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moon.4 月に向かって、太陽に向かって

炊飯ジャーで炊き立ての新米と七輪で焼き立てのサンマを3人で美味しく食べた後、私たちは近くの公園に来た。葵ちゃんが月から落ちてきた、あの公園に。
外は気持ちのいい秋晴れ。葵ちゃんを真ん中に、3人でベンチに座る。あの夜、葵ちゃんと初めてお話したあのベンチだ。
「ところで、葵はどうして地球に来たの?」
東子さんが葵ちゃんに尋ねる。
「私は、いつもお月さまから地球を見ていて、青くて綺麗な星だなぁって思ってて……いつか住んでみたいと思ってました。それに、地球には「植物」っていうものがあるんですよね? 本では見たことがあるんですが、それを実際に見てみたくて……」
そう言うと葵ちゃんは立ち上がり、砂場のブロックと地面の間から生える小さなタンポポを見つけてしゃがみこむ。へぇ……秋に咲くタンポポもあるんだ。
「これは「花」っていうんですよね? 可愛い……」
葵ちゃんはタンポポにちょんちょんと触れる。
「「植物」って、こうやって太陽に向かって真っ直ぐ伸びてて……たくましいですよね。力強さを感じるなぁ」
タンポポを見つめながら、葵ちゃんはしみじみとそう言う。すると東子さんは立ち上がって葵ちゃんの元に向かい、隣にしゃがみこんだ。私も立ち上がって小走りで駆けていく。葵ちゃんと東子さんの間の後ろに立ったところで、東子さんが口を開いた。
「ねえ、葵……。あなたの名前──「葵」という名前にはね、「太陽に向かって伸びる植物の総称」という意味があるのよ」
「え……?」
「だからあなたも……地球で暮らすのなら、この植物のように太陽に向かって真っ直ぐ伸びて生きていくのよ」
「……っ!」
東子さんの方を向いた葵ちゃんに、みるみる笑顔が満ちていく。
「はいっ!」
満面の笑みで元気よく返事をした葵ちゃんは、その笑顔のままタンポポにそっと触れた。降り注ぐ秋の太陽の日差しが心地いいお昼休みだった。
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