桐山和雄と俺の関係
※
オールバックがトレードマークの桐山だが、当の本人は整髪料を持っていない。
朝起きたときは髪は下ろしているんだが、夕方や夜、俺が家に帰るとオールバックになっている。
一体いつセットしているんだ?
「充がやってくれるんだ」
充?友達か?
「そんなところだ」
へえ、無口で無愛想なやつだから友達はいないんじゃないかと思ってたよ。しかし……
髪のセットぐらい自分でやればいいのにな。その充ってやつ、召使いみたいじゃないか。
お坊ちゃんじゃあるまいし。
……
いや、待てよ。確かこの町には「キリヤマ」っていう中国四国地方でもトップクラスの企業を経営してるっていう金持ちがいたよな……?
聞いてみたい気もしたが、桐山は家のことを聞かれるのを嫌がる傾向がある。(はっきりそう言ったわけではないが、雰囲気でそう察せられた)
―パンッ!パンッ!
音のする方を振り返って見ると、桐山は、今日手に入れたというワルサーPPKのモデルガンを撃っていた。
最近、モデルガンに凝っているらしい。
「次はコルト・ハイウェイパトロールマンを手に入れようと思っているんだ」
「買う」ではなく「手に入れる」という言い回しが引っ掛かった。
そうだよな、モデルガンって結構値が張るよな。高いものだと3~5万円はするらしい。
中学生のこいつはどうやってその資金を捻出しているんだ?
まさか……
……
桐山に関する謎は更に深まった。
そんだけ。
※
今日、実家の母に頼んでおいた荷物が届いた。それから「ちゃんと自炊しなさい」というメモつきで、米と日持ちしそうな食材も入っていた。
ありがたいぜ。
それから荷物の中には昔撮った家族の写真があった。懐かしいな。
せっかくなので飾っておくことにした。
「……ただいま」
珍しく学校に行っていたらしい桐山が帰ってきた。
「おう、おかえり」
いや、こいつは家出中なのだからここで「ただいま」って言うのはちょっとおかしい気もするが。まあいい。
「……」
桐山はローボードに置かれた写真に気がついた。
ああこれ?実家から送られてきたんだ。たまにはこういうのもいいだろ?
桐山はいつもの調子で「そうだな」とか言って頷いてくれるのかと思ったんだが。
パリーンッ!!
……そうではなかった。
そうだった、こいつは家のこと、即ち「家族」というものに関して人一倍敏感なのだった。
顔は無表情だったがその行動が桐山の心情を如実に語っていた。
初めて会った次の日、親御さんは?と聞いたとき無言で首を横に振った桐山。
どことなく寂しそうな顔をしていた桐山。
ここに居ていいよと俺が言ったら「ありがとう」と言った桐山。
桐山……
「ごめん、ごめんよ」
俺は泣きながら砕けたフォトフレームの破片を片付け、写真をタンスの最奥にしまった。
そしてもう二度と桐山の前で家族の写真を出さないことを心に誓った。
それだけ。
オールバックがトレードマークの桐山だが、当の本人は整髪料を持っていない。
朝起きたときは髪は下ろしているんだが、夕方や夜、俺が家に帰るとオールバックになっている。
一体いつセットしているんだ?
「充がやってくれるんだ」
充?友達か?
「そんなところだ」
へえ、無口で無愛想なやつだから友達はいないんじゃないかと思ってたよ。しかし……
髪のセットぐらい自分でやればいいのにな。その充ってやつ、召使いみたいじゃないか。
お坊ちゃんじゃあるまいし。
……
いや、待てよ。確かこの町には「キリヤマ」っていう中国四国地方でもトップクラスの企業を経営してるっていう金持ちがいたよな……?
聞いてみたい気もしたが、桐山は家のことを聞かれるのを嫌がる傾向がある。(はっきりそう言ったわけではないが、雰囲気でそう察せられた)
―パンッ!パンッ!
音のする方を振り返って見ると、桐山は、今日手に入れたというワルサーPPKのモデルガンを撃っていた。
最近、モデルガンに凝っているらしい。
「次はコルト・ハイウェイパトロールマンを手に入れようと思っているんだ」
「買う」ではなく「手に入れる」という言い回しが引っ掛かった。
そうだよな、モデルガンって結構値が張るよな。高いものだと3~5万円はするらしい。
中学生のこいつはどうやってその資金を捻出しているんだ?
まさか……
……
桐山に関する謎は更に深まった。
そんだけ。
※
今日、実家の母に頼んでおいた荷物が届いた。それから「ちゃんと自炊しなさい」というメモつきで、米と日持ちしそうな食材も入っていた。
ありがたいぜ。
それから荷物の中には昔撮った家族の写真があった。懐かしいな。
せっかくなので飾っておくことにした。
「……ただいま」
珍しく学校に行っていたらしい桐山が帰ってきた。
「おう、おかえり」
いや、こいつは家出中なのだからここで「ただいま」って言うのはちょっとおかしい気もするが。まあいい。
「……」
桐山はローボードに置かれた写真に気がついた。
ああこれ?実家から送られてきたんだ。たまにはこういうのもいいだろ?
桐山はいつもの調子で「そうだな」とか言って頷いてくれるのかと思ったんだが。
パリーンッ!!
……そうではなかった。
そうだった、こいつは家のこと、即ち「家族」というものに関して人一倍敏感なのだった。
顔は無表情だったがその行動が桐山の心情を如実に語っていた。
初めて会った次の日、親御さんは?と聞いたとき無言で首を横に振った桐山。
どことなく寂しそうな顔をしていた桐山。
ここに居ていいよと俺が言ったら「ありがとう」と言った桐山。
桐山……
「ごめん、ごめんよ」
俺は泣きながら砕けたフォトフレームの破片を片付け、写真をタンスの最奥にしまった。
そしてもう二度と桐山の前で家族の写真を出さないことを心に誓った。
それだけ。