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狩人祭

(……ウサギ)
森に入って暫く歩いていると、1羽の野ウサギが目に入った。銃に弾を入れようと思いケースをポシェットから出す。
(あ、さっき全部使い切ったんだ。テントに戻ったときに補充し忘れてた。取り敢えず今はゴム弾で…)
代わりにゴム弾を取り出して、ウサギによく狙いを定めて1発撃ち込む。殺すことはできないが狙うとこ狙えば気絶くらいはさせられる。
アイリスはポシェットからナイフを取り出してウサギに近づいていくと、ごめんなさい、と言ってウサギの首にナイフを刺しこんだ。
(やっぱり、ナイフで刺すのと銃で撃つのどじゃ全然違う…)
ナイフを引き抜いて、ウサギの後ろ足を持ち運べるように縄で縛る。
「ゴム弾....『死にはしないが死ぬほど痛い』だっけ。服、染みになっちゃうかしら。あとでアネモネに謝らないと。」
アネモネ、というのはアーチャー家専属の仕立て師で今回の狩人祭の衣装の他アイリスが着ている服は全てアネモネが仕立てたもの。前にも言った通りアイリスはファッションにはあまり興味がないため、服のデザインなどは全てアネモネに任せていた。つまりアイリスが着ている服は全てアネモネの趣味というわけだ。
「あれれ?!もしや貴方、アイリス・アーチャーさんでは?!そうですよねそうですよね!金色の髪を風になびかせて銃を撃つ女性貴族なんてアイリス・アーチャーさんくらいてますもんね!」
アイリスが次の獲物を探していると、狩人祭の最中の森には似つかわしくない服装の、そこそこ大きめのサイズのリュックを背負って両手にペンとメモ帳を持った少女?が突然話しかけてきた。
「えっと....どちら様かしら?(年下…?)」
「あ、失礼しました!私はブランダ新聞のカンナ・カーティスと申します!以後お見知りおきを!」
「ブランダ新聞の記者さんだったのね。だからそんな格好で森の中に。」
「はい!そうだ、アイリスさんのお写真、1枚撮らせていただいて良いでしょうか?!」
「構わないけど、どうして?」
「だって、今回の開会の合図は貴方でしょう?そんなアイリスさんが狩りをしてる姿なんて、みんな絶対見たいですよ!だから!」
カンナがリュックの中から良さそうなカメラを取り出して、ニッコリと笑う。
「そのカメラ、そんな扱い方して良いの?結構雑に入ってたんじゃない?」
「大丈夫です!このリュックの中はこのカメラとカメラを守るための毛布しか入ってませんので!」
「そう、なの?」
「はい!」
果たしてそれは大丈夫なのだろうか。
「では撮らせていただきますね!」
そう言ってもカンナはカメラを構えるでもなく、ただ両手で握ってニコニコと突っ立ってるだけ。
「……撮らないの?」
「??はい!動きのある写真の方が、人の目をひくと思うので、銃を撃ってるところを撮らせていただこうかと思いまして」
「……そう。」

────────── 1時間後 ─────────
1時間後、アーチャー家のテントの前には人だかりができていた。
「凄いですね!一体何匹獲ったんですか?」
テントの前に積まれた獲物を、カンナが上から見たりしゃがんで下から見たり、横から見てみてり、少し持ち上げて見たりして数を数えていた。
「いち、にー、さん、しー…………30匹くらいですかね。」
「大体3時間くらいやってたから、6分に1匹のペース
ですかね。」
「さすがアイリスさんお付きのアントス・バトラーさん!計算がお早い!」
「180÷30くらい、すぐできて欲しいのですが......カンナさん、一応新聞記者でしょう」
「私が計算できなくても、他の人がしてくれるので!というか、私とアントスさんは今が初対面ですよね?なぜ名前を?」
カンナが、そんなにする必要があるのかというくらい首を横…と言うより下に傾ける。
「体.....柔らかいんですね。」
アントスがちょっとひいている。
「いやー凄い凄い!これはお嬢さんの勝利ですかな!
ねぇ、サフラン卿?」
「ぐっ…」
負けた悔しさか、怒りからかそれとも恥ずかしさでも感じたのかサフランが顔を真っ赤にして震えている。
「こりゃ飲まねば!なんてったってアーチャー家のお嬢さんがサフラン卿に銃の扱いで勝ったのだから!これは凄いことだ!」
髭をはやして、ちょっとお腹が出てる男性がワインの酒瓶を片手に言った。
「私は、私はここまで教えていない…私が教えたのは精々10m先の的を狙って撃つことくらい…なぜ、こんなに…一体どこで覚えたんだ。誰が教えた…!」
「シャクヤケとオトギリソウの花束がつくれそうですね。確かに私の技術は他人から教わったものですが、それが誰か言うことはできません。ウツギです」
アイリスが話し終えると、アーチャー家の使用人達が辞書を取り出してパラパラと捲りだす。が、使用人達が何百ものページの中からその花を探し終える前にアントスが口を開いた。
「シャクヤケは怒り。オトギリソウは恨み。ウツギは秘密です。」
使用人達からおおっ、と声が上がる。恐らくアントスはアイリスがよく口にする花言葉を全て覚えているのだろう。
「態々言わんでもいい!」
「ふおいえふええふぁんほふはん(凄いですね、アントスさん)ふぁふぁほほはほほへーへふんえふは〜(花言葉を覚えてるんですか〜)」
先程まで元気だったカンナが、酔っている。それもかなり。まともに言葉を発せないほどには。
「え、子供に何飲ませてるんですか。はやくお水を持って来てください。カンナさん、子供がワインなんて飲んでしまってはダメでしょう。」
「へ〜わはひほーひへへひふーふほへほはろはは…
(私こう見えてにじゅー○※△□○△)」
((((何言ってるのか全然わかんない))))
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