moon.3 葵のドタバタお届け係
*side Eriko
お昼休み。東子さんは「まだちょっとやることがあるから、先に休んでていいわよ」と奥の書架に入っていった。
図書館を出ると、なんだか焦げっぽいにおいがする。近所のお宅で魚を焼いてるにおいかしら?
しかし、そのにおいは休憩室に近づくほど強くなる。私は部屋のドアを開けた。
「葵ちゃ……うわっ!?」
私は思わず大きな声を上げた。葵ちゃんの近くから煙が立っている。その煙の下で、葵ちゃんはひざを抱えて「お疲れさま」と微笑む。葵ちゃんの目の前にあるその煙の元は……七輪で焼いている最中のサンマだった。
「ちょっと、何やってるの!?」
「何って……サンマ焼いてるの。きょうのお昼ごはんのおかずだよ」
相変わらず葵ちゃんは満面の笑みだ。その笑顔を見ると、怒る気にも、注意する気にもならない。驚きも通り越して、笑いしか起こらない。私は思わずプッと吹き出し、クスクスと笑った。
「嬉しい?」
葵ちゃんが笑顔で尋ねてくる。
「うん、嬉しい……とっても嬉しいよ!」
立ちこめる煙とこみ上げる笑いであふれてきた涙を拭う私。
「恵理子ちゃん、このにおいは……」
その声に私は我に返る。東子さんが休憩室に入ってきたのだ。
お昼休み。東子さんは「まだちょっとやることがあるから、先に休んでていいわよ」と奥の書架に入っていった。
図書館を出ると、なんだか焦げっぽいにおいがする。近所のお宅で魚を焼いてるにおいかしら?
しかし、そのにおいは休憩室に近づくほど強くなる。私は部屋のドアを開けた。
「葵ちゃ……うわっ!?」
私は思わず大きな声を上げた。葵ちゃんの近くから煙が立っている。その煙の下で、葵ちゃんはひざを抱えて「お疲れさま」と微笑む。葵ちゃんの目の前にあるその煙の元は……七輪で焼いている最中のサンマだった。
「ちょっと、何やってるの!?」
「何って……サンマ焼いてるの。きょうのお昼ごはんのおかずだよ」
相変わらず葵ちゃんは満面の笑みだ。その笑顔を見ると、怒る気にも、注意する気にもならない。驚きも通り越して、笑いしか起こらない。私は思わずプッと吹き出し、クスクスと笑った。
「嬉しい?」
葵ちゃんが笑顔で尋ねてくる。
「うん、嬉しい……とっても嬉しいよ!」
立ちこめる煙とこみ上げる笑いであふれてきた涙を拭う私。
「恵理子ちゃん、このにおいは……」
その声に私は我に返る。東子さんが休憩室に入ってきたのだ。