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ココロの民

「碧、今日は昼飯何処で食う?」
翌日の昼休み。
「中庭で良いだろ」
特に何も考えずいつも通りの日常を送っていた俺は、その日常が少し変化するのを感じた。
(昨日の先輩だ…)
中庭に降りると、まさに昨日の夜、公園で気を失っていたという先輩の姿がそこにはあった。
(話しかけようかと思ったけど、こちらに気づいていないのなら良いか)
そう思い、もう既に場所を確保していた晶の元へ向かおうとした、そのときだった。
「ねぇ君、もしかして昨日の公園の子じゃない?」
こちらに気づいたのだろう。先輩に話しかけられた。
「え、ああ、はい。そうですけど…」
「やっぱり!ねぇ、君名前は?」
……先輩と話してる気がしない。
「時雨碧です」
「へー碧くんって言うんだ。私はね、時鳥詩織。時に鳥って書いて、ホトギって読むの、面白いでしょ」
「はぁ……」
これ以降関わるかもわからないのに、この先輩は一体何によろしくしているんだ?また倒れていたらよろしく、ということだろうか?
「……ねぇ君さ、誰も居ない世界ってのを見たことがあるかな」
「っ!」
誰も、居ない世界…この先輩は、この先輩も、アレと同じ景色を知っているのだろうか。
「急にごめんね、こんな質問。でも、もしも見たことがあるなら今日の放課後、商店街にあるコダマ書店って言う古本屋に来てよ」
コダマ書店?古本屋?そこに行くと、自分と同じような境遇の人たちが沢山集まっていて、まるで漫画やアニメの世界のような面白い物語でもはじまるのだろうか。少し怪しいが、先輩の話的に、そこに行けば何か分かることがあるのかもしれない。
「碧、校内でナンパか?」
ずっとベンチに座って待っていた晶が駆け寄ってきて茶化すように言った。
「学校じゃなくてもしねぇよ。そうだ晶、俺達がよく寄り道してる商店街、あそこに古本屋ってあったっけか」
「あー、あった気がする。ほら、時計屋の横の細道あるだろ。あそこの奥進むと明日にでも潰れてそうなくらいボロボロの店がいくつか並んでんだわ。そこに確か一軒だけ」
時計屋の横…確かに行ったことが無かった。
「わかった。サンキュ」
「そ。でもなんで急に古本屋?なに?厨二病?巻物とか買って来て『これは我が未だ人に成りきれず、終わりなき苦痛に耐えていた頃の文献だ』とかやっちゃったりするの?」
「しねえよ」
「つまんねーの。親のビデオカメラこっそり持ってきて撮ってやろうかと思ってたのに」
晶がちぇー、と言いながらお弁当の唐揚げを口に放り込んだ。
「ウマッ」
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