山賊討伐戦
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あれから2日。色んな人と交流をして、色んな人達と仲良くなった。女官さんだったり、文官さんだったり、城下の精肉店の人や八百屋さんとも。もう常連だったりする
それに、武将の方とも仲良くなった。黄忠さんとはおじいちゃんと孫感覚で、普通に話せる。おじいちゃんって素晴らしい
龐統さんとも仲良くなって、叔父と姪感覚。でも敬語が抜けない。何が違うのかしら…包囲力?黄忠さんと一緒にお茶を飲む仲に
他の人は遠征言ってたり色々してる為まだあっていない。早く仲良くなりたい………あぁ後、数名敬語なしで話して欲しいと言われて敬語なしで話してる。でもね、劉備さんは無理
そんな中、諸葛亮さんにどれ程の実力があるのか手伝いも兼ねてと討伐を頼まれた。まぁ、私自身最近鍛錬しかしてなくって実戦をしていなかったからちょっと有難かった
「颯閃殿助けてよォ~!」
「どうしたの?馬岱君」
「ぐすっ。諸葛亮殿が「村から野盗が出現して困っているとの情報が届きました。向かいますよ」って言われちゃって…。俺今日非番なのにぃ~……」
「あー……そうだったの。でもその討伐、さっき話してたんだけど私も行く事に───」
「やったぁぁあぁぁぁああ!!!聞いてなかったからしょんぼりしてたけど若が快く了承した理由分かったぁぁぁああ!」
めっちゃハイテンションになった馬岱君に憐れみの目を向ける。いろんな意味でこの人苦労人だなぁ…
「で、で!?何処につくの?」
「確か私は前衛で───」
「魏延殿の所かよぉぉぉぉぉ!」
めっちゃ煩いので掌で盛大にシバいといた。私は悪くない、無駄にハイテンションな馬岱君が悪い
「うぅ…あれぇ?俺ってば何を…」
「私に野盗討伐の件をお知らせに来てくれたんだけど、躓いて足が扉の溝に引っかかり頭を強打…。今大丈夫?って声掛けてたところなんだけど……」
「そ、そうなんだ…ごめんね。じゃぁそういう事だから!」
(…ごめんなさい馬岱君)
帰っていった馬岱君に念の為に心の中で謝っておいた。手加減したけどいい音鳴ったし痛かったろうに、なんて思いながらフェイスヴェールを整える。この期間よく耐えてくれてるわこのヴェール。一度も翻ったこと無し
「颯閃!馬岱から聞いたと思うが出陣だぞ!」
「はーい」
馬超さんがハイテンションで部屋に来た。馬一族なんでこんなテンション高いんだろ。何かあったのかしら
《出発前》
準備を整え城外にて点呼をとる。全員が居ることを確認した後、出発前の暫しの休憩にと時間が与えられた。指揮を執っていた諸葛亮さんは言い終わるとすぐにこちらに歩いてくる
「颯閃殿、当初伝えていた通り貴女は魏延と同じ前衛です。主に軍師の我々が中衛、馬超や馬岱達が後衛にあたります。前衛と後衛が危険の多い場所ですが、お気をつけを」
「かしこまりました」
諸葛亮さんが珍しく私に忠告を施す。みたらし団子を献品してからなんだか当たりが柔らかくなった。まさか…私無意識に餌付けしてしまったの?
「魏延様、関平君。宜しくお願い致します」
「…我……颯閃……守ル……!!!」
「私よりも中衛の軍師の方々をどうか」
「…アイツラ……法正以外……嫌イ……」
「じゃぁ法正様をお守り下さい。私と関平君で諸葛亮さんと徐庶さんをお守り致します」
「徐庶殿は強いので大丈夫かと」
関平君、無意識(&遠回し)に諸葛亮さん弱い発言。これ諸葛亮さん聞いてたら減給されるわよ関平君
「では向かいましょう」
絶対聞いてたわねあの立ち位置からして……目が据わってるし。関平君ご愁傷様
「…何デ……コノ形……?」
「野盗が現れているということは奇襲もありえますから、いつでも対処できるようにあまり固まっていないのかと」
「…颯閃ノイウ事……ワカリヤスイ……。諸葛亮ヨリ……断然イイ……」
「それ言っていると減給されますから、お口チャックしましょう」
「…チャック…」
魏延さんは私との日々の会話で【お口チャック】と【頂きます】を覚えた。口がよく滑るので魏延さんに【お口チャック】は適用だったわ……
「そろそろ目的の村だな……皆!気を引き締めて下さい!」
「りょうかーい!」
「かしこまりました!」
中衛からの号令に後衛伝達係の馬岱さんと前衛伝達係の私が返す。何かあった時は伝達係が走って援軍を呼ぶの。合理的でしょ?
「!蜀軍の方々だ!」
「良かった!これであいつらの支配から救われる!」
「おぉぉぉっ!」
村に着くや否や村人の方々が私達に集まる。どれ程困っていたのか…
「女性陣はどうしましたか?」
「…それが……野盗共に連れ去られちまって…!」
涙を流す村人達。お年寄りはおらず、子供もいない、ましてや若い男性陣のみが残っている。私はそこに若干の違和感を覚えた
「あの、野盗がどこから来ているのか分かっていません。1日泊まって様子を見てくださらないでしょうか」
「かしこまりました。以前よりそう伝えられておりましたので二日程泊まる予定です。空き家さえ貸していただければ」
「はい!どうぞどうぞ!」
村人達は安堵のためか笑顔だ。だがまたその笑顔に違和感を覚えた。この感じ…前世で知ってるような…?…うーん、分からないわ…。早く思い出さなきゃ
「女性はやはり分けた方が…?」
「…そうですね、分けた方が良いのでしょうが…どうですか颯閃殿」
「いえ、ここへ来て迄甘える訳にはいけません。私は皆様と同じ場所で大丈夫です」
「そうですか…わかりました。この方も我々と同じ場所でお願いします」
「わかりました!」
分け方は前衛、中衛、後衛を1人ずつ交代したものとなった。4つほど空き家があって、前衛は魏延さん、関平君、後衛から馬岱君。中衛は諸葛亮さん、法正さん、前衛から私。後衛は馬超さんと中衛から徐庶さんとなった
だが私はここでも違和感を覚える。空き家は4つ、私が一人を選べば丁度だ。偶然だろうか
「颯閃殿、行きますよ」
「あ、はい」
諸葛亮さんに呼ばれ空き家へ。一瞬だけ嫌な気配を感じたけれど、ほんの一瞬だったので気の所為だと思い中へ入った
《数分後》
まだ十~二十分程度しか経っていない時、諸葛亮さんが見回りの話を持ち出す
「いつ野盗が現れるかわからないこの状況下、見回りはするべきでしょう」
「では陣営ごとに見回りをしてはどうでしょう。もし野盗と出くわした時1人では対処出来ない数かも知れません」
「そうですね…。では、前衛から見回りをしましょうか」
他の陣営の人も集め、見回りの話をもう1度。皆ウンウンと頷いてくれたが、一人納得のいかなさそうに首を振った人物が
「何か不満でも?魏延」
「…我……颯閃…心配…」
「颯閃殿は充分強い。でなければこの討伐に参加しませんし、貴方が心配する程ではありませんよ」
「…ムゥ……」
それでも不満げな魏延さんに苦笑い。私ってそんなに弱く見えるのかな…
「では前衛から…。行きましょう魏延殿、馬岱殿」
「うん!良いよォ!」
「…仕方ナイ……颯閃……何カアル……叫べ……」
「かしこまりました。お気をつけて」
「……ウン……」
可愛い返事と共に外へ出ていった魏延さんと前衛、後衛チーム。頑張れとだけ心の中で願った
「…俺は少し手洗いに」
「気をつけて…何があるかわかりませんから」
「はいはい」
法正さんも部屋を退室。すると諸葛亮さんが私に向き直った
「…少し宜しいですか?」
「はい、なんでしょう」
「貴女はなぜ、首を傾げているのですか?正確には…傾げていた、になりますが」
「……村に入った時の事でしょうか」
「えぇ、勿論」
よく見てるわね。なんて考えながら私も向き直る。話しておいた方がいいのかも知れない
「違和感を覚えたんです」
「違和感…?」
「はい、村人の構成、泣き顔まで全てに……こう、説明出来ない違和感があって。その違和感の正体は、わかっていないのですが……」
「…そうでしたか。その情報、私の考えと合致します。この村は───」
「ヌォォォォォォッ!!!」
諸葛亮さんがなにか言おうとした瞬間。魏延さんの雄叫びが木霊した
「魏延様がなにか…!?」
「行きましょう」
「はい!」
戟を握り急いで外へ出る。すると、いきなり横から武器が振り下ろされた
「甘い!」
「ぬぁっ!」
瞬時に扉とは逆の右へと受け流し切り付ける。諸葛亮さんに攻撃は一太刀もいっていない
「…夏侯惇が推すだけありますね」
「これでも呂布さん相手に鍛錬してますからね!強くないと相手拗ねちゃいますから」
「ほぅ……流石です」
諸葛亮さんと息を合わせ雄叫びの聞こえた方へ進む。そこは予想だにしなかった光景が広がっていた
「む、村人の方々が…!?」
「ヌォォォォッ……颯閃…逃ゲロ……!!」
「今はこっちに来ないでね!……ぃよいっ!」
「颯閃殿は諸葛亮殿を…!」
魏延さんと馬岱君、関平君が応戦する中、馬超さんや徐庶さん、法正さんも駆けつける。馬超さんのこめかみに青筋が立った
「くっ!村人が野盗とは…俺の正義の槍で成敗してくれる!」
「大人しくしてもらわないと…」
「ま、ここで颯閃殿に恩をまた売っておくのもいいかもしれませんね」
野盗の方へ走り抜ける3人。私はとりあえず諸葛亮さんを見た
「諸葛亮様、私はどうすれば…」
「…一人になっては危険ですので、できれば私のそばに。何かあれば私も応戦致します」
「はい!」
諸葛亮さんに返事をして戟を構える。野盗達は勿論弱い(と思っている)私の方に視線を向けた
「てめぇら!あの女を狙え!」
「へい!」
頭領らしき男の号令で数人の男がこちらに迫ってくる。私は応戦しようと戟を構えるが───
「はいやーっ!」
「ぐぁぁっ!」
「馬超様!」
野盗を槍でつき私を背に庇う馬超さん。このままでは私は戦えない
「私は大丈夫ですから、馬超様はどうか皆様の援護を!」
「知らん!お前を汚す不義なる輩共は、この馬孟起の正義の心が許さん!」
「そんな事言ってる場合じゃ───」
「でりゃぁぁぁ!」
「ぐぉっ!」
馬超さんがぐだぐだ喋ってる間に敵の攻撃が来た。反応の遅れた馬超さんは左腕に怪我を負う
「だから…私を守るより自分のことを考えなさいと言ったじゃない!!!」
「ぐぁっ!」
馬超さんが地面に膝をついた瞬間その先にいる野盗を串刺しにする。その瞬間戟を引き、敵を後方になぎ払い他の敵も巻き込んだ
「私は貴方に守られなきゃいけないほど弱くないの!ここに来るのに弱いやつを送り付ける訳ないでしょう!」
「颯閃……」
「貴方はそこに居て!諸葛亮さんも!」
「…は、はい………」
素が出てしまったけどもう後の祭り。私は目前の的に切っ先を向け、そのまま突進する形で走り出した
「せいっ!」
「ぬあぁっ!」
前衛を囲んでいた野盗達を薙ぎ払い野盗達の陣営を崩す。戸惑っていた魏延さん達はこちらに目を向け目を見開いていた
「そんな所で突っ立ってないで、戦いなさい!!!貴方達はここになんのために来たの!ただの遠出!?違うでしょ!!!私達は、これ以上の犠牲を出さない為に来たんでしょ!」
「……ヌォォォォッ……!颯閃……正論……我……颯閃ニ、従ウ……!!」
「困ったなぁ…こりゃ一本取られちゃったよ。んじゃ、俺も張り切って戦わなきゃね!」
「颯閃殿の心意気しかと!関雲長の義息子として恥じぬ戦いを!」
「……恩は、倍にして返されてしまったな……。ほんと、逞しい女だよあんたは」
各々少し話をして武器を構え直す。武将達の雰囲気が変わったのを悟り、野盗達は気を乱し始めた
「戦場での心の乱れは…死に繋がるのよ!」
「ぬぁぁあっっ!」
相手の背後に忍び寄り、敵の陣営を更に崩していく。それを見た法正様が森の方へと伝達を行った
「すまない!準備に戸惑って…せい!」
その伝達を見た徐庶さんが現れると、どこからとも無く弓矢が放たれる。野盗は一網打尽。私達の完全勝利となった
「…ふぅ、やっぱり面倒事は引き受けるもんじゃないわね」
首を支え左右に折る。ゴキゴキと女らしからぬ音がしたが、激しい運動のあとだから仕方ないだろう
「…で?怪我をした貴方達は何か言うことがあるんじゃなくて?」
「「……」」
怪我をしたのは馬超さんと法正さん。馬超さんは私を庇っていて反応に遅れたため。法正さんは私が来る前に敵を舐めきっていたための負傷だ
「馬超さんは私のことを舐めすぎ。言ったでしょ、ここに来るのに弱い者は邪魔なだけ…。私もそれなりに鍛えられてて、一人で戦えるの。何度言ったかしらこの台詞」
「す、すまない……。前が、見えていなかった……」
「戦う事で死が隣り合わせなのは仕方ないけれど、人を侮ることは危険よ。誰しも初めての人間を警戒する事に越したことはないんだから」
「「………」」
法正さんは一言も喋らないけれど、深く反省しているらしい。その証拠に目は合わせないまま拳を握りしめている。強く、手袋をしていなかったら爪が食い込むのではというほどに
「今回は諸葛亮様と徐庶様が考えてくれた策で何とかなったけど、もしあれがなかったら皆どうなってたか…。一度そこをじっくり考えて。特に馬超さん!」
「ぐっ…」
私は溜息をつきながら乱れた横髪を耳に掛ける。フェイスヴェールは少し切れ込みが入り、左頬が見えてしまっているだろう。まぁ、其れくらい特に問題は無い
「取り敢えず、今日は近くの川で野宿しましょう。この血の海で眠るのは些か困難でしょうから…片付けも、して帰りますよ」
「「「はい」」」
返答の出来るもので返事を返し各々川へ向かう。私は今日久々に自分を解放した気がして、逆に疲れた。敬語ばかりなのも疲れるけれど、本気で怒っても疲れるわ……
それに、武将の方とも仲良くなった。黄忠さんとはおじいちゃんと孫感覚で、普通に話せる。おじいちゃんって素晴らしい
龐統さんとも仲良くなって、叔父と姪感覚。でも敬語が抜けない。何が違うのかしら…包囲力?黄忠さんと一緒にお茶を飲む仲に
他の人は遠征言ってたり色々してる為まだあっていない。早く仲良くなりたい………あぁ後、数名敬語なしで話して欲しいと言われて敬語なしで話してる。でもね、劉備さんは無理
そんな中、諸葛亮さんにどれ程の実力があるのか手伝いも兼ねてと討伐を頼まれた。まぁ、私自身最近鍛錬しかしてなくって実戦をしていなかったからちょっと有難かった
「颯閃殿助けてよォ~!」
「どうしたの?馬岱君」
「ぐすっ。諸葛亮殿が「村から野盗が出現して困っているとの情報が届きました。向かいますよ」って言われちゃって…。俺今日非番なのにぃ~……」
「あー……そうだったの。でもその討伐、さっき話してたんだけど私も行く事に───」
「やったぁぁあぁぁぁああ!!!聞いてなかったからしょんぼりしてたけど若が快く了承した理由分かったぁぁぁああ!」
めっちゃハイテンションになった馬岱君に憐れみの目を向ける。いろんな意味でこの人苦労人だなぁ…
「で、で!?何処につくの?」
「確か私は前衛で───」
「魏延殿の所かよぉぉぉぉぉ!」
めっちゃ煩いので掌で盛大にシバいといた。私は悪くない、無駄にハイテンションな馬岱君が悪い
「うぅ…あれぇ?俺ってば何を…」
「私に野盗討伐の件をお知らせに来てくれたんだけど、躓いて足が扉の溝に引っかかり頭を強打…。今大丈夫?って声掛けてたところなんだけど……」
「そ、そうなんだ…ごめんね。じゃぁそういう事だから!」
(…ごめんなさい馬岱君)
帰っていった馬岱君に念の為に心の中で謝っておいた。手加減したけどいい音鳴ったし痛かったろうに、なんて思いながらフェイスヴェールを整える。この期間よく耐えてくれてるわこのヴェール。一度も翻ったこと無し
「颯閃!馬岱から聞いたと思うが出陣だぞ!」
「はーい」
馬超さんがハイテンションで部屋に来た。馬一族なんでこんなテンション高いんだろ。何かあったのかしら
《出発前》
準備を整え城外にて点呼をとる。全員が居ることを確認した後、出発前の暫しの休憩にと時間が与えられた。指揮を執っていた諸葛亮さんは言い終わるとすぐにこちらに歩いてくる
「颯閃殿、当初伝えていた通り貴女は魏延と同じ前衛です。主に軍師の我々が中衛、馬超や馬岱達が後衛にあたります。前衛と後衛が危険の多い場所ですが、お気をつけを」
「かしこまりました」
諸葛亮さんが珍しく私に忠告を施す。みたらし団子を献品してからなんだか当たりが柔らかくなった。まさか…私無意識に餌付けしてしまったの?
「魏延様、関平君。宜しくお願い致します」
「…我……颯閃……守ル……!!!」
「私よりも中衛の軍師の方々をどうか」
「…アイツラ……法正以外……嫌イ……」
「じゃぁ法正様をお守り下さい。私と関平君で諸葛亮さんと徐庶さんをお守り致します」
「徐庶殿は強いので大丈夫かと」
関平君、無意識(&遠回し)に諸葛亮さん弱い発言。これ諸葛亮さん聞いてたら減給されるわよ関平君
「では向かいましょう」
絶対聞いてたわねあの立ち位置からして……目が据わってるし。関平君ご愁傷様
「…何デ……コノ形……?」
「野盗が現れているということは奇襲もありえますから、いつでも対処できるようにあまり固まっていないのかと」
「…颯閃ノイウ事……ワカリヤスイ……。諸葛亮ヨリ……断然イイ……」
「それ言っていると減給されますから、お口チャックしましょう」
「…チャック…」
魏延さんは私との日々の会話で【お口チャック】と【頂きます】を覚えた。口がよく滑るので魏延さんに【お口チャック】は適用だったわ……
「そろそろ目的の村だな……皆!気を引き締めて下さい!」
「りょうかーい!」
「かしこまりました!」
中衛からの号令に後衛伝達係の馬岱さんと前衛伝達係の私が返す。何かあった時は伝達係が走って援軍を呼ぶの。合理的でしょ?
「!蜀軍の方々だ!」
「良かった!これであいつらの支配から救われる!」
「おぉぉぉっ!」
村に着くや否や村人の方々が私達に集まる。どれ程困っていたのか…
「女性陣はどうしましたか?」
「…それが……野盗共に連れ去られちまって…!」
涙を流す村人達。お年寄りはおらず、子供もいない、ましてや若い男性陣のみが残っている。私はそこに若干の違和感を覚えた
「あの、野盗がどこから来ているのか分かっていません。1日泊まって様子を見てくださらないでしょうか」
「かしこまりました。以前よりそう伝えられておりましたので二日程泊まる予定です。空き家さえ貸していただければ」
「はい!どうぞどうぞ!」
村人達は安堵のためか笑顔だ。だがまたその笑顔に違和感を覚えた。この感じ…前世で知ってるような…?…うーん、分からないわ…。早く思い出さなきゃ
「女性はやはり分けた方が…?」
「…そうですね、分けた方が良いのでしょうが…どうですか颯閃殿」
「いえ、ここへ来て迄甘える訳にはいけません。私は皆様と同じ場所で大丈夫です」
「そうですか…わかりました。この方も我々と同じ場所でお願いします」
「わかりました!」
分け方は前衛、中衛、後衛を1人ずつ交代したものとなった。4つほど空き家があって、前衛は魏延さん、関平君、後衛から馬岱君。中衛は諸葛亮さん、法正さん、前衛から私。後衛は馬超さんと中衛から徐庶さんとなった
だが私はここでも違和感を覚える。空き家は4つ、私が一人を選べば丁度だ。偶然だろうか
「颯閃殿、行きますよ」
「あ、はい」
諸葛亮さんに呼ばれ空き家へ。一瞬だけ嫌な気配を感じたけれど、ほんの一瞬だったので気の所為だと思い中へ入った
《数分後》
まだ十~二十分程度しか経っていない時、諸葛亮さんが見回りの話を持ち出す
「いつ野盗が現れるかわからないこの状況下、見回りはするべきでしょう」
「では陣営ごとに見回りをしてはどうでしょう。もし野盗と出くわした時1人では対処出来ない数かも知れません」
「そうですね…。では、前衛から見回りをしましょうか」
他の陣営の人も集め、見回りの話をもう1度。皆ウンウンと頷いてくれたが、一人納得のいかなさそうに首を振った人物が
「何か不満でも?魏延」
「…我……颯閃…心配…」
「颯閃殿は充分強い。でなければこの討伐に参加しませんし、貴方が心配する程ではありませんよ」
「…ムゥ……」
それでも不満げな魏延さんに苦笑い。私ってそんなに弱く見えるのかな…
「では前衛から…。行きましょう魏延殿、馬岱殿」
「うん!良いよォ!」
「…仕方ナイ……颯閃……何カアル……叫べ……」
「かしこまりました。お気をつけて」
「……ウン……」
可愛い返事と共に外へ出ていった魏延さんと前衛、後衛チーム。頑張れとだけ心の中で願った
「…俺は少し手洗いに」
「気をつけて…何があるかわかりませんから」
「はいはい」
法正さんも部屋を退室。すると諸葛亮さんが私に向き直った
「…少し宜しいですか?」
「はい、なんでしょう」
「貴女はなぜ、首を傾げているのですか?正確には…傾げていた、になりますが」
「……村に入った時の事でしょうか」
「えぇ、勿論」
よく見てるわね。なんて考えながら私も向き直る。話しておいた方がいいのかも知れない
「違和感を覚えたんです」
「違和感…?」
「はい、村人の構成、泣き顔まで全てに……こう、説明出来ない違和感があって。その違和感の正体は、わかっていないのですが……」
「…そうでしたか。その情報、私の考えと合致します。この村は───」
「ヌォォォォォォッ!!!」
諸葛亮さんがなにか言おうとした瞬間。魏延さんの雄叫びが木霊した
「魏延様がなにか…!?」
「行きましょう」
「はい!」
戟を握り急いで外へ出る。すると、いきなり横から武器が振り下ろされた
「甘い!」
「ぬぁっ!」
瞬時に扉とは逆の右へと受け流し切り付ける。諸葛亮さんに攻撃は一太刀もいっていない
「…夏侯惇が推すだけありますね」
「これでも呂布さん相手に鍛錬してますからね!強くないと相手拗ねちゃいますから」
「ほぅ……流石です」
諸葛亮さんと息を合わせ雄叫びの聞こえた方へ進む。そこは予想だにしなかった光景が広がっていた
「む、村人の方々が…!?」
「ヌォォォォッ……颯閃…逃ゲロ……!!」
「今はこっちに来ないでね!……ぃよいっ!」
「颯閃殿は諸葛亮殿を…!」
魏延さんと馬岱君、関平君が応戦する中、馬超さんや徐庶さん、法正さんも駆けつける。馬超さんのこめかみに青筋が立った
「くっ!村人が野盗とは…俺の正義の槍で成敗してくれる!」
「大人しくしてもらわないと…」
「ま、ここで颯閃殿に恩をまた売っておくのもいいかもしれませんね」
野盗の方へ走り抜ける3人。私はとりあえず諸葛亮さんを見た
「諸葛亮様、私はどうすれば…」
「…一人になっては危険ですので、できれば私のそばに。何かあれば私も応戦致します」
「はい!」
諸葛亮さんに返事をして戟を構える。野盗達は勿論弱い(と思っている)私の方に視線を向けた
「てめぇら!あの女を狙え!」
「へい!」
頭領らしき男の号令で数人の男がこちらに迫ってくる。私は応戦しようと戟を構えるが───
「はいやーっ!」
「ぐぁぁっ!」
「馬超様!」
野盗を槍でつき私を背に庇う馬超さん。このままでは私は戦えない
「私は大丈夫ですから、馬超様はどうか皆様の援護を!」
「知らん!お前を汚す不義なる輩共は、この馬孟起の正義の心が許さん!」
「そんな事言ってる場合じゃ───」
「でりゃぁぁぁ!」
「ぐぉっ!」
馬超さんがぐだぐだ喋ってる間に敵の攻撃が来た。反応の遅れた馬超さんは左腕に怪我を負う
「だから…私を守るより自分のことを考えなさいと言ったじゃない!!!」
「ぐぁっ!」
馬超さんが地面に膝をついた瞬間その先にいる野盗を串刺しにする。その瞬間戟を引き、敵を後方になぎ払い他の敵も巻き込んだ
「私は貴方に守られなきゃいけないほど弱くないの!ここに来るのに弱いやつを送り付ける訳ないでしょう!」
「颯閃……」
「貴方はそこに居て!諸葛亮さんも!」
「…は、はい………」
素が出てしまったけどもう後の祭り。私は目前の的に切っ先を向け、そのまま突進する形で走り出した
「せいっ!」
「ぬあぁっ!」
前衛を囲んでいた野盗達を薙ぎ払い野盗達の陣営を崩す。戸惑っていた魏延さん達はこちらに目を向け目を見開いていた
「そんな所で突っ立ってないで、戦いなさい!!!貴方達はここになんのために来たの!ただの遠出!?違うでしょ!!!私達は、これ以上の犠牲を出さない為に来たんでしょ!」
「……ヌォォォォッ……!颯閃……正論……我……颯閃ニ、従ウ……!!」
「困ったなぁ…こりゃ一本取られちゃったよ。んじゃ、俺も張り切って戦わなきゃね!」
「颯閃殿の心意気しかと!関雲長の義息子として恥じぬ戦いを!」
「……恩は、倍にして返されてしまったな……。ほんと、逞しい女だよあんたは」
各々少し話をして武器を構え直す。武将達の雰囲気が変わったのを悟り、野盗達は気を乱し始めた
「戦場での心の乱れは…死に繋がるのよ!」
「ぬぁぁあっっ!」
相手の背後に忍び寄り、敵の陣営を更に崩していく。それを見た法正様が森の方へと伝達を行った
「すまない!準備に戸惑って…せい!」
その伝達を見た徐庶さんが現れると、どこからとも無く弓矢が放たれる。野盗は一網打尽。私達の完全勝利となった
「…ふぅ、やっぱり面倒事は引き受けるもんじゃないわね」
首を支え左右に折る。ゴキゴキと女らしからぬ音がしたが、激しい運動のあとだから仕方ないだろう
「…で?怪我をした貴方達は何か言うことがあるんじゃなくて?」
「「……」」
怪我をしたのは馬超さんと法正さん。馬超さんは私を庇っていて反応に遅れたため。法正さんは私が来る前に敵を舐めきっていたための負傷だ
「馬超さんは私のことを舐めすぎ。言ったでしょ、ここに来るのに弱い者は邪魔なだけ…。私もそれなりに鍛えられてて、一人で戦えるの。何度言ったかしらこの台詞」
「す、すまない……。前が、見えていなかった……」
「戦う事で死が隣り合わせなのは仕方ないけれど、人を侮ることは危険よ。誰しも初めての人間を警戒する事に越したことはないんだから」
「「………」」
法正さんは一言も喋らないけれど、深く反省しているらしい。その証拠に目は合わせないまま拳を握りしめている。強く、手袋をしていなかったら爪が食い込むのではというほどに
「今回は諸葛亮様と徐庶様が考えてくれた策で何とかなったけど、もしあれがなかったら皆どうなってたか…。一度そこをじっくり考えて。特に馬超さん!」
「ぐっ…」
私は溜息をつきながら乱れた横髪を耳に掛ける。フェイスヴェールは少し切れ込みが入り、左頬が見えてしまっているだろう。まぁ、其れくらい特に問題は無い
「取り敢えず、今日は近くの川で野宿しましょう。この血の海で眠るのは些か困難でしょうから…片付けも、して帰りますよ」
「「「はい」」」
返答の出来るもので返事を返し各々川へ向かう。私は今日久々に自分を解放した気がして、逆に疲れた。敬語ばかりなのも疲れるけれど、本気で怒っても疲れるわ……
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