これが乱世
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「……」
「くっ…近づくな…!!」
なんでこんなことになっているのか、それは数時間前に溯る
《数時間前》
その日は珍しく執務も早く終わり、兵の鍛錬も終わり、緊急事態がない限り暇という奇跡が起こっていた
「諸葛誕君、暇」
「困りましたね……何かお手伝いなどは?」
「前に曹操様を手伝おうとしたら夏侯惇様に、孟徳の分までやらせたらこいつが調子に乗る!兵の鍛錬でもしてやってくれ!って怒られちゃったし、でも兵士たちの鍛錬の時間も決められてるし…」
「今の時間帯は兵士は皆巡回や砦内の清掃ですから仕方ありません…」
「あー……暇、暇よ諸葛誕君。私と一緒に城下に行かない?」
「すみません、私は他の仕事が……暫くしたら呼ばれるのです」
「諸葛誕君も仕事人かー」
とてつもなく暇な時間が流れるのが堪らなく苦痛に感じた瞬間、諸葛誕君がとてもいい案を出してくれた
「そうだ、夏侯惇殿に報告して森に散策に行ってはいかがでしょう。自然が好きだと仰っていましたし、最近働き詰めですから仕事が早く終わった褒美にでも」
「……いいのかしら、私だけそんな贅沢…」
「贅沢ではありません。颯閃殿の精神を癒す大切な行動です。私が許可を頂いてくるので準備の方を」
「はーい…」
他の人のことを考えてちょっと後ろめたく感じたけれど、そう言えばこの軍滝行に逃げたり遊郭に逃げたり釣りに逃げたりと色んな人が執務放棄していて、その分こっちに回ってたなと思い出す。それなら、これ位良いよね!と開き直ることが出来た
そのあとはトントン拍子で話が進み今に至る。まさか森を散策して喉乾いたから水飲もうと水辺目指してたら血なまぐさいし負傷した青年いるなんて思わないじゃん?
「とりあえず、手当しましょう!そんな怪我じゃ動けないでしょう?」
「黙れ!どうせ、貴様も不義なるあの男の……ぐっ…」
口からも頭からは血が流れ、簡素な平服は真っ赤に染まっている。このままでは彼は命の危険があるだろう
「…そんな傷でどうする気ですか?死にたいんですか?」
「なんだと…!」
「私を敵だと思ってくださっても構いませんが、その傷で私と戦えます?まともに動こうとすると血が滲んで出血多量で死にますが」
「……っ」
キッと睨みつける青年はもう戦える程の力はない。私はそれを見込み彼を横抱きしてそのまま水辺へと歩き始めた。いきなり抱き上げられた青年は目を見開き暴れようとするけれど、傷が痛むのかぐったりと私の方に体を預けてきた
「最初っから言うこと聞いてくださればよかったのに…」
「………」
何も言わない青年を水辺近くに下ろして何かあった時のためにと持ってきていた救急セットを袋から取り出す。傷の手当がしたいので取り敢えず出血が多いであろう頭の手当をした。応急処置だから、これが終われば彼を故郷に帰してあげなくては
「いっ…」
「…此処は腫れてるだけみたいですね…血は額のここからでしょうか。そこまで深くもないし、細かいものが多いので針で縫うことはしなくて済みそうですね」
「……」
頭の手当を終え次は顔に移った。打撲が多く青紫に変色した箇所には薬を塗っていると、青年が口を開く
「……口の中が切れてる」
「はい、あー」
「……あー…」
ちょっとだけ心を開いてくれたのか口を開けてくれた青年。苦くて染みると思うけれど、薬草をすり潰した物を塗りこんだ
「いだっ…」
「あー、確かに痛いと思いますけど、頑張って我慢してくださいね。あと、ここ舐めちゃダメですよ」
「うぅぅ…」
若干涙目な青年に申し訳なく思いつつ次は血みどろな平服に目を移した。元は白い布なのか、血が染みていない部分が白いのを見る
「これ、脱がしますよ」
「っ!そ、それは駄目だ!」
「なんでですか、血が相当染みてますよこれ。早く手当しないと…」
「大丈夫だ!本当に…うがぁぁぁっ!!!!」
ぎゅぅっと胸板を押してやると痛々しい声を上げた青年にニコリと笑いかけた。ここも傷があるのか……残酷だと思った人、こうでもしないとこの人は脱いでくれない
「ほら、脱がしますよ。痩せ我慢してないで早く手当して楽になりましょう」
「くぅ…悪魔め……」
「どうとでも言ってください」
死装束の様に簡素な平服を脱がすと、私の視界には信じられない物が映った
「……」
「…見せたくなかった理由が今わかりました。…でも、私が見る限り跡にはなりませんね。ちゃんと薬塗って、療養食を食べて無理をしなければ痣も無くなるでしょう」
擦り傷に効く薬草をすり潰して傷口にあてがい包帯でまいていく。凄く痛いというのが、私の肩を力強く握る拳でわかる
「あともう少しです、頑張って…」
「うぐっ…がぁっ…」
「あと少し……」
長さが背中の方で止まり、十分巻いたので彼と真正面から抱きつく形で包帯を結ぶ。少し短かったから悪戦苦闘していると、ぎゅぅっと青年の腕が私の胴体に回った。ちょっとキツかったかもしれない
「ごめんなさい、痛かったですね。終わりましたよ」
「……すまない、もう少しだけ…」
「?…わかりました」
傷の状態は新しいものから数ヶ月程放置された様なものまで様々だった。その様子からして長い間捕虜にされ、酷い仕打ちを受けていたのだろうと予測する。きっと寂しく、虚しく、辛かっただろう。人とはそんな時誰かの優しさと温もりが恋しくなる。きっと彼はそんな状態なのだ、私が少しでも和らげてあげなくては……今、彼のそばには私しかいない。他人だとしても、放っては置けない
「……さっきはすまない。追手だと思っていた…」
「大丈夫ですよ。あんな状態で信じられるものは極僅か。手当をさせてくれてありがとうございます」
「…俺が礼を言う方だ。お前にこんな高度な手当をしてもらって……応急処置とは思えん程だ。お前は典医か何かか?」
「ふふっ、しがない女ですよ。自然と覚えただけです」
「…凄い環境にいるんだな……お前も、戦う身なのか?」
「えぇ、前線で戦ったこともありますが、殆ど活躍は表には出ていないでしょうね。…あっ、貴方を襲ったところのものでは無いと確信して言えるのでそこの所よろしくお願いします」
「はははっ、大丈夫だ。あの男の軍のものなら、俺を見つけ次第殺していただろう。…お前は、こんな手当までしてくれた。優しい女だ…」
話が途切れると、彼は重心を私に預けてきた。顔を横目で見ると瞼を閉じ、耳をすませば小さく寝息が聞こえてくる。安心して眠ったのだろう
「……嘘…」
寝かせてあげようと思って離そうとしたら腕に力が入っていて全く剥がれない。眠っているのになんて腕力
このままの体勢では体に負担ありそうだと羽織りをなんとか地面に敷いてそのままゴロン。すぴー、と心地よさそうに寝てる青年を見てるとなぜか泣けてくる。長い睫毛、キリリとした眉、どれを見てもイケメンの類である
「……この服、どうにかしないと…」
血が滲みすぎて、パッと見赤い衣服なんじゃないかと思うほどのそれに目を通しそう呟いた。私より明らかに身長が高いし、後で立ってもらって、身長似てそうな人から平服借りてこようかしら
青年が起きた後のことを考えながら、私は取り敢えず彼の髪の毛を弄るのであった
「くっ…近づくな…!!」
なんでこんなことになっているのか、それは数時間前に溯る
《数時間前》
その日は珍しく執務も早く終わり、兵の鍛錬も終わり、緊急事態がない限り暇という奇跡が起こっていた
「諸葛誕君、暇」
「困りましたね……何かお手伝いなどは?」
「前に曹操様を手伝おうとしたら夏侯惇様に、孟徳の分までやらせたらこいつが調子に乗る!兵の鍛錬でもしてやってくれ!って怒られちゃったし、でも兵士たちの鍛錬の時間も決められてるし…」
「今の時間帯は兵士は皆巡回や砦内の清掃ですから仕方ありません…」
「あー……暇、暇よ諸葛誕君。私と一緒に城下に行かない?」
「すみません、私は他の仕事が……暫くしたら呼ばれるのです」
「諸葛誕君も仕事人かー」
とてつもなく暇な時間が流れるのが堪らなく苦痛に感じた瞬間、諸葛誕君がとてもいい案を出してくれた
「そうだ、夏侯惇殿に報告して森に散策に行ってはいかがでしょう。自然が好きだと仰っていましたし、最近働き詰めですから仕事が早く終わった褒美にでも」
「……いいのかしら、私だけそんな贅沢…」
「贅沢ではありません。颯閃殿の精神を癒す大切な行動です。私が許可を頂いてくるので準備の方を」
「はーい…」
他の人のことを考えてちょっと後ろめたく感じたけれど、そう言えばこの軍滝行に逃げたり遊郭に逃げたり釣りに逃げたりと色んな人が執務放棄していて、その分こっちに回ってたなと思い出す。それなら、これ位良いよね!と開き直ることが出来た
そのあとはトントン拍子で話が進み今に至る。まさか森を散策して喉乾いたから水飲もうと水辺目指してたら血なまぐさいし負傷した青年いるなんて思わないじゃん?
「とりあえず、手当しましょう!そんな怪我じゃ動けないでしょう?」
「黙れ!どうせ、貴様も不義なるあの男の……ぐっ…」
口からも頭からは血が流れ、簡素な平服は真っ赤に染まっている。このままでは彼は命の危険があるだろう
「…そんな傷でどうする気ですか?死にたいんですか?」
「なんだと…!」
「私を敵だと思ってくださっても構いませんが、その傷で私と戦えます?まともに動こうとすると血が滲んで出血多量で死にますが」
「……っ」
キッと睨みつける青年はもう戦える程の力はない。私はそれを見込み彼を横抱きしてそのまま水辺へと歩き始めた。いきなり抱き上げられた青年は目を見開き暴れようとするけれど、傷が痛むのかぐったりと私の方に体を預けてきた
「最初っから言うこと聞いてくださればよかったのに…」
「………」
何も言わない青年を水辺近くに下ろして何かあった時のためにと持ってきていた救急セットを袋から取り出す。傷の手当がしたいので取り敢えず出血が多いであろう頭の手当をした。応急処置だから、これが終われば彼を故郷に帰してあげなくては
「いっ…」
「…此処は腫れてるだけみたいですね…血は額のここからでしょうか。そこまで深くもないし、細かいものが多いので針で縫うことはしなくて済みそうですね」
「……」
頭の手当を終え次は顔に移った。打撲が多く青紫に変色した箇所には薬を塗っていると、青年が口を開く
「……口の中が切れてる」
「はい、あー」
「……あー…」
ちょっとだけ心を開いてくれたのか口を開けてくれた青年。苦くて染みると思うけれど、薬草をすり潰した物を塗りこんだ
「いだっ…」
「あー、確かに痛いと思いますけど、頑張って我慢してくださいね。あと、ここ舐めちゃダメですよ」
「うぅぅ…」
若干涙目な青年に申し訳なく思いつつ次は血みどろな平服に目を移した。元は白い布なのか、血が染みていない部分が白いのを見る
「これ、脱がしますよ」
「っ!そ、それは駄目だ!」
「なんでですか、血が相当染みてますよこれ。早く手当しないと…」
「大丈夫だ!本当に…うがぁぁぁっ!!!!」
ぎゅぅっと胸板を押してやると痛々しい声を上げた青年にニコリと笑いかけた。ここも傷があるのか……残酷だと思った人、こうでもしないとこの人は脱いでくれない
「ほら、脱がしますよ。痩せ我慢してないで早く手当して楽になりましょう」
「くぅ…悪魔め……」
「どうとでも言ってください」
死装束の様に簡素な平服を脱がすと、私の視界には信じられない物が映った
「……」
「…見せたくなかった理由が今わかりました。…でも、私が見る限り跡にはなりませんね。ちゃんと薬塗って、療養食を食べて無理をしなければ痣も無くなるでしょう」
擦り傷に効く薬草をすり潰して傷口にあてがい包帯でまいていく。凄く痛いというのが、私の肩を力強く握る拳でわかる
「あともう少しです、頑張って…」
「うぐっ…がぁっ…」
「あと少し……」
長さが背中の方で止まり、十分巻いたので彼と真正面から抱きつく形で包帯を結ぶ。少し短かったから悪戦苦闘していると、ぎゅぅっと青年の腕が私の胴体に回った。ちょっとキツかったかもしれない
「ごめんなさい、痛かったですね。終わりましたよ」
「……すまない、もう少しだけ…」
「?…わかりました」
傷の状態は新しいものから数ヶ月程放置された様なものまで様々だった。その様子からして長い間捕虜にされ、酷い仕打ちを受けていたのだろうと予測する。きっと寂しく、虚しく、辛かっただろう。人とはそんな時誰かの優しさと温もりが恋しくなる。きっと彼はそんな状態なのだ、私が少しでも和らげてあげなくては……今、彼のそばには私しかいない。他人だとしても、放っては置けない
「……さっきはすまない。追手だと思っていた…」
「大丈夫ですよ。あんな状態で信じられるものは極僅か。手当をさせてくれてありがとうございます」
「…俺が礼を言う方だ。お前にこんな高度な手当をしてもらって……応急処置とは思えん程だ。お前は典医か何かか?」
「ふふっ、しがない女ですよ。自然と覚えただけです」
「…凄い環境にいるんだな……お前も、戦う身なのか?」
「えぇ、前線で戦ったこともありますが、殆ど活躍は表には出ていないでしょうね。…あっ、貴方を襲ったところのものでは無いと確信して言えるのでそこの所よろしくお願いします」
「はははっ、大丈夫だ。あの男の軍のものなら、俺を見つけ次第殺していただろう。…お前は、こんな手当までしてくれた。優しい女だ…」
話が途切れると、彼は重心を私に預けてきた。顔を横目で見ると瞼を閉じ、耳をすませば小さく寝息が聞こえてくる。安心して眠ったのだろう
「……嘘…」
寝かせてあげようと思って離そうとしたら腕に力が入っていて全く剥がれない。眠っているのになんて腕力
このままの体勢では体に負担ありそうだと羽織りをなんとか地面に敷いてそのままゴロン。すぴー、と心地よさそうに寝てる青年を見てるとなぜか泣けてくる。長い睫毛、キリリとした眉、どれを見てもイケメンの類である
「……この服、どうにかしないと…」
血が滲みすぎて、パッと見赤い衣服なんじゃないかと思うほどのそれに目を通しそう呟いた。私より明らかに身長が高いし、後で立ってもらって、身長似てそうな人から平服借りてこようかしら
青年が起きた後のことを考えながら、私は取り敢えず彼の髪の毛を弄るのであった
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