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アイリス

秋の夜。
書斎の窓辺に不自然に置かれたルリタマアザミと呼ばれる花を屋敷の家主である男性が見つけ、一体誰がこんな所にと手に取り、なんとなく窓を開けて外を見回してみる。けれど当然のように窓の外には男性から見える範囲では誰も居なく、辺り一面木、木、木。
「ゔっ」
額に、何かが突き抜けるような激痛が走り咄嗟に手で抑えようとした頃にはすでに男性は額から出る大量の血を床に広げ倒れていた。
「旦那様、ホットミルクを……」
書斎の扉が開き、メイドがホットミルクを持って入って来ると床に大量の出血をしながら白目を向いて倒れる自分の主人を目の前にし、呆然と立ち尽くす。
ガチャッ
ドサッ
ようやく自分が置かれている状況を理解したのか、手に持ったトレーを落とし、床に膝から崩れ落ちた。

その様子を、屋敷から少し離れた木々に紛れて、ライフルに着いたスコープを通して見ていた少女がいた。
「ふぅ。」
「お疲れ様。エリカ」
エリカと呼ばれた少女がスコープから目を離すと、後ろでずっと気に背もたれて見守っていた少年が声をかける。
「やっぱり脚の力だけで木の枝にぶら下がってこの子を撃つのは少しキツいかもね。」
「射程距離が驚くほど広く、撃つ際に全くと言って良いほど無音のライフル銃。重くて当たり前だよ」
少年は当然だろう、とでも言うような口振りだ。

それからほんの数秒後
「きゃあああああああああああああ」
今宵も闇に、誰かの悲鳴が響き渡る。
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