桐山和雄と俺の関係

 ※

 いつもどおり、バイトを終えて家に帰ったら何故か桐山の姿が変わっていた。

 いや、桐山なのか?

「桐山だ」

 桐山だった。

 背が伸びてないか?オールバックも微妙に違うし。

 学生服の上着を、袖は通さず肩にかけていた。……なんかマントみたいになってるぞ。

 どうしたんだ?と聞いたが、本人は変化の自覚がないみたいで、大して気にした様子もなかった。

「俺はどっちでもいいと思っている」

 姿は変わったが中身は相変わらずだ。自分のことなのにてんで無頓着だし。
 まあ、こいつらしいっちゃこいつらしい。

 しかしこうなるとますます中学生には見えないな。元から大人びたやつだとは思っていたけど。

 あと室内なんだから、上着は別に脱いだっていいんだぜ。

 そんだけ。

 ※

 今日、商店街の福引で電動ガンが当たった。イングラムM10というサブマシンガンだ。

 結構高くていいものらしい。得した気分だ。

 とはいえ俺は別にミリタリーマニアというわけじゃないから、その銃のすごさはわからないし、そんなに嬉しくもなかった。

 なので桐山に進呈することにした。小中学生とかはこういうの好きだよな?

 桐山は一言礼を言ってそれを受け取った。説明書を読みながら組み立てる。

 付属していた紙の的で試し撃ちをする。あ、壁に向けて撃つなよ、傷ついたら修理費かかるんだからな。

 ぱららららっ!!

 タイプライターが文字打ちするときのような軽快な音が響いた。

 気に入ったのか、桐山はその銃声を真似て、時折

「ぱらららっ」

 と口ずさんでいた。

 何考えてるのかよくわからない奴だと思ってたけど、なんだ、可愛いところもあるじゃないか。

 なんだかんだいって桐山も歳相応の少年なんだな、と俺は少し和んだ。

 そんだけ。

 ※

 この奇妙な無表情少年との共同生活が始まってから数週間が過ぎた。

 俺は昼間学校に通ったりバイトをしたりしてるから、桐山が日中どのようにして過ごしているのかは実のところよく知らない。

 居候なんだから家事ぐらいやってくれよ、と冗談交じりに言ってみたら「わかった」と素直にやってくれた。

 この年頃のやつはもっと我儘だったり、反抗的かと思ったんだが。

 感情が乏しいのも気になるな。

 それにこいつは何を決めるにも自分では考えず、コイントスで判断を下すんだ。

 この前だっておやつに大判焼き(ところによっては今川焼き、とも呼称するらしい)を買おうとして

「表が出たらあんこ、裏が出たらクリームにしよう」

 とか言ってたもんな。

 自分が好きな方を買えばいいのに。優柔不断なのか?

 ちなみに俺はあんこが好き。つぶあんな。

 そんだけ。

 ※

 選択肢がふたつ以上ある場合はどうやって決めてるんだ?

 聞いてみたら桐山は服のポケットからごそごそと何かを取り出した。

 ダイスだった。一般的な六面体から乱数処理を行うための多面体と、種類が豊富だった。

「選択肢が複数ある場合はそれをダイスの数字に当てはめて決めている」

 お前はギャンブラーか?

 そんだけ。
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