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moon.4 月に向かって、太陽に向かって

私たちは縁側に出た。夜空を見上げれば、私と東子さまのふるさと──まんまるのお月さまが立派に浮かんでいる。
「わぁい! お月さまっ!」
私はサンダルをつっかけて庭に飛び出した。
「恵理子さん! 東子さま! お月さまっ!」
私が振り返ると、おふたりは縁側に腰かけていた。恵理子さんは「綺麗だね!」と無邪気に笑い、東子さまは「元気ねぇ」と穏やかに微笑んだ。
「お月さままで届けっ! えいっ!」
私はお月さまに手を伸ばし、何度もぴょんぴょん跳ねる。その後ろで、東子さまが歌い出した。
「♪うさぎ うさぎ なに見てはねる……」
それに、恵理子さんも加わる。
「♪十五夜お月さま 見てはねる……」
お月さまの光に照らされながら、私はぴょんぴょん跳ねた。手を伸ばせば、届きそうで届かない距離のお月さま。私、今、地球にいるんだ。
庭先に咲いていた「植物」──恵理子さんに聞いたカモミールという「花」はぺたんとつぼまり、朝の太陽の光を待っている。

お月さまから来た、ウサギの私。今は、お月さま──私のふるさとに向かって跳ねさせてね。朝になったら、太陽に向かって伸びていくよ。このたくましく力強い「植物」のように。私の名前──「葵」のように。
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