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ココロの民

見えるのは、どもまでも続く透き通るほどに青い空と足元に張られた水、そしてそれらを分ける水平線。そこには自分以外誰も居なくて、右に行っても左に行っても、振り返ってみても見えるものは同じで、その景色を見渡す俺の中にいつもあるものは虚無感だけだった。

「……い、碧、おい!時雨碧、起きろ!」
「あ?」
気が付くと、先程まで見ていた景色とは全く違って目の前には川が流れ、地面には芝生が青々と茂り、
ゴー……
真横に建てられた橋の上を電車が走っていた。
「あ?じゃねぇよ。人がずっと話しかけてんのにうんともすんとも言わねえ」
「あー、わりぃ。寝てたわ」
アレが夢かは分かんねぇけど、説明しろと言われても絶対に無理だ。
「やっぱりな!なんだ、寝不足か?さては昨日、遅くまでゲームしてたな」
「しねぇよ、お前じゃねぇんだから」
川辺から立ち上がり、土手をあがって道に沿って歩き始める。
「あっ、おい何処行くんだよ!」
「帰る。遅くなると叔母さん達に心配されるからな」
「そっか、じゃあまた明日なー!」
(人止めといて特に用は無しかよ。)
しばらく空を見上げながら歩いていると、いつの間にか叔母さんと叔父さんと自分の3人で住むマンションの近くの公園前まで来ていた。
「っ!」
ふと公園の方へ目をやると、誰かが倒れているのが見えた。
(誰か、人は…)
辺りを見渡してみたが自分と公園で倒れている人以外には誰も居らず、渋々公園へ入り倒れている人に駆け寄った。
(…うちの学校の制服、このネクタイの色、3年の先輩か)
「えっと、救、急者…呼びますか?」
恐る恐る声をかけてみるが応答がない。寝てる?いや気を失っているのか?
顔を覗き込んだ瞬間、パチッと目が開き一瞬フリーズする。
「あっ、すんません、倒れてるの見えたんで、気になって、」
慌てて距離をとりながら説明した。
「…ああ、ごめんなさい。少し気を失ってたみたい」
「えっと、大丈夫ですか?頭打ったりとか…念のため救急車呼びます?」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
先輩は立ち上がって制服の埃を払いながら、じゃあもう行くね、と言って近くにあった鞄を拾い走り去ってしまった。
……なんだったんだ?
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