Connect
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※フォルデ視点
魔王との戦いから3年程が過ぎた。
グラドとルネスの復興が成され、エフラム様も家族を持った。
戦いの中で出会い、こことは違う世界から来た女性…ナマエと結婚し、ついこの間には双子の男女が誕生。
これもエフラム様の遺伝なのか、生まれてくる子も双子だとは…正直驚いな。
そしてようやく色々と落ち着き始めた頃、俺はエフラム様に呼び出された。
「どうしましたか?エフラム様」
「急にすまない。お前に頼みたい事があるんだ」
彼がルネスの王になられてからもう3年経つのだと思うと、中々に感慨深い。
亡きファード様の鎧を纏うお姿からは、やはりあのお方の面影が見えてくる。
「頼み事?何でしょう?」
「ああ。ナマエの肖像画を描いてくれないか?」
その内容に驚いた。
いや、だってナマエの…王妃様の肖像画だぞ?
正直、大仕事過ぎて荷が重い。
「え、俺がナマエ様の?ありがたいお話ですけど、いくらなんでもそれは…」
「お前の宮廷画家としての腕は確かだ。信頼しているお前だからこそ、頼みたいんだ」
戦後、俺はエフラム様の推薦により宮廷画家としても働かせていただいている。
絵の実力が認められて、それで仕事を貰えるというのは素直に嬉しい。
だが…今回は仕事の大きさが今までとは桁違いだ。
「本当に俺でいいんですか?もっと凄い画家に頼まれた方が…」
「なあ、フォルデ。以前戦場でお前の描いた絵を見せてくれた事、覚えているか?」
エフラム様の言う俺が見せたという絵。
それは平和なルネスを描いた一枚の風景画だ。
その絵をエフラム様は絶賛してくださったのを今でも覚えている。
「初めてお前の絵を見た時から、どんなに上手い画家の中でも、お前の描く絵が一番だと思ってる。お世辞でも何でもない。だからこそ俺の大切な人を描いて欲しいんだ」
エフラム様は真っ直ぐに俺の目を見つめて言う。
その目からは信頼と期待のようなものが、確かに感じ取れる気がする。
ああ…このお方はずっと俺を見てきてくれたんだった。
ここまで言ってくださっているのに、それを信じないのはあまりに失礼だろう。
「…分かりました。俺でよければお受けしますよ」
「!ありがとう。じゃあ、さっそく明日にでも頼んでいいか?」
「はい、大丈夫です」
こうして俺はナマエの肖像画を描く事になった。
受けたからには今まで以上に気合を入れないとな。
ルネスの王妃様だから…という理由はもちろんだが、それ以前に共に戦争を生き抜いた仲間でもあるからだ。
俺にとっても大切な、仲間…だからな。
そして翌日。
「今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ。お忙しい中お付き合いいただき感謝します」
お互い軽く挨拶を済ませたところで、ナマエが椅子に座る。
「じゃあ、描いていきますね。リラックスしてくれて大丈夫ですよ」
「はっはい…!」
はいと返事はしたものの、やはりどこか緊張した様子。
表情は少し強張っていて、慣れないこの状況への気まずさを感じられる。
うーん…まあ、リラックスしてくれって言われても難しいよな…
何か彼女の緊張を解く方法は…
……あ。
「ナマエ様、あの…」
「ナマエ、ですよ。フォルデさん」
少しだけ不機嫌そうな顔で言う彼女にハッとする。
そうだった…公務や正式な場以外の時は、以前のように接するって約束だったな。
内心では彼女の事を呼び捨てで呼んではいるものの、実際にはちゃんと使い分けているから、正直様呼びの方が染み付いてるみたいだ。
「おっと…そうだったな、ナマエ。…あのさ、ずっと聞こうと思ってたんだが…ナマエはエフラム様をどうして好きになったんだ?」
俺からの突然の質問に案の定驚いた顔をする彼女。
彼女の緊張を解す方法にエフラム様に関する話をする事が思いつき、そこで聞きたかった事を思い出した。
ちょうどいい機会だしな…これで緊張が無くなってくれれば、一石二鳥だ。
「どうして、ですか……実はエフラムと初めて会った時、全然初対面という気がしなかったんです」
ナマエは懐かしいような、でも愛おしそうに話していく。
「ずっと前から彼を好きだったような…そんな不思議な感覚で。私が彼に惹かれるのは、必然だったのかもしれないです。…すみません、ちょっと気持ち悪かったですか…?」
苦笑いを浮かべるナマエに俺は迷わず首を横に振る。
「とんでもない。すごいな、まさに運命だったって訳か。それはエフラム様も同じだと思うよ」
「そうだと、いいですね。正直…彼と結ばれて、こうして幸せな日々を送れるなんて思ってもみなかったんです。だけど、その憧れた幸せを紛れもなく彼が…エフラムがくれたから……私は世界一の幸せ者だなって、そう思わずにはいられません」
「っ…!」
今まで何度も見てきたナマエの笑った顔。
その笑顔が、また目の前で咲いた。
世界一の幸せ者の笑顔は、こんなにも眩しくて美しいものなのか。
愛する人を想う笑顔は、きっと太陽にも勝るものなのだろうと…俺はこの時本気で思ったんだ。
胸が熱くて、彼女から視線が離せなかった。
そして一日目が終わり、俺たちはひとまず解散した。
部屋に戻る途中ちょうどカイルに遭遇したため、俺は彼を引っ張って話をする事に。
「なんだ、いきなり引き止めて」
「誰かに…お前に聞いて欲しくてさ。話したいと、思ったんだ」
この事は相棒と呼べるカイルだからこそ話せるものだ。
中庭の端に二人並んで腰を下ろし、俺は不審そうな顔をするカイルを他所に口を開く。
「俺さ…やっぱり好きだったんだなーって、思ってさ」
「?何をだ?」
主語が抜けた状態で話す俺に、カイルの眉間にはますます皺が寄せられる。
「ルネスの王妃様」
「!お前…」
俺の視線は真っ直ぐ前を向いたままだが、驚く彼の顔が視界の片隅にあるのが分かる。
「今思えば戦争の時からさ、きっと惹かれてたんだろうなって。あの健気に頑張り続ける姿見てたら…好きになっちまうさ。多分、俺だけじゃなかったはずだろ」
「それは…」
相棒は少しだけ黙り込む。
心当たりがあるのは、かつての仲間か…はたまた自分か。
さすがにそこまで聞こうとは思わないが。
「でも…彼女の目には最初からエフラム様しか映ってなかったもんな。最初から叶わない恋だったんだよ」
「………」
カイルは相変わらず黙ったまま俺を見つめている。
哀れとか、そんな視線じゃない。
何も…言えないんだろう。
「俺、エフラム様に頼まれて今日からナマエの肖像画を描く事になったんだよ」
「ナマエ…様の?凄いじゃないか」
「さっき一日目が終わったんだが…緊張してたから、どうしてエフラム様を好きになったのかって聞いてみたんだ。その時の話をするナマエは…本当に綺麗だと思ったよ」
さっき見た彼女の笑顔を思い返した。
あんな幸せそうな顔見たら、こっちまで幸せな気分になる。
「はは…失恋してるのに、全然穏やかな気持ちなんだ。おかしな話だろ」
「別にいいんじゃないか。お前がそれで満足しているのなら」
俺から前へと視線を移すカイル。
彼の顔も俺と同じで、柔らかい表情をしていた。
「さーてと。カイル、ちょっと鍛錬に付き合えよ」
「俺はさっき終えたばかり…いや、付き合おう。今回だけだぞ」
「そうこなくちゃ」
腰を上げて伸びをする。
見上げた先に広がる澄み渡った青い空は今の俺の心を表している、そんな気がした。
今日はいい日になりそうだ。
〜end〜
魔王との戦いから3年程が過ぎた。
グラドとルネスの復興が成され、エフラム様も家族を持った。
戦いの中で出会い、こことは違う世界から来た女性…ナマエと結婚し、ついこの間には双子の男女が誕生。
これもエフラム様の遺伝なのか、生まれてくる子も双子だとは…正直驚いな。
そしてようやく色々と落ち着き始めた頃、俺はエフラム様に呼び出された。
「どうしましたか?エフラム様」
「急にすまない。お前に頼みたい事があるんだ」
彼がルネスの王になられてからもう3年経つのだと思うと、中々に感慨深い。
亡きファード様の鎧を纏うお姿からは、やはりあのお方の面影が見えてくる。
「頼み事?何でしょう?」
「ああ。ナマエの肖像画を描いてくれないか?」
その内容に驚いた。
いや、だってナマエの…王妃様の肖像画だぞ?
正直、大仕事過ぎて荷が重い。
「え、俺がナマエ様の?ありがたいお話ですけど、いくらなんでもそれは…」
「お前の宮廷画家としての腕は確かだ。信頼しているお前だからこそ、頼みたいんだ」
戦後、俺はエフラム様の推薦により宮廷画家としても働かせていただいている。
絵の実力が認められて、それで仕事を貰えるというのは素直に嬉しい。
だが…今回は仕事の大きさが今までとは桁違いだ。
「本当に俺でいいんですか?もっと凄い画家に頼まれた方が…」
「なあ、フォルデ。以前戦場でお前の描いた絵を見せてくれた事、覚えているか?」
エフラム様の言う俺が見せたという絵。
それは平和なルネスを描いた一枚の風景画だ。
その絵をエフラム様は絶賛してくださったのを今でも覚えている。
「初めてお前の絵を見た時から、どんなに上手い画家の中でも、お前の描く絵が一番だと思ってる。お世辞でも何でもない。だからこそ俺の大切な人を描いて欲しいんだ」
エフラム様は真っ直ぐに俺の目を見つめて言う。
その目からは信頼と期待のようなものが、確かに感じ取れる気がする。
ああ…このお方はずっと俺を見てきてくれたんだった。
ここまで言ってくださっているのに、それを信じないのはあまりに失礼だろう。
「…分かりました。俺でよければお受けしますよ」
「!ありがとう。じゃあ、さっそく明日にでも頼んでいいか?」
「はい、大丈夫です」
こうして俺はナマエの肖像画を描く事になった。
受けたからには今まで以上に気合を入れないとな。
ルネスの王妃様だから…という理由はもちろんだが、それ以前に共に戦争を生き抜いた仲間でもあるからだ。
俺にとっても大切な、仲間…だからな。
そして翌日。
「今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ。お忙しい中お付き合いいただき感謝します」
お互い軽く挨拶を済ませたところで、ナマエが椅子に座る。
「じゃあ、描いていきますね。リラックスしてくれて大丈夫ですよ」
「はっはい…!」
はいと返事はしたものの、やはりどこか緊張した様子。
表情は少し強張っていて、慣れないこの状況への気まずさを感じられる。
うーん…まあ、リラックスしてくれって言われても難しいよな…
何か彼女の緊張を解く方法は…
……あ。
「ナマエ様、あの…」
「ナマエ、ですよ。フォルデさん」
少しだけ不機嫌そうな顔で言う彼女にハッとする。
そうだった…公務や正式な場以外の時は、以前のように接するって約束だったな。
内心では彼女の事を呼び捨てで呼んではいるものの、実際にはちゃんと使い分けているから、正直様呼びの方が染み付いてるみたいだ。
「おっと…そうだったな、ナマエ。…あのさ、ずっと聞こうと思ってたんだが…ナマエはエフラム様をどうして好きになったんだ?」
俺からの突然の質問に案の定驚いた顔をする彼女。
彼女の緊張を解す方法にエフラム様に関する話をする事が思いつき、そこで聞きたかった事を思い出した。
ちょうどいい機会だしな…これで緊張が無くなってくれれば、一石二鳥だ。
「どうして、ですか……実はエフラムと初めて会った時、全然初対面という気がしなかったんです」
ナマエは懐かしいような、でも愛おしそうに話していく。
「ずっと前から彼を好きだったような…そんな不思議な感覚で。私が彼に惹かれるのは、必然だったのかもしれないです。…すみません、ちょっと気持ち悪かったですか…?」
苦笑いを浮かべるナマエに俺は迷わず首を横に振る。
「とんでもない。すごいな、まさに運命だったって訳か。それはエフラム様も同じだと思うよ」
「そうだと、いいですね。正直…彼と結ばれて、こうして幸せな日々を送れるなんて思ってもみなかったんです。だけど、その憧れた幸せを紛れもなく彼が…エフラムがくれたから……私は世界一の幸せ者だなって、そう思わずにはいられません」
「っ…!」
今まで何度も見てきたナマエの笑った顔。
その笑顔が、また目の前で咲いた。
世界一の幸せ者の笑顔は、こんなにも眩しくて美しいものなのか。
愛する人を想う笑顔は、きっと太陽にも勝るものなのだろうと…俺はこの時本気で思ったんだ。
胸が熱くて、彼女から視線が離せなかった。
そして一日目が終わり、俺たちはひとまず解散した。
部屋に戻る途中ちょうどカイルに遭遇したため、俺は彼を引っ張って話をする事に。
「なんだ、いきなり引き止めて」
「誰かに…お前に聞いて欲しくてさ。話したいと、思ったんだ」
この事は相棒と呼べるカイルだからこそ話せるものだ。
中庭の端に二人並んで腰を下ろし、俺は不審そうな顔をするカイルを他所に口を開く。
「俺さ…やっぱり好きだったんだなーって、思ってさ」
「?何をだ?」
主語が抜けた状態で話す俺に、カイルの眉間にはますます皺が寄せられる。
「ルネスの王妃様」
「!お前…」
俺の視線は真っ直ぐ前を向いたままだが、驚く彼の顔が視界の片隅にあるのが分かる。
「今思えば戦争の時からさ、きっと惹かれてたんだろうなって。あの健気に頑張り続ける姿見てたら…好きになっちまうさ。多分、俺だけじゃなかったはずだろ」
「それは…」
相棒は少しだけ黙り込む。
心当たりがあるのは、かつての仲間か…はたまた自分か。
さすがにそこまで聞こうとは思わないが。
「でも…彼女の目には最初からエフラム様しか映ってなかったもんな。最初から叶わない恋だったんだよ」
「………」
カイルは相変わらず黙ったまま俺を見つめている。
哀れとか、そんな視線じゃない。
何も…言えないんだろう。
「俺、エフラム様に頼まれて今日からナマエの肖像画を描く事になったんだよ」
「ナマエ…様の?凄いじゃないか」
「さっき一日目が終わったんだが…緊張してたから、どうしてエフラム様を好きになったのかって聞いてみたんだ。その時の話をするナマエは…本当に綺麗だと思ったよ」
さっき見た彼女の笑顔を思い返した。
あんな幸せそうな顔見たら、こっちまで幸せな気分になる。
「はは…失恋してるのに、全然穏やかな気持ちなんだ。おかしな話だろ」
「別にいいんじゃないか。お前がそれで満足しているのなら」
俺から前へと視線を移すカイル。
彼の顔も俺と同じで、柔らかい表情をしていた。
「さーてと。カイル、ちょっと鍛錬に付き合えよ」
「俺はさっき終えたばかり…いや、付き合おう。今回だけだぞ」
「そうこなくちゃ」
腰を上げて伸びをする。
見上げた先に広がる澄み渡った青い空は今の俺の心を表している、そんな気がした。
今日はいい日になりそうだ。
〜end〜