8話
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あれから三日間、本当に万斉さんと顔を合わすことは無かった。
まだかまだかと、待ち望んでいた万斉さんと、で...デートの日がいよいよ訪れた。
ここに来たばかりの時、着るものがないと大変だと、何着か見繕って買った着物達を黒い漆が縫ってある箪笥から引っ張り出す。
桜色と白の着物か、淡い緑の着物か、薄い空色の着物か......
桜色と白のものにしよう。選んだ着物に手を通して、髪を整えいつものように化粧をした。
私は戦う時も丈の長い着物である。別に動きにくいと思ったことがないからである。それに、戦っている時も女性らしさを無くしたくないという、ちょっとした乙女心もあるのだ。
身支度を整えて、しばらく待っていると
「主人公、支度は出来たでござるか?」
「は、はい!!!」
私が答えると、万斉さんが「失礼するでござる」と部屋に入ってきた。
「おお、可愛い着物でござるな。主人公によく似合ってるでござる」
「ありがとうございます......」
万斉さんは、人が照れるような言葉をサラっと言ってくるから、言われたこっちは心臓がもたない。
万斉は相変わらず深い青と緑が混ざったようなコートに、三味線を背負っていた。
「そろそろ行くでござるか」と、襖を開け歩き出した万斉さんの後ろをついて行く。
前は追い付くのに必死になっていたが、今日は足の遅い私に合わせて、万斉さんもゆっくり歩いてくれてるようだ。
船を降りて少し歩くと、桜並木が見えてきた。絶景の場所なのに、不思議と全然人が居ない。
まぁ、私達は手配中の鬼兵隊だから人がいないなら、これ以上に都合のいい事は無いのだが。
「凄く綺麗......」
1つの木に近づいて幹に手を添え、呟いた。
「綺麗なのは主人公でござる。桜の美しさも主人公には敵わないでござろうな」
微笑むように口角を上げた万斉さんが、結わずに流したままの、茶色がかった肩までの長さがある、私の髪をひと束とって口付けた。
「な、な......!!」
何事も無かったように髪から手を離した万斉さんは、また桜の木に目を向けた。
「主人公、拙者は半年前のある夜ここで、幕府の役人を何人も斬ったのでござる。拙者が斬った役人達の血は、この桜に飛び散り、そしてその血を養分として吸ったでござろう」
鬼兵隊にいるのだから急に襲われて、戦わなければいけない時もある。
彼は何かを言うのを躊躇っている。けど私には分からない。
敵を斬ったことを悔いている?そんなのは今更だ。
万斉さんが無事であることの方が、私は嬉しい。
「こんなにも美しい桜も、血を吸い汚れている。けれど、美しく花を咲かせ、見る人の心を魅了しているでござる。......拙者も沢山人を斬った。沢山血を浴びたでござる。けれど桜のように綺麗な訳じゃないでござる」
ポツリポツリと話している間、万斉さんは1度も私を見ようとしない。
心無しか声が震えている気がする。
「それでも、そんな拙者でも、誰かに恋をするなんて、美しい感情を持つことが許されるでござろうか?」
そう言って、初めて万斉さんは私に向き合った。
その顔は見たことないくらい苦しそうで、眉毛は八の字に歪んでいる。
「わ...私は」
まだかまだかと、待ち望んでいた万斉さんと、で...デートの日がいよいよ訪れた。
ここに来たばかりの時、着るものがないと大変だと、何着か見繕って買った着物達を黒い漆が縫ってある箪笥から引っ張り出す。
桜色と白の着物か、淡い緑の着物か、薄い空色の着物か......
桜色と白のものにしよう。選んだ着物に手を通して、髪を整えいつものように化粧をした。
私は戦う時も丈の長い着物である。別に動きにくいと思ったことがないからである。それに、戦っている時も女性らしさを無くしたくないという、ちょっとした乙女心もあるのだ。
身支度を整えて、しばらく待っていると
「主人公、支度は出来たでござるか?」
「は、はい!!!」
私が答えると、万斉さんが「失礼するでござる」と部屋に入ってきた。
「おお、可愛い着物でござるな。主人公によく似合ってるでござる」
「ありがとうございます......」
万斉さんは、人が照れるような言葉をサラっと言ってくるから、言われたこっちは心臓がもたない。
万斉は相変わらず深い青と緑が混ざったようなコートに、三味線を背負っていた。
「そろそろ行くでござるか」と、襖を開け歩き出した万斉さんの後ろをついて行く。
前は追い付くのに必死になっていたが、今日は足の遅い私に合わせて、万斉さんもゆっくり歩いてくれてるようだ。
船を降りて少し歩くと、桜並木が見えてきた。絶景の場所なのに、不思議と全然人が居ない。
まぁ、私達は手配中の鬼兵隊だから人がいないなら、これ以上に都合のいい事は無いのだが。
「凄く綺麗......」
1つの木に近づいて幹に手を添え、呟いた。
「綺麗なのは主人公でござる。桜の美しさも主人公には敵わないでござろうな」
微笑むように口角を上げた万斉さんが、結わずに流したままの、茶色がかった肩までの長さがある、私の髪をひと束とって口付けた。
「な、な......!!」
何事も無かったように髪から手を離した万斉さんは、また桜の木に目を向けた。
「主人公、拙者は半年前のある夜ここで、幕府の役人を何人も斬ったのでござる。拙者が斬った役人達の血は、この桜に飛び散り、そしてその血を養分として吸ったでござろう」
鬼兵隊にいるのだから急に襲われて、戦わなければいけない時もある。
彼は何かを言うのを躊躇っている。けど私には分からない。
敵を斬ったことを悔いている?そんなのは今更だ。
万斉さんが無事であることの方が、私は嬉しい。
「こんなにも美しい桜も、血を吸い汚れている。けれど、美しく花を咲かせ、見る人の心を魅了しているでござる。......拙者も沢山人を斬った。沢山血を浴びたでござる。けれど桜のように綺麗な訳じゃないでござる」
ポツリポツリと話している間、万斉さんは1度も私を見ようとしない。
心無しか声が震えている気がする。
「それでも、そんな拙者でも、誰かに恋をするなんて、美しい感情を持つことが許されるでござろうか?」
そう言って、初めて万斉さんは私に向き合った。
その顔は見たことないくらい苦しそうで、眉毛は八の字に歪んでいる。
「わ...私は」