、違うって。
テンション下げてたのは、それが理由じゃなくて……」
「じゃ、何だよ……」
その場にいた全員が立ち止まり、木下を見つめる。
どうやら、落ち込んでいた原因は叱られたことじゃないようだ。
皆、固唾を呑んで木下の発言に注目する。
「あのさ、来週末から中間考査……」
その瞬間、
「あ¨ぁーーーー!!!」
「それ言うなっ!!!」
さっきまで木下を励ましていた田中と西谷が耳を押さえながら、それぞれが大声で叫ぶ。
だが、木下はそれにも気にとめることなく、
「俺……そのこと考えたら、何かもうやる気が……」
言葉通り、その顔に生気はない。
「でもさ、テストまでまだ日にちもあるし、今夜から勉強すれば何とかなるんじゃねぇの?」
どんよりとした空気の中、成田が苦笑しながら落ち込む連中を励まそうとするが、
「テスト範囲自体、把握してないわ……俺。」
「っていうか、授業中 寝てたから、ノート借りるとこから始めないと……」
次々と恐ろしい発言が飛び出してくる。
「な、成田!
ノート、ノート貸してくれっ!!!」
「縁下でもいいっ!
頼む、この通り……」
それにしてもここまで酷いとは……
ある意味、想像を越えていて、俺も成田も絶句した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あ、お帰りなさい。」
風呂上がり……
麦茶でも飲もうと台所に行くと、そこに入浴前にはなかった叔母の姿があった。
振り返ったその顔は化粧が崩れ、疲れているように見える。
朝の時間帯の仕事が多い叔母のいつもより遅い御帰宅。
週末でもないのに珍しいことがあるもんだとぼんやり思った。
「ただいま……」
今まで仕事だったのか、その声には覇気がない。
覚束ない足取りでコンロの前に立ち、冷えた味噌汁を温め直している。
「今日、遅かったんだね。」
私は冷蔵庫から麦茶の入った容器、食器棚からはグラスを二つ出した。
「仕事?
それとも飲み会?」
食卓に置いたグラスによく冷えた麦茶を注ぎ入れ、それを叔母の前に差し出す。
すると、叔母は更にげっそりした表情になり、
「違う。
飲んでない!」
グラスの麦茶を一気に飲み干した。
どうやら飲み会ではないらしい。
私はその様子を横目に、既に就寝してしまった祖母が用意していた夕食(肉じゃが)を温めようと皿を手に取る。
「砂羽さん、座ってて。
後は私がしてあげるから。」
一人で食べる御飯は美味しくない。
東京では気付かなくて……
宮城に来て改めてわかったこと。
「いいの?
つばさ、ありがとう~」
私は叔母の夕食が終わるまで付き合うことにした。
部活も終わり、バレー部の一年で群れを成して坂ノ下商店に向かう道すがら、木下が大きなため息をつく。
「何だよ?
テンション下がってんな、木下。」
それに気付いた田中がガックリ肩を落としている木下の背中を叩いた。
「今日、先輩にこっぴどく叱られたせいか?」
隣にいた成田が優しく声を掛ける。
虫の居所が悪かったのだろうか?
三年の先輩が練習に少し遅れてしまった木下を大声で叱りつけた。
それは練習中 終始続き、二年の澤村さんや菅原さんがその先輩を宥めに入るほど……
練習後に聞いた話だが、慣れてきて気が弛んできた俺達 一年に対しての『見せしめ』と三年が話していたらしい。
多分、言い易そうな木下をターゲットにしたのだろう。
「んなもん、気にすんなよ。
次、しっかりやりゃーいいだろ。」
すぐ後ろにいた西谷も木下の背中をバシバシ叩いた。
「そうだ、そうだ!」
「気にすんなよ。」
その場にいた他の者もそれに同調し、木下を励ますが、ショックは大きかったのか?
表情は曇ったまま、おもむろに口を開いた。
「ち、違うって。
テンション下げてたのは、それが理由じゃなくて……」
「じゃ、何だよ……」
その場にいた全員が立ち止まり、木下を見つめる。
どうやら、落ち込んでいた原因は叱られたことじゃないようだ。
皆、固唾を呑んで木下の発言に注目する。
「あのさ、来週末から中間考査……」
その瞬間、
「あ¨ぁーーーー!!!」
「それ言うなっ!!!」
さっきまで木下を励ましていた田中と西谷が耳を押さえながら、それぞれが大声で叫ぶ。
だが、木下はそれにも気にとめることなく、
「俺……そのこと考えたら、何かもうやる気が……」
言葉通り、その顔に生気はない。
「でもさ、テストまでまだ日にちもあるし、今夜から勉強すれば何とかなるんじゃねぇの?」
どんよりとした空気の中、成田が苦笑しながら落ち込む連中を励まそうとするが、
「テスト範囲自体、把握してないわ……俺。」
「っていうか、授業中 寝てたから、ノート借りるとこから始めないと……」
次々と恐ろしい発言が飛び出してくる。
「な、成田!
ノート、ノート貸してくれっ!!!」
「縁下でもいいっ!
頼む、この通り……」
それにしてもここまで酷いとは……
ある意味、想像を越えていて、俺も成田も絶句した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あ、お帰りなさい。」
風呂上がり……
麦茶でも飲もうと台所に行くと、そこに入浴前にはなかった叔母の姿があった。
振り返ったその顔は化粧が崩れ、疲れているように見える。
朝の時間帯の仕事が多い叔母のいつもより遅い御帰宅。
週末でもないのに珍しいことがあるもんだとぼんやり思った。
「ただいま……」
今まで仕事だったのか、その声には覇気がない。
覚束ない足取りでコンロの前に立ち、冷えた味噌汁を温め直している。
「今日、遅かったんだね。」
私は冷蔵庫から麦茶の入った容器、食器棚からはグラスを二つ出した。
「仕事?
それとも飲み会?」
食卓に置いたグラスによく冷えた麦茶を注ぎ入れ、それを叔母の前に差し出す。
すると、叔母は更にげっそりした表情になり、
「違う。
飲んでない!」
グラスの麦茶を一気に飲み干した。
どうやら飲み会ではないらしい。
私はその様子を横目に、既に就寝してしまった祖母が用意していた夕食(肉じゃが)を温めようと皿を手に取る。
「砂羽さん、座ってて。
後は私がしてあげるから。」
一人で食べる御飯は美味しくない。
東京では気付かなくて……
宮城に来て改めてわかったこと。
「いいの?
つばさ、ありがとう~」
私は叔母の夕食が終わるまで付き合うことにした。