マイヒーロー
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「ナマエ、こんな遅くに見回りか?」
夜も更けてきた頃、見回りの為に城の廊下を歩いていた私に声を掛けてくれたのはシェズだった。
私の持つカンテラの灯が彼の端正な顔を薄く照らしている。
「シェズ。うん…何だか眠れなくって。それに最近また敵が攻めてきたりしてるでしょう?」
「相変わらず真面目だな、お前は。そういう事なら俺も手伝うよ」
ほら、と私の手からカンテラを自然な動作で取ると、彼はそのまま廊下を歩き出した。
少し驚きながらも前を歩く彼の隣に慌てて並ぶ。
「え、そんな大丈夫だよ。シェズは早く寝た方が…」
「それを言うならお前だってそうだろ?二人で見回りした方が早く済むし、万が一敵襲があっても俺が守ってやれるからな」
「!…ありがとう……」
軽く笑ってそう言うシェズに、心臓が小さく音を立てたのはきっと気のせいなんかじゃない。
普段あまり柔らかい表情を見せない彼だからこそ、こんな風な顔が見れるのは素直に嬉しいんだ。
それに…嬉しいのは笑顔だけじゃなくて、彼の優しさも。
「…ねえ、シェズは息抜きに何をしたりしてるの?」
「息抜きか…俺は正直鍛錬で体を動かすだけでも息抜きになるが、その他なら釣りや遠乗りもするな」
「へえ〜。何だかベレト先生達と似てるね」
「ああ…その通りだ。釣りはあいつから教えてもらったんだ」
シェズもベレト先生達と同じフォドラから来た英雄で、かつて共に戦った仲だというのも聞いていた。その一緒に過ごした時の中で釣りを教えてもらった事を話してくれた。
「ふふ…シェズ、すごく楽しそうだね」
「そうか?まあ…実際釣りは楽しいからな。今度ナマエもやってみるか?」
「ええ?私、釣りなんてやった事ないよ」
「俺だってそうだったんだ。お前だって出来るはずさ。俺が教えてやる」
「…うん、じゃあお願いしようかな」
そう言って頷けば彼は約束な、なんて言ってまた笑い掛けてくれる。それが嬉しくて私の頬も自然と緩んでしまうんだ。
「ああ、そうだ。他にも息抜きになる事、あったぞ」
「え、何々?」
「こうやってお前と話す事だな」
思わず足を止めてしまう。全く予想だにしていなかった返答に、ただ驚きで見開いた目で彼の顔を凝視する事しか出来ない。
シェズも足を止めてこちらを見てくる。
「そんなに驚く事か?お前と話してて安らげるって奴らは俺以外にもごまんといると思うぞ」
「あ……そ、そっか…そう言う意味だよね……!」
急に恥ずかしくなって顔を大きく横に振る。
赤くなった顔を見られたくなくて、俯きながらもまた彼の隣に並んだ。今が夜で本当に良かったと思う。
勝手に期待して舞い上がって…勝手に落ち込んで。こんなにも感情が忙しないのは、紛れもなく目の前にいるシェズの所為だけれども。
「だが…ひとつだけな、他の奴らには譲れない部分がある」
「え…?」
まだ話の続きがあったみたいだ。彼は歩き始める様子はない。
少し緊張しながらも隣の彼の顔を見上げる。
「……ナマエ。これを受け取ってくれないか」
心なしかシェズの顔がほんのりと赤くなっている気がする。見上げたその顔から下へと視線を落とせば、彼の手には小さな笛が乗っていた。
前に見せてくれたかなり昔から持っている彼の大切なもの。
「これ……貴方の大切なものなんじゃ…」
「ああ、そうだ。だからこそお前に持っていて欲しい。…もう率直に言った方がいいな。俺はお前が好きだ、ナマエ」
サラッと流れるように聞こえた言葉。いや、流れちゃダメだ。
はっきりと耳に届いた彼からの好意。
それがどちらの意味なのかは、彼のさっきよりも赤く染まった顔を見れば分かる。
「シェズ……本当にこの笛、もらっちゃっていいの?」
「当たり前だろ。お前以外に贈りたい奴なんていないからな」
「そっか…ありがとう、ずっと大切にするね。この笛も…貴方の想いも」
笛を受け取って精一杯の笑顔を見せれば、シェズの目が見開かれた。今までで初めて見る表情。
「ナマエ、それは……」
「…私もシェズが好き。だから本当に嬉しいの……こうして貴方が私に笛を贈ってくれて、想いを伝えてくれた事が」
手の中にある笛を胸の前でぎゅっと握り締める。
この笛にはきっと…とてもたくさんの思い出が詰まってるのだろう。私の知らない彼が色々な人と過ごしてきた記憶達が。
でも、これからはその思い出達の中に私が居るようになってくれれば…これ以上に幸せな事なんてきっとない。
「はは……まさか俺に恋人が出来る日が来るなんてな」
「シェズ、強くてカッコいいから今までに貴方を好きだった子とか居たと思うけど」
「まさか。…もしかして妬いてるのか?」
自然と出た言葉ではあったけれど、声色が少し違っていたのだろう。シェズはそれに気付くと何だか嬉しそうに聞いてくる。
「そりゃあ…妬いちゃうに決まってるよ……」
「!ああ、もう限界だ…!」
「わあっ!?」
次の瞬間、ぎゅっと抱き寄せられて私の目の前には彼の逞しい胸板が。
驚きと緊張で顔を上げようとしたけれど、それは彼の大きな手によって阻止されてしまう。
「さっきから俺を喜ばせる事ばかり言ってくれて……反則だろ…」
「ええっと…ごめんなさい……?」
「いいや、許してなんかやるものか」
今度はシェズ自ら私の顔を上げさせる。
必然的に目が合えば、胸の鼓動が高鳴っていく。
私の頬を不器用ながらも優しく撫でる大きな手。
ゆっくりと近付く彼の気配にそっと目を閉じた。
〜end〜
天涯孤独だと言う彼を幸せにしたいという気持ちから書いてました笑
これから夢主という家族と共に人生を歩んでいってくれ……
夜も更けてきた頃、見回りの為に城の廊下を歩いていた私に声を掛けてくれたのはシェズだった。
私の持つカンテラの灯が彼の端正な顔を薄く照らしている。
「シェズ。うん…何だか眠れなくって。それに最近また敵が攻めてきたりしてるでしょう?」
「相変わらず真面目だな、お前は。そういう事なら俺も手伝うよ」
ほら、と私の手からカンテラを自然な動作で取ると、彼はそのまま廊下を歩き出した。
少し驚きながらも前を歩く彼の隣に慌てて並ぶ。
「え、そんな大丈夫だよ。シェズは早く寝た方が…」
「それを言うならお前だってそうだろ?二人で見回りした方が早く済むし、万が一敵襲があっても俺が守ってやれるからな」
「!…ありがとう……」
軽く笑ってそう言うシェズに、心臓が小さく音を立てたのはきっと気のせいなんかじゃない。
普段あまり柔らかい表情を見せない彼だからこそ、こんな風な顔が見れるのは素直に嬉しいんだ。
それに…嬉しいのは笑顔だけじゃなくて、彼の優しさも。
「…ねえ、シェズは息抜きに何をしたりしてるの?」
「息抜きか…俺は正直鍛錬で体を動かすだけでも息抜きになるが、その他なら釣りや遠乗りもするな」
「へえ〜。何だかベレト先生達と似てるね」
「ああ…その通りだ。釣りはあいつから教えてもらったんだ」
シェズもベレト先生達と同じフォドラから来た英雄で、かつて共に戦った仲だというのも聞いていた。その一緒に過ごした時の中で釣りを教えてもらった事を話してくれた。
「ふふ…シェズ、すごく楽しそうだね」
「そうか?まあ…実際釣りは楽しいからな。今度ナマエもやってみるか?」
「ええ?私、釣りなんてやった事ないよ」
「俺だってそうだったんだ。お前だって出来るはずさ。俺が教えてやる」
「…うん、じゃあお願いしようかな」
そう言って頷けば彼は約束な、なんて言ってまた笑い掛けてくれる。それが嬉しくて私の頬も自然と緩んでしまうんだ。
「ああ、そうだ。他にも息抜きになる事、あったぞ」
「え、何々?」
「こうやってお前と話す事だな」
思わず足を止めてしまう。全く予想だにしていなかった返答に、ただ驚きで見開いた目で彼の顔を凝視する事しか出来ない。
シェズも足を止めてこちらを見てくる。
「そんなに驚く事か?お前と話してて安らげるって奴らは俺以外にもごまんといると思うぞ」
「あ……そ、そっか…そう言う意味だよね……!」
急に恥ずかしくなって顔を大きく横に振る。
赤くなった顔を見られたくなくて、俯きながらもまた彼の隣に並んだ。今が夜で本当に良かったと思う。
勝手に期待して舞い上がって…勝手に落ち込んで。こんなにも感情が忙しないのは、紛れもなく目の前にいるシェズの所為だけれども。
「だが…ひとつだけな、他の奴らには譲れない部分がある」
「え…?」
まだ話の続きがあったみたいだ。彼は歩き始める様子はない。
少し緊張しながらも隣の彼の顔を見上げる。
「……ナマエ。これを受け取ってくれないか」
心なしかシェズの顔がほんのりと赤くなっている気がする。見上げたその顔から下へと視線を落とせば、彼の手には小さな笛が乗っていた。
前に見せてくれたかなり昔から持っている彼の大切なもの。
「これ……貴方の大切なものなんじゃ…」
「ああ、そうだ。だからこそお前に持っていて欲しい。…もう率直に言った方がいいな。俺はお前が好きだ、ナマエ」
サラッと流れるように聞こえた言葉。いや、流れちゃダメだ。
はっきりと耳に届いた彼からの好意。
それがどちらの意味なのかは、彼のさっきよりも赤く染まった顔を見れば分かる。
「シェズ……本当にこの笛、もらっちゃっていいの?」
「当たり前だろ。お前以外に贈りたい奴なんていないからな」
「そっか…ありがとう、ずっと大切にするね。この笛も…貴方の想いも」
笛を受け取って精一杯の笑顔を見せれば、シェズの目が見開かれた。今までで初めて見る表情。
「ナマエ、それは……」
「…私もシェズが好き。だから本当に嬉しいの……こうして貴方が私に笛を贈ってくれて、想いを伝えてくれた事が」
手の中にある笛を胸の前でぎゅっと握り締める。
この笛にはきっと…とてもたくさんの思い出が詰まってるのだろう。私の知らない彼が色々な人と過ごしてきた記憶達が。
でも、これからはその思い出達の中に私が居るようになってくれれば…これ以上に幸せな事なんてきっとない。
「はは……まさか俺に恋人が出来る日が来るなんてな」
「シェズ、強くてカッコいいから今までに貴方を好きだった子とか居たと思うけど」
「まさか。…もしかして妬いてるのか?」
自然と出た言葉ではあったけれど、声色が少し違っていたのだろう。シェズはそれに気付くと何だか嬉しそうに聞いてくる。
「そりゃあ…妬いちゃうに決まってるよ……」
「!ああ、もう限界だ…!」
「わあっ!?」
次の瞬間、ぎゅっと抱き寄せられて私の目の前には彼の逞しい胸板が。
驚きと緊張で顔を上げようとしたけれど、それは彼の大きな手によって阻止されてしまう。
「さっきから俺を喜ばせる事ばかり言ってくれて……反則だろ…」
「ええっと…ごめんなさい……?」
「いいや、許してなんかやるものか」
今度はシェズ自ら私の顔を上げさせる。
必然的に目が合えば、胸の鼓動が高鳴っていく。
私の頬を不器用ながらも優しく撫でる大きな手。
ゆっくりと近付く彼の気配にそっと目を閉じた。
〜end〜
天涯孤独だと言う彼を幸せにしたいという気持ちから書いてました笑
これから夢主という家族と共に人生を歩んでいってくれ……
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