桐山和雄と俺の関係
※
写真の件でのお詫びと言ってはなんだが、夕飯は俺が作ることになった。
桐山が作る料理に比べたら、まあ大したものじゃないんだろうけどさ。
いや、こういうのは気持ちが大事なんだ、うん。
米もあることだし、無難にカレーを作ることにした。
その前に、カレーのルーが無かったので買いに行くことに。
辛さ(甘口・中辛・辛口)はどれがいい?って桐山に聞いたら、桐山はダイスを転がして「中辛にしよう」だってさ。
……あのなあ、お前……
このままじゃ駄目だ。
そんな行き当たりばったりの判断じゃ、この先生きていく上で、誤った道を進むことになっちまうぞ?
例えば極端な話、もしいきなり閉じ込められた環境に連れて来られて、
「君たちには殺し合いをしてもらいます」なんていう状況になっても、こいつはみんなと相談することもせずにコイントスで自分の運命を決めちまいそうだ。
家族のことは別にしても、こいつのこういうところは突っ込みを入れた方がいいかもしれないな。
いくら頭がよくて器用でも、それを正しい方に活かせられなきゃ意味ないぜ。
このままじゃ誰かに体よく利用されたり、犯罪にも手を染めそうだ。(多少は、もう染めてるのかもしれないけど)
これも何かの縁だ、この共同生活を機にこいつの自主性ってやつを育ててやるのも悪くないかもしれない。
俺はそんな使命感を、密かに燃やした。
そんだけ。
※
とはいっても、俺は教師じゃない。どんな風にしてやるのがいいのだろう……
とりあえず二択でのコイントスはやめさせた方がいいな。
そうだ、好きなものとかあるのか?例えば食べ物では何が好きなんだ?
カレーを食いながら俺は聞いた。
「特にこれといったものはない。出されればなんでも食べられる」
……嫌いなものは?アレルギーとかさ。
「それもない」
そうだよな、だってこいつが作る料理といったらまるきり主観性のない大衆食堂の献立みたいだもんな。
和食だったり洋食だったり中華だったり。ときには気まぐれを発揮してどこかの国の民族料理だったり。
理由を聞いてもだいたい「そうしてみようと思った」だし。
でもそうやっていろんなことに挑戦するのって、興味はあるってことだよな。
好きになるものが見つかればもう少しわかりやすいんだが。
どうしたもんかね。
そんだけ。
※
「さっきはすまなかった」
おもむろに、桐山は口を開いた。
え?何が?
「フォトフレームを割ったことだっ……。後日弁償しよう」
「……ああ、いいよ。俺の方こそ悪かった」
俺がそう言うと桐山はクク、と首を傾げた。
「……何を謝る?」
……へ?だってお前、あの写真を見て気分を害したからフォトフレームを割ったんじゃないのか?
「いや、喧嘩で使う目潰し用に手ごろなガラス片が欲しいと思っていたんだっ。いきなりあんなことをしてすまなかった。考え事をしていると他のことが気にならなくなるんだ」
ホントかよ。っていうか目潰しにガラス片てお前……
あのとき、殺気のようなものを感じたのは俺の思い過ごしか?
そうかもしれない。よくわからない所があるとはいえ、桐山があんな過剰な感情表現をするわけないもんな。
そもそも俺は未だにこいつの表情らしい表情を、見たことがないし。
飾ってあったのが家族の写真だったからってんで、俺も勘ぐっちゃったよ。
「……あのとき、何か言っていたかっ……?」
桐山は改まってそう聞いてきたが俺は「大した事じゃないよ」と返した。
「そうか」
その後、デザートに桐山が作ったアイスクリームを食べた。うまかった。
そんだけ。
写真の件でのお詫びと言ってはなんだが、夕飯は俺が作ることになった。
桐山が作る料理に比べたら、まあ大したものじゃないんだろうけどさ。
いや、こういうのは気持ちが大事なんだ、うん。
米もあることだし、無難にカレーを作ることにした。
その前に、カレーのルーが無かったので買いに行くことに。
辛さ(甘口・中辛・辛口)はどれがいい?って桐山に聞いたら、桐山はダイスを転がして「中辛にしよう」だってさ。
……あのなあ、お前……
このままじゃ駄目だ。
そんな行き当たりばったりの判断じゃ、この先生きていく上で、誤った道を進むことになっちまうぞ?
例えば極端な話、もしいきなり閉じ込められた環境に連れて来られて、
「君たちには殺し合いをしてもらいます」なんていう状況になっても、こいつはみんなと相談することもせずにコイントスで自分の運命を決めちまいそうだ。
家族のことは別にしても、こいつのこういうところは突っ込みを入れた方がいいかもしれないな。
いくら頭がよくて器用でも、それを正しい方に活かせられなきゃ意味ないぜ。
このままじゃ誰かに体よく利用されたり、犯罪にも手を染めそうだ。(多少は、もう染めてるのかもしれないけど)
これも何かの縁だ、この共同生活を機にこいつの自主性ってやつを育ててやるのも悪くないかもしれない。
俺はそんな使命感を、密かに燃やした。
そんだけ。
※
とはいっても、俺は教師じゃない。どんな風にしてやるのがいいのだろう……
とりあえず二択でのコイントスはやめさせた方がいいな。
そうだ、好きなものとかあるのか?例えば食べ物では何が好きなんだ?
カレーを食いながら俺は聞いた。
「特にこれといったものはない。出されればなんでも食べられる」
……嫌いなものは?アレルギーとかさ。
「それもない」
そうだよな、だってこいつが作る料理といったらまるきり主観性のない大衆食堂の献立みたいだもんな。
和食だったり洋食だったり中華だったり。ときには気まぐれを発揮してどこかの国の民族料理だったり。
理由を聞いてもだいたい「そうしてみようと思った」だし。
でもそうやっていろんなことに挑戦するのって、興味はあるってことだよな。
好きになるものが見つかればもう少しわかりやすいんだが。
どうしたもんかね。
そんだけ。
※
「さっきはすまなかった」
おもむろに、桐山は口を開いた。
え?何が?
「フォトフレームを割ったことだっ……。後日弁償しよう」
「……ああ、いいよ。俺の方こそ悪かった」
俺がそう言うと桐山はクク、と首を傾げた。
「……何を謝る?」
……へ?だってお前、あの写真を見て気分を害したからフォトフレームを割ったんじゃないのか?
「いや、喧嘩で使う目潰し用に手ごろなガラス片が欲しいと思っていたんだっ。いきなりあんなことをしてすまなかった。考え事をしていると他のことが気にならなくなるんだ」
ホントかよ。っていうか目潰しにガラス片てお前……
あのとき、殺気のようなものを感じたのは俺の思い過ごしか?
そうかもしれない。よくわからない所があるとはいえ、桐山があんな過剰な感情表現をするわけないもんな。
そもそも俺は未だにこいつの表情らしい表情を、見たことがないし。
飾ってあったのが家族の写真だったからってんで、俺も勘ぐっちゃったよ。
「……あのとき、何か言っていたかっ……?」
桐山は改まってそう聞いてきたが俺は「大した事じゃないよ」と返した。
「そうか」
その後、デザートに桐山が作ったアイスクリームを食べた。うまかった。
そんだけ。